新刊書紹介

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著作権法の基礎

編著 編集・著作:菊池 武、松田 政行、早稲田祐美子、齋藤 浩貴
出版元 経済産業調査会 A5判 389p
発行年月日・価格 2005年9月10日発行 4,300円(税別)

本書のタイトル「著作権法の基礎」からは、いわゆる著作権法に関する基本書を連想されるかもしれないが、本書の「まえがき」でも述べられているように、著作権の「いろは」から説明されている基本書ではない。

本書が対象としている読者は、企業内法務部で知的財産権を扱う者、法学部出身の民法・商法・知的財産権法の基礎知識を習得している者である。従って、本書を手に取られて内容的に難しいと感じられる場合、著者が紹介している「著作権法入門(文化庁編、社団法人著作権情報センター刊)」をサブテキストとして利用されながら読み進められることをお勧めする。

本書では、第1章から第3章で「著作権法概説」として著作権法の基本的概念と基本的思想について述べられ、続いて第4章「著作物」、第5章「著作者」、第 6章「著作財産権」、第7章から第9章に「著作者人格権」、第10章「著作権の制限」、第11章から第12章に「外国の著作物の保護」、第13章から第 15章に「著作隣接権」、第16章「著作物の利用」、第17章から第18章で「権利侵害」という構成で著作権法全般について解説されている。

著作権法概説の項では、同じ知的財産権としての特許権と著作権とを比較することで保護対象や保護方法の相違がわかり易く述べられている。

そして第4章以下の各論部では、前項で述べらた著作権の保護対象としての著作物や、著作者、保護の内容としての著作財産権や著作者人格権についてさらに掘り下げた説明がコンパクトになされている。

続いて、著作権を財産権的、人格権的側面から述べるとともに、その権利の制限や、国外における保護として条約の規定について触れられている。

後半の著作物の利用に関する契約の項では、具体的事案を設定し契約関係について検討されており、読者は契約のイメージが掴みやすいように配慮がなされていると思う。

最終章の権利侵害に対する救済措置としての差止請求と損害賠償についても、改正法や基本的な裁判例を紹介しつつ制度の解説がなされている。

本書はコンパクトな記載ながらも全てを読み終えれば、著作権についての一通りの要点を整理することが出来るように配慮されて構成されている非常に有用な書籍と思われる。

そこで読了後のステップとして、近時問題となっているデジタルコンテンツの保護等、新しい著作権法上の問題についても各自が検討されては如何であろうか。この点については著者も望まれているものである。私自身も本書をきっかけにデジタルコンテンツの保護や判例に興味を持つことができたので、会員企業の皆様にも本書をお勧めしたいと思う。

(紹介者 会誌広報委員 C.K)

新刊書紹介

不正競争の法律相談

編著 寒河江孝允 編著
出版元 学陽書房 A5判 389p
発行年月日・価格 2005年7月25日発行 3,800円(税別)

知的財産法の重要性はより高まるとともに、その抱える課題・問題についてもますます複雑となり、特許法、実用新案法、意匠法、商標法などいわゆる産業財産権法だけでは十分に知的財産を保護、活用を図ることができない状況になっていることは周知の通りである。不正競争防止法は、昭和初期に制定された法律であるが、知的財産の保護ということでいうと長らく、補助的な役割を担ってきたにすぎなかった。しかしながら、知的財産が脚光をあびる現在においては、単なる補助的な法律であるにとどまらず、主役の法律の一つとなったということができるだろう。その主役の一つにおどりでるために、これまで十数回の法改正を経てきたが、ことし平成17年6月に改正法が成立、公布されて、11月1日から施行されている。今回の主な改正点は、営業秘密の保護強化として、使用開示処罰、退職者処罰、法人処罰の導入、模倣品・海賊版対策として刑事罰の導入、罰則の見直しなどである。

本書は、法改正の解説本という位置づけではないが、不正競争防止法が改正されたタイミングで発行された、不正競争防止法を取り扱う最新版の書籍として非常に意義深いものである。不正競争行為の類型なども解説し、さらに基本的判例、最新判例も盛り込み、Q&A形式により非常に読みやすい構成になっている。不正競争の概念・歴史などの概略から、各不正競争行為発生時に警告する場合の留意点、刑事罰、営業秘密関連の対応、著名表示冒用行為、商品形態模倣行為、ドメイン名の不正取得使用などを合計101の項目に整理し、その101のQごとに整理説明している。この101の項目中には米国の不正競争法の内容についても含まれている。

上述の通り、不正競争防止法の重要性は益々高まったのではあるが、知的財産担当としては必ずしもその内容について明るくない方も少なくはないと思う。法律の条文としては少ないが、どうも、理解がしがたいとお感じの方もいることと思う。本書はQ&A形式であるがゆえに各項目の問題点、解説点が明確で、本当にわかりやすい。知的財産担当であると、仕事上、法律の解釈、判例などについて質問を受けることもあるとおもうが、そのような場合にも、本書にあたることで、迅速に、概要を理解、回答対応することが可能になるだろう。

特許の担当だから不正競争防止法は関係ないという時代ではない。特許担当を含め知的財産担当である以上は不正競争防止法についての知識は必要である。まずは本書を一読いただき、座右において活用いただきたい。

(紹介者 会誌広報委員 H.N)

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