新刊書紹介

新刊書紹介

商標の法律相談

編著 小野 昌延・小松 陽一郎 編
出版元 青林書院 A5判 744p
発行年月日・価格 2009年5月14日発行 6,000円(税別)

商標法は,不正競争防止法とは異なり,登録という法的手段を用いるため,暖簾の保護として,重要な役割を果たしている。しかし,情報の時代といわれる今日,時代の変化とともに,商標法の分野においてもより複雑な問題を生み出している。

本書は,これらの問題について,商標実務の第一線で活躍し,商標の世界を代表する経験の豊富な70有余名の第一線専門家が,商標実務の現在を詳細に解説している。また,今回は,いくつかの新しい問題項目を加えるとともに,全93題のQ&A形式で,より理解しやすい構成となっている。

本書の構成は以下のとおりである。

第1章では,基本的な商標制度について解説している。「登録主義」と「使用主義」の意味および沿革の解説や,それぞれの長所・短所について解説している。また,過去からの商標法の改正内容を,改正毎にポイントを整理し,わかりにくい項目については,実例を交えて解説している。

第2,3章では,商標法と不正競争防止法の関係を解説するとともに,商標の概念(商標の使用)を,具体的な使用例や実際の判例なども取り入れ,わかりやすく解説している。

第4章では,登録要件として,立体商標や産地・販売地の表示などを例に挙げ,基本的な商標の定義から,特許庁の取扱い・考え方を,実例を交えて解説している。

第5章では,出願・審査・審判等として,実務者が実際に出願する際に,必要になると考えられる項目が挙げられている。出願当初に使用の意思が必要なのか,拒絶査定がきた場合の不服申立ての手段などについて,法的取扱いや手続上の留意点を含めて解説している。

第6章では,商標権の効力として,専用権と禁止権の定義から,商標権の効力範囲,商標権の発生及び存続期間など,実務者としておさえておきたい基本的な知識や,商標のライセンスの際に,注意すべき事項など,応用的な知識まで解説している。

第7章では,侵害として,どのような場合に商標権の侵害となるのか,また侵害にはどのような種類があり,どのような救済措置がとられるのかなど基本的な項目から,実際の訴訟費用や損害額の立証方法といった,実際に侵害問題に直面した際に必要となる項目まで,わかりやすく解説している。

商標法の分野の概説書が比較的手薄い状況の中で,本書は,実務者が商標権を取り扱う際に疑問をもつ項目毎に解説されており,項目によっては非常に詳細な解説が加えられているため,概説書とともに使用すれば,実務上極めて有益になると考えられる。商標権を取り扱う実務者に是非ともお薦めしたい一冊である。

(会誌広報委員会   N.H)

新刊書紹介

技術力で勝る日本が,なぜ事業で負けるのか

編著 妹尾 堅一郎 著
出版元 ダイヤモンド社 四六判 432p
発行年月日・価格 2009年7月30日発行 2,400円(税別)

「日本企業が,技術で勝ち,知財権や国際標準を取っても,なぜ事業で負けるのか?」

東京大学で知的資産経営を専門とする著者が,その疑問のメカニズムを解き明かし,今後の日本企業が採るべき新たな考え方を具体的に解説したのが本書である。

本書は,「欧米企業がモジュラー化/オープン化等によって垂直統合モデルを終焉させたことにより,技術力だけで勝てる時代が終わり,現在では事業成功には技術力を活かすビジネスモデルと知財マネジメントが不可欠になっている。」ことを趣旨とし,特に「標準と独自技術を組み合わせたビジネスモデルと知財マネジメント」を中心に解説している。

以下,簡単に構成と内容を説明する。

第1章 従来の「従来モデル練磨による生産性向上」から「新規モデルによる新価値の創出・普及」へ,90年代以降欧米企業が競争モデル自体を大きく変えたことを解説。

第2章「新規モデルの創出」には,「技術起点型」(技術を生んで権利化し活用)だけではなく,逆の「事業起点型」(革新的な事業戦略を起点とし,その戦略を具現化する知財構成をデザインし,更にその知財の調達方法を企画)が存在し,競争モデルを変えた欧米企業が採った手法であること。及び,「事業起点型の新規モデル創出」には,知財部門が「受動的マネジメント」から,事業起点で知財活用を検討する「能動的マネジメント」も行える意識改革が必要である旨解説。

第3章「事業起点型」の例として,インテルとアップルの事業成功のメカニズム(技術のオープン化とクローズド化の組み合わせ)を解説。 また,「事業起点型」の観点から,電気自動車産業とロボット産業について解説。

第4章 欧米企業と新興国企業連合の,「ビジネスモデルと知財マネジメントの展開による国際分業型イノベーション」に,日本企業が事業で負けるメカニズムについて解説。

第5章 国際標準を活用して「市場拡大」と「収益確保」を同時に達成する事業展開の構想について,実例に基づいて解説。

第6章「戦略的なディフュージョン過程の分業」によるインテルとアップルの製品普及の成功例,及び日本企業が採るべき「三位一体経営」の考え方を解説。

第7章 知財部門の役割が,〇業防衛⇒∩幣戮筌ロスライセンス,パテントプール対応⇒事業創造と競争力強化機能,へと段階的に変化していること。及び,における「知財を活かした事業展開の方向付け」について解説。

第8章「知財ロードマップ」,「標準の活用」,「製品ライフサイクル」,「準完成品」,「レイヤー上/間の協調と競争」,「新興国のパートナー化」等をキーワードとした,垂直統合モデル終焉後の「新規モデル」の創出方法を解説。

別々のテーマとして個別に理解されがちな,「モジュラー化による水平分業化」,「標準化」,「ビジネスモデル」,「知財マネジメント」が,豊富な先進事例により統合的に(「擦り合せ型」で)解説されており,「経営に資する知財」を新たに構想する上で,是非,多くの知財関係者にお薦めしたい一冊である。

(会誌広報委員会  N.T)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.