ちょっと一言
お腹が凹む技術 -特許出願すべきであったと思うのですが-
最近、書店でよくお見かけする本、植森美緒さんの「腹だけ痩せる技術」。小生は、本を購入し、すでに実施済みです。けっこう効果ありそうです。毎日の通勤walkingで、軽くドローインしていますが、脇腹と胃のあたりの筋肉が締まってきたような気がします(ちょっとだけですが)。こうした効果があると、職業柄、「特許は出ているのかな?」と思い始めます。さっそく検索してみましたが、「植森美緒」という名の特許出願はありませんでした(発明者と出願人で検索。ドローイン*腹でも検索)。小生の検索能力はたいしたことないので、100%特許出願していないとは言えませんが、かなりの確率で特許は出ていないと思います(変な自信)。
特許出願してないとすると、現時点および今後も、他人に真似されても、文句が言えない状態です。これだけの技術です。特許出願しておけばよかったのにと小生は思いました。
「腹だけ痩せる技術」を特許出願する場合には、3つくらい問題がありそうな気がします。でもですね、知財担当者としては、燃えるテーマですね。その3つくらいの問題について検討してみましょう。
特許法・第2条の問題:
2000年ごろ、アメリカでは特許になるが、日本では特許にならないという例として、「パッテイング方法」なるものが挙げられました。右の図のようなものですが、アメリカでは、第5,616,089号特許として登録されています(登録日:1997年4月1日)。
アメリカの発明の定義は、「新規かつ有用な方法、機械、製品若しくは組成物、又はそれらについての新規かつ有用な改良」ですので、新規かつ有用な方法に該当するのでしょうね。ところが、日本では、「自然法則を利用した」に該当しない可能性があるとされました。
2000年当時から、「自然法則」の概念がかなり拡大しましたので、特許として認められる可能性は大きくなりました。が、油断は禁物、ここは、知財マンの腕の見せ処です。「腹横筋」「内腹斜筋」「外腹斜筋」の収縮現象だとか、形状記憶効果などを盛り込んで、いかにも「自然法則を利用した」と表現することが必要だと思います。
特許法・第68条の問題:
権利行使は誰に対して可能か? もうひとつの問題が、68条の問題です。68条は「特許権の効力」として、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」となっています。そうすると、特許侵害とは、「①権原又は正当理由なき第三者が、②業として、③他人の特許発明を実施すること」となります。
「業として」という文言がひっかかります。特許侵害行為は、「業として実施」していることが前提となるからです。つまり、商売にしているかどうかですね。
「腹だけ痩せる技術」が特許になったとして、「腹だけ痩せる技術」を商売で使う、たとえばフィットネスクラブで「腹だけ痩せる技術」を教えるとか、やらせてみるとか、そうしたことをすれば、特許侵害に該当しますが、個人が個人の目的に使用することは、特許侵害とはならないと思われます。小生が自分のために、「腹だけ痩せる技術」を実施しても、特許侵害ではないと、小生は思っています。
これは、ちょっとした抜け穴になると思われます。でもですね、特許出願はしておくべきだったと思います。
どのような【特許請求の範囲】にするか
これが一番興味のある問題です。さて、どのようなクレームにするか。知財マンの腕の見せ処です。あなたなら、どんな特許請求の範囲にしますか?
ちなみに、「パッティング方法」の特許請求の範囲・請求項1は、下のような文章になっています。
(M.S.)
