ちょっと一言

「歌舞伎」12月号編集後記より

 皆さんは伝統芸能である歌舞伎をご覧になったことがあるでしょうか? 今年は歌舞伎を題材とした映画「国宝」が興行収入173.7億円を突破し、邦画実写の歴代1位となったこともあり,興味を持たれている方も多いのではないかと思います。
 私が初めて歌舞伎を観劇したのは2年前。親の勧めで足を運んだのがきっかけでしたが,すっかり“ドハマり”しています。そのとき観劇したのは,世界遺産登録30周年を記念して上演された「平成中村座姫路城公演」でした。クライマックスでは,背景の幕が取り払われ,本物の姫路城と歌舞伎役者が共演する演出があり,その美しさと迫力は今でも脳裏に焼き付いています。幼少期から見慣れた姫路城が最も美しく感じられた瞬間でした。ただ,歌舞伎では江戸時代の言葉遣いでセリフ回しがなされるため,初見だと何を言っているのか全く分かりませんでした。それでも舞台美術や衣装,化粧,音楽,演技の力で圧倒され,言葉を超えた感動が得られることも魅力の一つであると感じ,歌舞伎の沼にしっかりとハマってしまいました。
 その後,私はさらに歌舞伎を堪能すべく,演目図鑑や解説書を入手し,学びを進めます。その中で,歌舞伎は事前に演目の流れやセリフを予習しておくことで役者の所作や見所,セリフに一層感動できるといった,ネタバレを受けても楽しめるという解説がありました。ポップカルチャー好きの私は,ネタバレは何よりも悪であると刷り込まれているので,目から鱗でした。
 今年6月博多座公演では,ネタバレをばっちりと済ませて,観劇しました。結果,セリフの意味を考えない分,演出や役者の演技,細やかな表情まで,今まで以上に歌舞伎を堪能することができ,次回からも絶対にネタバレをすませて観劇すると心に誓いました。
 そんな歌舞伎ですが,地方での巡業もありますので,お近くで開催される際には,ぜひご観劇いただければと思います。
 さて,伝統といえば,本誌「知財管理」は本号で900号を迎えました。長きにわたり発刊が続いてきたのは,先人の尽力と,読者である会員企業の皆さまの支えがあってこそだと感じています。歌舞伎のように,時代を超えて愛される存在であり続けられるよう,委員会一同,これからも励んでまいりますので,隅から隅まで,ずいとお願い奉りまする〜(歌舞伎の口上)。
  • 歌舞伎の背景の幕が取り払われ見えた姫路城

(S.I.)

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