ちょっと一言

「想い」から生まれた雪下ろし」11月号編集後記より

 冬が訪れつつありますが,雪の降る地域では,降雪に向けた準備を始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は雪国出身であり,子供のころは雪が降るのを楽しみにしていた記憶もありますが,大人にはあまり歓迎されない雪について考えてみました。

 歓迎されない理由の一つが,除雪作業です。家から道路までの雪を除ける作業もそうですが,屋根の雪を下ろすとなると大変な作業です。中年の体になってしまった私のような者にとって筋肉痛は間違いなく,また,足を踏み外せば怪我では済みません。大雪が降ると,必ずといっていいほどそんな危険な雪おろしでの事故のニュースを目にします。

 この除雪ですが,屋根の雪下ろしを楽にして危険も減らすことのできる,今までにない除雪道具がネット販売されているのを見つけました。個人が発明し,クラウドファンディングを利用した結果,販売された ようです。必要は発明の母といいますが,なんとかしたいという「想い」から生まれた雪下ろし用の用具のようです。クラウドファンディングの仕組みによって,従来ならば個人では実現化する道が無かった品が,想いに同調した人が資金を出し合った結果,それを必要とする人が購入できるようになるというのが,夢があっていいなあと思います。

 実現化への道の入口において必要な作業の一つに,特許などの知的財産権の出願があります。この出願に関わった知財関係者は,「想い」から生まれた発明を特許化するお仕事をされたといえるのですから,羨ましい限りです。

 一方,先行文献を十分に調査できる環境が整ってきたためか,「想い」などなく,事実を知るものからすると新規性も無いけれども,先行文献の記載はないがために作為的に作られた特許が,排他権を持ってしまう場合を目にすることがあります。

 様々な特許が生まれては,次第に消えていきますが,大変で危険な屋根の雪下ろしをなんとかしたい,のような「想い」から生まれる発明の出願がたくさんあるといいなあと,空から降る雪を楽しみにしても良いでしょうか。

(T.A.)    

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