新刊書紹介
新刊書紹介
IPランドスケープの進展と実践 ~CGC改訂に対応する知財戦略 活用展開と企業取組事例~
編著 | 山内 明 監修 |
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出版元 | 情報機構 B5判 179p |
発行年月日・価格 | 2024年3月18日発行 49,500円(税込) |
本書は改訂CGCのエッセンスを解説するとともに,企業に求められる情報開示への対応に向けた各社のIPランドスケープの取組事例を紹介することを目的に執筆されたものである。以降,各章を簡単に紹介する。
第1章ではCGCに知財関連項目が盛り込まれた背景(日本企業が知財戦略で世界に負けているという問題意識,知財・無形資産活用の重要性,CGC改訂に向けたロビー活動等の裏話,等)および改訂CGCが企業に求めるもの(価値創造ストーリーの構築,知財KPIの設定,情報開示による投資家との対話等)が具体的に分かりやすく説明されている。「改訂CGCと知的財産」というトピックについては各所で解説が為されているが,そのエッセンスが本章にまとめられている点にも価値を感じるところである。加えて,節毎に記載されている各著者の「おわりに」に込められた熱いメッセージもそれぞれ高い視座から述べられており胸に響くものがある。
続く第2章では,CGC改訂を受けていち早く対応した企業群の取組事例が紹介されている。一言で「CGC改訂に対応」といってしまえば話は早いが,本書では表面的,教科書的な内容にとどまらず,各社知財部門が困難を乗り越えるためどのようにもがき苦しみ,如何なる工夫を凝らしているかが具体的に説明されている。知財部員であれば自分事として読み耽ること請け合いである。
そして第3章では,IPランドスケープの実践を飛躍的に加速させた企業群の取組事例が紹介されている。本章は単純な「IPランドスケープの実践」の解説にとどまらず各社のビジョンやミッション,これを達成するための組織体制,かかる体制を以て如何に知財活動を遂行しているかについても解像度高く具体的に説明されている。さらには,IPランドスケープの実践内容についても成功例のみならず,失敗例や解決できていない課題についても惜しみなく開示されている。「あとがき」において監修の山内明氏も「よくぞここまで!」と心の声を漏らしている通り,各社知財部門が紡いできた事業貢献に至るストーリーを追体験できる内容といえよう。
これまで述べてきた通り,本書は知財情報開示に関心がある方やIPランドスケープを実践しようとしている方はもちろん,そうでなくとも知財活動に関わる方であれば非常に参考になるものである。是非,本書を手元に置いて参考にしていただきたい。
(紹介者 会誌広報委員 K.M.)
