新刊書紹介

新刊書紹介

国破れて著作権法あり 誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか

編著 城所 岩生 著
出版元 みらいパブリッシング 新書判 272p
発行年月日・価格 2023年3月10日発行 990円(税込)
 映画『Winny』の公開日に合わせて出版された本書は,Winny事件など様々な裁判例を題材としながら,米国を始めとする諸外国と日本とのソフトウェアやコンテンツ産業を取り巻く環境の違い,中でも著作権法や刑事司法制度といった法律や制度面での問題点を明らかにする。その上で,日本がこれまで以上にイノベーションを促進し,コンテンツビジネスを活性化させていくために必要な法制度の改革・改善について著者の提言が述べられている。
 またWinny事件弁護団の事務局長を務められた壇俊光弁護士と著者とが,そうした問題点や必要な改革について議論した内容も,巻末特別インタビューとして収録されている。
 まず第1章「シリコンバレーの興隆と日本の停滞」から,第2章「世界の最先端を走っていたP2P技術の商用化を遅らせたウィニー事件」,第3章「対照的な米国版ウィニー事件判決とその後も勇み足が続く日本の検察」,第4章「オラクルの1兆円の損害よりも社会全体の利益を優先させた米最高裁」まで,何が問題なのか,日本と特に米国の違いが何かが一目で分かるようなタイトルが付されている。更に,節も例えば3−2「司法府の役割をわきまえた米連邦地裁判決」,3−3「対照的な京都地裁の勇み足判決」といった形で,著者の課題認識や評価が込められたタイトルのおかげで,目次を一通り見るだけでも内容と問題点を把握できる構成は,この分野に明るくない読者にとっても理解の助けとなるだろう。
 そして後半の第5章「金子勇の悲劇を繰り返さないための提言」,第6章「日本版フェアユース導入によりイノベーションを創出する」,第7章「日本版フェアユース導入により文化GDP倍増を目指す」も同様で,何を目指し,何を変えなくてはならないのか,著者の提言内容を明快に示している。
 個人的には,映画『Winny』鑑賞後に違和感として残った刑事司法のあり方に関する第5章,そして例えば生成AIに関する議論でも「何を目指すのか,何を守るのか」が鍵となることを再認識できた第7章は,なるほどそういう未来を創っていけると良いな,と何度も考えさせられる印象的な内容であった。
 法律上は同様の刑罰規定があるものの,特許権侵害に適用された事案はないとされる一方で,著作権侵害では法人も刑事責任が問われることがある。生成AIの利活用による侵害リスクも指摘される中で,著作権まわりの問題についての理解を深めておくことは益々重要となってくると思われ,その一助となる,お薦めの一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 S.M)

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