ちょっと一言

「仙石東北ライン 〜究極の「架線下DC」〜」9月号編集後記より

 私は,「乗り鉄」とまでは行きませんが,機会を見つけては全国の鉄道に乗っています。
鉄道の世界で,電化区間を走る気動車(Diesel Car)のことを「架線下DC」と言います。ルートの一部に非電化区間が 含まれる場合,通常,全区間気動車で運行されます。今回,究極の「架線下DC」を紹介します。「仙石東北ライン」は,仙台から石巻への速達性を確保するため,仙台から松島までは東北本線を利用し,高城町から仙石線に乗り入れ石巻までを結ぶルートの名称です。仙石線沿線市町の復興支援の目的もあり,2015年に運行開始しました。そして,この「仙石東北ライン」は,なぜか気動車が走っているのです。東北本線も仙石線も電化されているのになぜでしょうか?
 東北本線は交流電化で2万ボルト,一方,仙石線は直流電化で1,500ボルト,交直流両方に対応する電車はありますが,一つネックがありました。東北本線と石巻線との接続線の部分です。その距離約300メートル,この区間は非電化となり,全区間を気動車で運行することになりました。ハイブリッド気動車HB-E210系が開発され,ディーゼルエンジンで発電した電気に加えて走行中に蓄えた蓄電池の電気でモーターを駆動させる,新しいタイプの気動車が登場しました。
 運良く会誌広報委員会が仙台で開催される機会があり,乗車することにしました。仙台駅に向かうと,石巻行きの電車?が止まっています。電車の顔をしていますが,動き出すと気動車であることが分かります。仙台駅を出発したHB-E210は,電車並みの加速力で東北本線を疾走します。ハイブリッド気動車のエンジン音は静かだと期待していたのですが,エンジン駆動の気動車とあまり変わらないように感じます。もちろん,乗り心地は申し分ありません。そして,塩釜駅を出発し松島駅が近づいてくると徐行運転になります。東北本線下り線の列車が仙石線に乗り入れるには,上り線を横切らなければなりません。一旦停止した後,再びエンジン音が響き出すと,列車は上り線をゆっくりと斜めに横切り連絡線に入っていきます。そして,仙石線の線路に合流します。この約300メートルの非電化区間のために気動車が走っているのです。
 仙台を訪れる機会がありましたら,是非乗ってみてください。
  • ハイブリッド気動車HB-E210系
  • 生まれ変わった女川駅

(T.O.)

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