ちょっと一言

「貨幣のお話し」知財管理10月号編集後記より

  今年の夏は異常なほどの暑さでしたが,10月になるととてもすごしやすい季節になりました。少しずつ秋が近づいていますね。

 ところで,日本国で生活している人で日本円に触れたことがないという人は皆無だと思いますが,この日本円が通貨単位として正式に成立したのは明治になってから,という比較的新しいものであることはご存知でしょうか。日本橋にある日本銀行本店(実は建物が「円」の形に配置されています)のすぐ隣にある貨幣博物館を訪ねると,日本円が成立するまでの歴史を始めとして,貨幣にまつわる様々な事を学ぶことができます。

 展示は,貨幣が発明される前の,人々が物々交換にて経済活動を行っていたときの時代から始まります。そして,きれいな貝殻や砂金のように持ち運びに便利で,かつそれ自体に価値を見いだせるものが取引で共通に使われるようになり,また,「和同開珎」のように時の為政者により発行される流通貨幣が登場する時代へと移ります。金や銀でできた貨幣が取引で使われる時代になると,今度は,含有量や大きさで貨幣そのものの価値や流通量を変えて経済を調整するという概念が積極的に使われ始めます。その後,明治に金本位制の日本円が定められ,第二次世界大戦中に今の信用貨幣としての日本円へと変わっていきます。これらの貨幣の移り変わりを膨大な展示物で裏付けて説明しており,また,貨幣の重さや大きさを実体験したり,最新の偽造防止技術を学べたりするなど,最後まで飽きることなく見て回れるようになっています。日本橋まで買い物に出られた折に,学びの秋の一つとして立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

 ちなみに,展示されている膨大な古貨幣は,実は田中啓文さんという明治末期の一研究者の収集によるものなのだそうです。

(Y.O.)

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