ちょっと一言

「育児始めました。」8月号編集後記より

 今年は個人的に人生の節目になる年となりました。授かった我が子と分娩室で初めて対面し,視界が霞んでいく中で,疲れ切った妻を前に溜まったものを目の外には流さぬようにと耐えたあの日のことは生涯忘れられないでしょう。幸いなことに,今の日本では男性が育児休業を取得することを推奨する企業も多くなり,筆者も3か月弱の間は育児・家事に専念することができました。その間の会誌広報委員会の皆さんのお支えに,この場を借りてあらためて感謝申し上げます。
 筆者自身は年の離れた弟がおり,自身も幼いながら朧げな当時の記憶から,「育児は大変だ」という世論に比べ幾らか安気に構えていました。育児を経験された方々からお叱りの言葉をいただくことになりそうですが,無知が故の戯言と思いご容赦ください。まだまだ新米ですが,3か月が過ぎて,こんなにも大変なものだったのかと,先輩パパママに対して尊敬の念しかありません。
 出産から母子が無事に帰宅の途につき,ベッドに寝かせて寝顔を眺めていられるのも束の間,(今思い返すと)まだ弱弱しい泣き声で何かを訴えてきます。ミルクを飲ませ,おむつを替え,寝かしつけ,単純なルーティンですが間隔もバラバラ,一息つく間が1時間も空かないことがほとんどで大人たちに休息の時など全くなく,最初の1か月は本当に大変でした。しかし,今は自治体の行政サービスが充実しているところが多く,筆者も多分に漏れずそのサービスに救われました。本当に有難い限りです。
 当然ながら赤子は泣くことでしか何かを訴えることができないので,ミルクかな? おむつかな? 眠いのかな? この猛暑で不快なのかな? と探るわけですが,上述の睡眠不足に加えて,意思疎通ができないということがこんなにも大変なものなのだとあらためて思い知らされました。知財業務に従事していると,発明者,場合によっては特許事務所の方とのコミュニケーションが重要であることは言わずもがなですが,自身が正しい内容を正しく伝えられているのか,生まれたての我が子から早速気付きを与えてもらいました。我が子と会話できる日を心待ちにし,これからも育児を楽しんでいきたいです。

(K.N.)

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