新刊書紹介

新刊書紹介

「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する 世界基準の知財ミックス

編著 鈴木 健二郎 著
出版元 ポプラ社 四六判 246p
発行年月日・価格 2023年8月発行 1,760円(税込)
 著者の鈴木健二郎氏は自身の経歴の中で,日本のいわゆる「失われた30年」が知財の「宝の持ち腐れ」が起因であったことを実感し,企業が持つ知財の価値を掘り起こしてビジネスを興すコンサルティング手法を確立し,日本の産業政策,技術政策の立案・実行に貢献してきた。そこで着目したのが,GAFAM(グーグル,アップルほか)が進めてきた「知財ミックス」の手法である。本書では,彼らの知財ミックスを利用した戦略手法を紹介するところから始まり,我々日本企業がミックスする「知財」を正しく知り,知財ミックスを立案し,ミックスした知財で世の中に価値を提供し,知財ミックスを実践するための行動,さらに加速させるための外部との協業の重要性が記述されている。
 本書では,“知財をミックスでマネジメントする”という言葉がよく出てくるが,弊社は少しでも出来ているかと考えさせられた。事業部の研究開発の成果として特許出願があり,商品開発の一環で商標や意匠出願があるが,それらが事業開発方針に沿ったものかを考えたか。知財成果を,年度の出願件数や登録件数達成で満足していないか。展示会用のプレゼン資料の著作権問題や共同開発契約書レビューに積極的に取り組んでいるか。会社のハウスマークの使用基準もあまり厳しく言うと嫌われるからと事業部側に対して甘くなってはいないか。
 さらに“企業や製品のファンを増やしていく”という言葉もよく出てくる。B to Bであってもお客様は当社の製品を選んでくださった訳で,より満足してもらえる製品の開発や的確なアフターサービスで,企業の印象を向上させていく必要がある。ブランディング構築は全社結束の継続活動と言える。今まで知財は事業を支援していくイメージがあったが,知財が経営を主導できることに知的財産部の人間も気付かなければならない。たとえ知的財産部が経営企画部と直結していなくても,経営方針を強く反映させた全社知財方針を策定し,将来の主力事業を支える知財創出を主導していくことは可能である。今まで蓄積された知財を大事にしながらも,今後は事業に十分に利用できる知財の獲得が重要になってくる。
 知的財産部は受け身な部署ではなく,会社の経営を常に主導する部署として,全社の知財ミックス獲得に関わっていく必要がある。今後さらに失われた10年を作ってはならない。知財業務に関わる方にとっては,是非,本書を参考にして業務を進めていただきたい。

(紹介者 会誌広報委員 T.M.)

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