新刊書紹介

新刊書紹介

知的財産 88の視点

編著 隅藏 康一 編著
日本知財学会知財学ゼミナール 著
出版元 税務経理協会 A5判 364p
発行年月日・価格 2007年11月30日発行3,200円(税別)

本書は、2002年に誕生した「日本知財学会」の種々の研究活動の中で、活動メンバー各自が得意分野を分担執筆し、まとめたものである。知的財産に関する全体像を初心者に対してわかりやすく解説し、尚且つ、最近の知財情勢やその問題についても多数盛り込まれており、専門家の目から見ても興味深い内容となっている。

内容は、科学技術諸分野、法律、経済、経営、社会、・・・etc. と、極めて多岐に渡る現代的課題を挙げ、それを解決するための「処方箋」と「最新動向」を88の視点から描き出している。各課題を9つの章に分類し、さらに各章内では、約10項目程度のPoint of view をそれぞれ2〜4ページ程度で簡潔にわかり易くまとめている。さらに、そのPoint of viewに関してもっと詳しく知りたい!と思った場合は、各章末に参考文献が記載されており、読者にとっては誠に至れり尽くせりな書である。

本書の構成は次のとおりである。

  • 第1章 知的財産のきほん−創造と保護−
    発明は誰のものか?、知的財産権の保護、営業秘密の保護、などの基本的な14項目について解説している。
  • 第2章 知的財産をめぐる法律
    知的財産に関する種々の法律を10項目に分けて、身近な話題と絡めつつ、最新の法改正も取り入れて解説している。
  • 第3章 デジタルコンテンツと著作権
    近年、デジタル技術の進展とインターネットの普及等で、著作権法は新しい問題が生じてきている。著作権法が直面する課題9項目について検討している。
  • 第4章 先端科学技術と知的財産
    ソフトウェア、デジタルコンテンツ、バイオインフォマティクス、など専門性の高い15項目について関連特許法などを交えながら簡潔に解説している。
  • 第5章 知的財産権の国際的イシュー
    知的財産に関する国際的な動きを国・地域別に7項目に分けて、最近の問題点を挙げながら解説している。
  • 第6章 企業経営における知的財産戦略
    企業における知財の位置づけ、知財マネジメントやブランド戦略など11項目について事例を上げて解説するとともに、特許マネジメントの分析手法を紹介している。
  • 第7章 知的財産戦略と会計
    知的財産の「資産」としての捉え方や評価手法の紹介、経営報告等情報の公開の課題、など7項目を解説している。
  • 第8章 知的財産戦略と契約
    ライセンス契約、訴訟、共同研究開発契約、などの基本的な10項目をわかり易く解説している。
  • 第9章 知的財産人材育成と知財教育
    現状の人材育成の課題から将来についての展望など5項目を挙げて述べている。

以上、紹介したとおり、本書は、知的財産の全体像を88の視点で解説している。その広くて深い世界の「入口」となるガイドブックとして活用したい1冊である。是非、お薦めしたい。

(会誌広報委員 T.O)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.