ちょっと一言

「ファミリーツリー」9月号編集後記より

 由緒ある家柄の方は別として,家系図のある家庭はさほど多くないのではないかと思います。私の家も家系図はありませんでしたが,戸籍をたどれば明治以降の家系図が作成できるという話を聞き,代行業者に依頼して家系図を作ってみました。
 目的は,自分のルーツを知りたいという素朴な思いもありましたが,母方の親戚関係がよくわからなかったので知りたかったという方が大きいです。母はこの手の話題に触れたくないのか,教えてくれないので調べてみようと思ったわけです。
 その結果,母方の祖父は,祖母と離婚しており,祖父は,再婚後,再び離婚し,私が幼い頃に亡くなっていました。私には母方の祖父の記憶がないのですが,当然のことだったわけです。
 また,曾祖父の長男(祖母の兄)は,フィリピン・ルソン島で死去,とあり,先の戦争で戦死していたことがわかりました。曾祖父は私が小学生の頃まで存命でしたが,お盆には熱心に飾りつけをしていたことが思い出されます。異国の地で戦死した息子の御霊を迎えていたのでしょう。
 そして,母と姉妹同然に仲が良い親戚の女性は,戦死した曾祖父の長男の娘で,おそらく曾祖父の下,祖母,母と一緒に暮らしていたのではないかと思われます。曾祖父は村の助役(現在の副市長村長)を務めたなかなかの人物だったようです。
 知りたかったことがわかって満足したところで,父方の家系図を眺めていたところ,父方の祖父は長男が生まれた後,祖母と結婚していました。「じいさん,何か事情があったのかもしれないが,順番がおかしいだろ…。」
 2025年は戦後80年の節目の年ですが,家系図を通じて,ただの史実としてしか認識できていなかった先の戦争の影響が身近なところにあったということに驚きました。家系図の作成費用は掛かりましたが,祖先の生き様を垣間見られたことと,その生き様があって今の自分が生きていることを実感できました。
 戸籍は保管期間が過ぎると順次廃棄されるそうです。お彼岸や敬老の日を契機としてご先祖に関心を持つ方もおられると思います。家系図を作ってみたいとお考えの方は早めに作ってみてはいかがでしょうか?

(H.O.)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.