ちょっと一言

「懐かしの文具」3月号編集後記より

 卒業・入学の季節となり,我が家は来年度に新一年生となる娘がいるため,卒園・入学に向けた準備を祖父母のお財布の紐を緩める算段に重きを置きながら進めている真っ最中です。
 準備する中,私自身の小学生時代を思い出す機会も多くなり,先日同級生との食事会でも当時使用していたものの話題で盛り上がりました。
 世代間で思い出されるものは異なると思いますが,私の小学生時代に流行っていた文具は,多機能型の筆箱です。この筆箱は長方形で,一方に複数のボタンが配置されており,そのボタンによって, 筆箱の蓋が自動で開いたり,鉛筆が立ち上がったり,鉛筆削りや消しゴムが飛び出したりするものでした。販売当初は2,3個だったボタンが4,5,6個と増え,より多くのボタンの付いた筆箱を 持った子供は,休み時間のヒーローになり机の周りに集まった観客の前でスティーブ・ジョブズ張りに一つ一つのボタンの機能を自信満々にプレゼンテーションしていたのが懐かしく思い出されました。

 その会話で衝撃を受けたのが,当時私自身も使用しており,今もよく目にする学習用のノートが地域限定であるということでした。ノートの表紙は科目毎に異なる単色モノトーンで地域の様々な 風景や景色が印刷されており,中身についても科目毎で使い易くシンプルな仕様です。

 子供の頃,ノートを買いに行くと売り場の大半をこのノートが占め,当然の様にこのノートを購入していました。当時,売り場の片隅に置かれていた,世界の珍しい花や昆虫等が表紙の ノートのテレビCMは目にするけれど,なぜ自分が使っているノートのCMが無いのかと疑問でしたが,数十年後の今やっと腑に落ちました。

 このノートについて調べてみると,地元の企業が製造販売しているもので,戦後の物資不足の頃,これからの世代を担う子供たちに良質な文房具を低価格で提供しようという想いから製作が始められたものだそうです。
 ノスタルジーに浸る一方,公園での遊び方の制限や遊具の撤廃,幼稚園建設反対運動等,子供に対する抑圧を感じる近年,この様なもっと子供に対する温かく寛容な心が全国に広まればと願うばかりです。

(H.M.)    

  • 進級の季節 桜満開の公園
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