新刊書紹介
新刊書紹介
ガバナンスガイドラインから読み解く知財・ 無形資産戦略の立案・体制整備・開示
編著 | 前田絵理 編著,飯塚尚己・黒澤壮史・ 渋谷高弘・吉川万美 著 |
---|---|
出版元 | 中央経済社 A5判 244p |
発行年月日・価格 | 2024年6月6日発行 3,300円(税込) |
非財務情報開示への要求が高まるいま,本書は改訂「知財・無形資産ガバナンスガイドライン(Ver.2.0)」を“読む”から“実装”へ橋渡ししてくれる実務解説書である。序章では,日本企業の価格決定力の弱さと東証による資本コスト説明要請を取り上げ,無形資産経営へ舵を切らざるを得ない背景を簡潔に整理する。
第1〜3章では,ガイドラインの5つのプリンシプルと7つのアクション,そして経営陣と投資家をつなぐコミュニケーション・フレームワークを俯瞰し,取り組みの全体像と着手順を示す。データ・ブランド・営業秘密など多様な無形資産の定義を国際基準と照合して整理しているため,非財務資本全体を把握したい読者の導入編として有用だ。
第4章は,経営戦略三階層モデルとAs-Is/To-Be分析を組み合わせ,知財投資をROICに結び付ける四段階プロセスを提示する。IPランドスケープによる競争環境の可視化やオープン&クローズ戦略の使い分けが図解され,優先テーマ抽出の手順が具体的である。
第5章は,取締役会の監督機能,横断組織,人材育成を扱い,内部統制を保ちつつ外部連携を進める勘所を提示する。
第6章は,統合報告書と有価証券報告書の役割分担,IFRSサステナビリティ基準への対応,開示事例比較を通じて媒体別の焦点を整理し,6-1「統合報告書による情報開示」〜6-3「非財務情報開示の法定開示の動き」の節立てが自社資料の使い分けの検討に直結する。
最終章の第7章は,価値創造戦略・資本配分・KPI・リスク・人材の五つの論点を軸に投資家対話を磨き,「おわりに」で継続的PDCAを促す。
本書の説明においては,MVV経営(オムロン),タイレノール事件の危機対応(ジョンソン&ジョンソン),味の素の独自KPI「ASV指標」に基づく価値創造といった実例が随所に挿入され,抽象概念を現場のアクションに落とし込む。図表はモノクロだが論点が簡潔に整理され,自社のKPIやロードマップを参照しながら読み進められる。さらに巻頭の「本書の概要」ページが章ごとの狙いを要約しており,必要箇所へ素早くアクセスできるガイドとして便利である。
通読すれば〈投資計画・組織体制・情報開示・投資家対話〉の四工程が一本につながる。知財部門,経営企画,IRが共通言語を得たい企業にとって,ガイドライン実装を前進させる頼もしい羅針盤となるだろう。
第1〜3章では,ガイドラインの5つのプリンシプルと7つのアクション,そして経営陣と投資家をつなぐコミュニケーション・フレームワークを俯瞰し,取り組みの全体像と着手順を示す。データ・ブランド・営業秘密など多様な無形資産の定義を国際基準と照合して整理しているため,非財務資本全体を把握したい読者の導入編として有用だ。
第4章は,経営戦略三階層モデルとAs-Is/To-Be分析を組み合わせ,知財投資をROICに結び付ける四段階プロセスを提示する。IPランドスケープによる競争環境の可視化やオープン&クローズ戦略の使い分けが図解され,優先テーマ抽出の手順が具体的である。
第5章は,取締役会の監督機能,横断組織,人材育成を扱い,内部統制を保ちつつ外部連携を進める勘所を提示する。
第6章は,統合報告書と有価証券報告書の役割分担,IFRSサステナビリティ基準への対応,開示事例比較を通じて媒体別の焦点を整理し,6-1「統合報告書による情報開示」〜6-3「非財務情報開示の法定開示の動き」の節立てが自社資料の使い分けの検討に直結する。
最終章の第7章は,価値創造戦略・資本配分・KPI・リスク・人材の五つの論点を軸に投資家対話を磨き,「おわりに」で継続的PDCAを促す。
本書の説明においては,MVV経営(オムロン),タイレノール事件の危機対応(ジョンソン&ジョンソン),味の素の独自KPI「ASV指標」に基づく価値創造といった実例が随所に挿入され,抽象概念を現場のアクションに落とし込む。図表はモノクロだが論点が簡潔に整理され,自社のKPIやロードマップを参照しながら読み進められる。さらに巻頭の「本書の概要」ページが章ごとの狙いを要約しており,必要箇所へ素早くアクセスできるガイドとして便利である。
通読すれば〈投資計画・組織体制・情報開示・投資家対話〉の四工程が一本につながる。知財部門,経営企画,IRが共通言語を得たい企業にとって,ガイドライン実装を前進させる頼もしい羅針盤となるだろう。
(紹介者 会誌広報委員 R.M)
