新刊書紹介

新刊書紹介

改訂4版 特許明細書の書き方/より強い特許権の取得と活用のために

編著 伊東忠彦 監修
伊東国際特許事務所 編
出版元 経済産業調査会 A5版 431p
発行年月日・価格 発行 定価4305円(税込)

世に明細書の書き方を解説した書は多々あろうし、中には実務の手練れが監修した名著も多くあろう。本書も名著の1冊にカウントして頂きたい。
明細書作成が一朝一夕に成るものではないことは周知の通りである。技術知識はもちろんのこと、特許法に関する知識が不可欠であり、また、発明を論理的かつ明瞭に表現する能力も必要である。さらには、将来的紛争・契約に役立つ権利であるために民事訴訟法など関連法の知識も要求される。
企業実務を担当される「知財管理」読者の皆様も日々良い明細書の姿を追い求めて自己研鑽されているものと思う。
明細書の作成は非常に難しい仕事ゆえに実務化たちは職人とも呼ばれる師の弟子として丁稚奉公を行い、叱責されながら体に刻み込むというのがこの業界のやり方であった。一見古臭いともいえる方法で伝授されてきたわけだが時代は変わった。様々なノウハウは研究され、体系化され、マニュアル化される時代である。明細書作成技術ももはや例外ではない。もちろんマニュアルだけで職人の域に達し得るものではないことは重々承知の上だが、一定水準にない者を十分に高度なレベルまで押し上げることは可能だ。しかもそのようなレベルの人材を量産することができる。
本書は明細書作成のノウハウを包み隠さず開示した名著であり、職人に代わって常人を指導育成する師匠である。
本書が特許業界での要望にマッチしたものであることは改訂4版を数えた事実から明らかである。
また、本書は明細書の書き方を、「より強い特許権の取得と活用」という観点から描いたものである。強い特許権は明細書作成技術だけで実現できるものではない。それゆえ中間処理はもちろん、特許明細書作成の前段階として発明の発掘法まで解説が加えられる。さらに、権利行使において請求の範囲や明細書が問題になった事例を判決例とともに解説することで、明細書作成技術に関するより詳細な知識を身に付けることができるようになっている。
以下に本書の目次を挙げておく。

  • 第1章 序論
  • 第2章 特許明細書作成の前段階―発明の発掘、提案、調査等
  • 第3章 特許明細書作成
  • 第4章 通常特許出願以外の出願
  • 第5章 中間処理
  • 第6章 特許異議の申立及び審判
  • 第7章 明細書の記載に関する判決例
  • 第8章 権利行使

正直、ここまでノウハウを明かしてよいものかといらぬ心配をしてしまう部分はあるが、おそらくこれほどの情報を自分のものとして自在に操るには相当な努力が必要になるであろう。実務担当者の皆様には、本書を傍らに置き、都度関連箇所を照らすことをお勧めする。 職人のノウハウに触れることができるはずだ。

(紹介者 会誌広報委員 大野義也)

新刊書紹介

意匠・デザインの法律相談(新・青林法律相談9)

編著 小谷悦司/小松陽一郎 編
出版元 青林書院 A5版 608p
発行年月日・価格 2004年6月7日発行 定価5460円(税込)

自動車やAV機器などを購入する際、皆さんは何を基準にして商品を選択しますか? 価格は勿論ですが、同じ機能の商品が複数並べられているとき、 少々高めの物でも好ましいデザインのものについ手が出てしまうのではないでしょうか。また、商品のデザインのみならず、街中で目にするポスターやタイプフェイス等も美しくて目を惹き易いものがあります。 これらに触れることでわれわれは注意力を高められ、また、心を豊かにされます。
このように、意匠やデザインはわれわれ人間がハイ・クォリティな生活を送る上で欠かせないものであるとともに、 産業上も重要な意義を有しています。
本書は、プロダクツ・デザインを中心とする意匠法上の保護の実態にとどまらず、意匠法によっては保護されないグラフィックシンボルや単なるポスターの図案、それにディスプレイ上に表示されるアイコン等、物品性を有しないデザインの保護の実態まで踏み込んだ解説が売りとなっています。中には意匠法上の保護の対象となっているデザインであっても、他の法律でも重畳的に保護されているケースもあります。本書はこれら意匠、デザインに関する法律上の保護全般について、非常に身近に起り得る問題をこの分野の専門家が具体的に解説した書です。
本書では、意匠・デザインにまつわる重要問題が84件ピックアップされ、それぞれに対してQ&A方式で解説が加えられます。解説を担当するのは「知財管理」誌でもおなじみの著名人ばかり。いずれも業界第一線で活躍される先生たちです。各々の解説では、意匠法・商標法・著作権法・不正競争防止法など、関連する法律の解説と実務の実態がこと細かく説明されるとともに、引用判例や引用審決として、当該番号が対応されているので、資料としても非常に役立つものになっています。
とくに複数の法律に跨る問題は、各法律を体系的に端から理解するだけでは解決法を見出しにくいものです。 むしろ本書のように事例ごとの切り口から横断的に各法律の対応関係・実務実態を学ぶことが適切な場合も多いのです。
デザインの法律実務に携わっている実務家はもとより、デザイナー自身にも、 己の創作物の保護を考えるために非常に役立つ本書を推薦したいと思います。
念のため、84のQ&Aの分類わけを以下に記して起きます。

  • 第1章 デザインの保護
  • 第2章 意匠・デザインの保護法制
  • 第3章 企業での意匠・デザインの保護及び管理
  • 第4章 意匠権の権利成立要件
  • 第5章 デザイン商標権の権利成立要件
  • 第6章 権利の行使
  • 第7章 意匠・デザインのライセンス
  • 第8章 外国との関係

(紹介者 会誌広報委員 大野義也)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.