ちょっと一言

「ゆうメール」事件 −札幌の小さな企業が勝利−

 1月12日、東京地裁で判決言渡しが行われた。
 原告は、蟷ニ撻瓠璽襯機璽咼后資本金2,300万円、従業員30名、札幌に本社がある企業である。被告は、郵便事業蝓日本郵便グループの事業会社。資本金1,000億円、従業員10万人、本社が東京霞ヶ関。郵政民営化で、2007年10月に創立した会社である。
 事件は、「ゆうメール」という商標権を侵害しているか否かであった。

論点
 原告の蟷ニ撻瓠璽襯機璽咼垢蓮◆屬罎Ε瓠璽襦廚箸い商標権を保有していた。商標権は、ご存知のとおり、「商標登録区分」というのがあって45の区分に分かれている。蟷ニ撻瓠璽襯機璽咼垢保有していた商標権は、第35類「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」のものであった。
 裁判では、郵便事業蠅行っている「ゆうメール」サービスが、「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」に該当するか否かが争点となった。具体的には、郵便事業蠅痢屬罎Ε瓠璽襦廛機璽咼垢『各戸に対する広告物の配布、広告』と言えるか否かであった。
 原告・蟷ニ撻瓠璽襯機璽咼垢蓮⇒絞愡業蠅行っている行為は、「冊子とした印刷物などを配布する役務であり、その対象のほとんどはダイレクトメール、カタログ等の広告物である」として、『各戸に対する広告物の配布、広告』に該当すると主張した。
 被告・郵便事業蠅蓮⇒絞愡業蠅行っている行為は、『単なる配達』であり、『各戸に対する広告物の配布、広告』には該当しないと主張した。「ゆうメール」内容物を決めるのは差出人であって、郵便事業蠅砲呂△困り知らぬところであるという主張である。
 さらに、『配布』と『配達』とは異なる行為であるとし、郵便事業蠅蓮愬枌』を行っているのであり、『配布』しているわけではないとも主張した。(『配布』は不特定多数を対象としているのに対し、『配達』は特定の者を対象にしている。同じ行為ではないという理論構成である)

東京地裁の判断
 裁判所の判断は「侵害」であった。メールの内容物が広告物であるときには、商標権第35類の役務と郵便事業蠅痢屬罎Ε瓠璽襦廛機璽咼垢蓮峭告物を配る」という点で一致し、ほぼ同一の内容となる、としたのである。
 被告・郵便事業蠅蓮◆屬罎Ε瓠璽襦廛機璽咼垢『単なる配達』と言っているが、「広告物が「ゆうメール」サービスの対象となることを宣伝しているではないか。また、『配布』と『配達』は、類語の関係にある、とも付け加えた。

被告・郵便事業蠅亮臘イ龍さ

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  •  判決文全体をみると、原告の主張は短く、被告の主張は長い。主張が長くなると、「言い訳」になりやすい。『単なる配達』だけをやっているので、中身が何かわからないという主張はその典型である。
     右の写真は、小生に送られてきた「ゆうメール」である。全部透明なプラスチックの袋に入っていて、中身が丸見えである。
     日本郵便蠅HP内には「ゆうメール」利用の条件が書かれてあり、「封筒の一部を開くか、包装を透明にするか、内容物の見本を差し出すこと」と記載されている。
     これを守らなければ受け付けないと言っておきながら、「内容物のことは知らない」と主張するのは無理がある。

    被告・郵便事業蠅稜坩
     郵便事業蠡Δ北断と驕りがあったのではないか と小生は思っている。「当方は日本を代表する大会社、先方は札幌の小さな会社。係争は起きないだろう」という油断と驕りである。
     なぜそう思うかと問われると、「直感的に」と答えてしまいそうだが、答弁の端々にそれを感じるし、「商標権が無効であるとした主張」や「商標権の行使が権利の濫用に当たるとした主張」に、それを見ることが出来る。以下に、それを紹介してみよう。

    商標権無効に関する郵便事業蠅亮臘
     郵便事業蠅蓮屬罎Ε僖奪」という商標を保有している。「ゆうパック」は、昭和62年からサービスを開始し、とても有名になっている著名商標である。
     そもそも、「ゆう○○」という商標は、その多くを日本郵政が保有していて、「ゆうぽうと」「ゆうちょ」「ゆうゆう窓口」など著名なものばかりである。だから、「ゆう○○」という商標は、郵便事業に関する商品・役務として日本郵便のものと需要者は認識している。それゆえ、「ゆうメール」という商標は「ゆうパック」と出所混同のおそれがあり、商標法4条1項15号の規定に違反する。
     加えて、原告・蟷ニ撻瓠璽襯機璽咼垢砲蓮不正の目的がある。本件商標が出願された平成15年、「ゆうパック」サービスは高い認知度を有していた。原告は、被告がいまだ「ゆうメール」を出願していないのを幸いとして、本件商標を出願、登録した。「ゆう○○」の名称をつけることにより、被告・郵便事業蠅凌用にただ乗りし、利益を得ようとする不正の目的で登録を受けたものである。故に、権利は無効である。
     そもそも、本件商標は商標法第4条1項7号に該当する(商標法第4条1項7号:公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標。公の秩序を乱しているといいたいのであろうか)。

     裁判所は、上に述べた被告の主張をピシリと否定している。
     平成15年、原告・蟷ニ撻瓠璽襯機璽咼垢、郵政公社に対して、「ゆうメール」というビジネスモデルを提案したが、無下に断ったという。また、被告が「ゆうメール」という商標を出願した際にも、蟷ニメールサービスの出願が先願になって拒絶されている。こうしたことも、裁判官の心証形成に影響を与えたようだ。

    他者権利の尊重
     我々は、知的財産の法の下で仕事をしている。事業を始める前には、ちゃんと調査しよう。そして他者の権利は尊重しよう。それがエチケットである。

    (M.S.)

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