新刊書紹介

新刊書紹介

それってパクリじゃないですか?2 〜新米知的財産部員のお仕事〜

編著 奥乃 桜子 著
出版元 集英社 文庫判 304p
発行年月日・価格 2023年3月16日発行 759円(税込)
 本書は,2023年4月から放送されたテレビドラマ「それってパクリじゃないですか?」の原作小説の続編である。テレビドラマについては,当協会のホームページでも2023年3月13日付の「ちょっと一言」で紹介されており,また放送開始の前日に特許庁からもSNSで応援メッセージが発信されて話題となっていたため,放送を視聴した本誌読者も多いものと思われるが,上記「ちょっと一言」で,テレビドラマの監修を務めた会員企業OBが,「視聴者に誤解を与えないための『正確性』と,知財を知らない人に興味をもってもらうための『面白さ』の対決」と苦悩を語っていた通り,専門知識が無くとも理解できる内容でありながら,知財関係者の視点でも,実務上で経験しうるトラブルに共感を覚えたり,場面転換で省略されたシーンの間にどのような戦略・戦術が議論されていたのかを考察したりと,楽しめるものになっていた。
 本書では上記テレビドラマの原作である前作の設定を引き継ぎ,中堅飲料メーカーの製品開発部から知財部に配属された主人公が,周囲に振り回されたり,自分の未熟さに落ち込んだりしつつも,少しずつ仕事を覚えて上司の信頼や期待に応えようと奮闘するストーリーが綴られている。例えば,調査業務における速さと質の兼ね合い,事業部門との折衝,初めての独力での拒絶理由通知への対応や審査官との面接など,多くの知財部員が主人公と同様の悩みや苦労を経験した,またはしていると思われる場面が登場するため,過去や現在の自分と重ねて,心の中で主人公を応援したり,逆に励まされたり,あるいは自分の仕事やそれに対する姿勢を振り返って気付きを得たりしながら読み進めることができる。
 なお,本書の著者によると「汗と涙の結晶を守る仕事」というコンセプトには,権利を振りかざし,目くじらをたてているという冷たい印象ではなく,血の通った人間が頑張る話として受けとってもらえるようにとの思いを込めたとのこと。一知財部員として胸が熱くなるところである。本書を通じ,知財部員にはぜひ「汗と涙の結晶を守る」という意識をもって日々の業務に取り組んでもらうとともに,経営層・企画部門・開発部門・製造部門・販売部門などには知財部員の思いを知ってもらうことで,お互いの立場も尊重した円滑なコミュニケーションに繋がることを期待する。副題の「新米知的財産部員」に限らず多くの方に楽しく読んでもらいたい一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 H.A.)

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