新刊書紹介

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死蔵特許―技術経営における新たな脅威:Patent Hoarding訴訟―

編著 榊原 憲 著
出版元 一灯舎 四六変版 150p
発行年月日・価格 2009年10月20日発行 1,300円(税別)

皆さんは,本書タイトルの「死蔵特許」という言葉をご存知だろうか。

恥ずかしながら,私は正確な意味を理解しておらず,いわゆる「休眠特許」のことを指しているのではないかと考えていたが,それとは異 なるものであった。すなわち,「死蔵特許」とは,誰でも検索さえすればすぐに閲覧できる公開済み登録特許であるにも関わらず,その存在 や価値をほとんど知られることなく,発明者や権利者からも忘れられた特許のことをいう。

本書は,この「死蔵特許」について,JPEG特許(米国特許第4,698,672号,以下「本特許」という)係争の実例を紹介しながら,その存在の重要性を指摘し,このような権利が生じる原因を検討している。

具体的な構成としては,第1章から第4章までは本特許係争の背景・経緯を詳細に紹介している。

そして,第5章では,「死蔵特許」の発生原因を大きく7つに分類して説明している。

すなわち,”現牴週ヾ悗砲ける特許調査の不備,M&Aによる権利移転時の特許デューデリジェンスのし忘れ,製品開発販売事業がない,と明者が職務発明対価を要求しない, ゥ僖謄鵐函Ε肇蹇璽襪気┐盖容する米国のプロパテント戦略,Ε咼献優肯冤の低下,Д瓠璽ーよりも弁護士が儲かる世界になった特許,ということを原因として挙げている。

私は,このうち特に知財部員として日常の業務でも意識しておくべき重要な事項としては,‘探調査の重要性,M&A時の特許デューデリジェンスの必要性ではないかと考える。

知財担当者は,権利調査,出願・中間対応等の権利化業務に忙殺されてしまうことが多く,結果として,自分が権利化しようとしている特許等が自社の事業化にどのように貢献するのかを意識できずに手続きをしていることもあると思う。

しかし,特許等が事業に貢献する手段であるからこそ,権利化が必要なのである。

本書は,自分の調査・出願業務が自社の事業にどのように活用されるかということを改めて考える機会を与えてくれるため,特に権利化業務を主として担当している知財部員にお勧めしたい一冊である。

(会誌広報委員会    S.S)

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企業経営における知的財産活用論―CIPOのための知的財産経営へのガイド―

編著 石田 正泰 著
出版元 発明協会 A5判 266p
発行年月日・価格 2009年10月26日発行 2,400円(税別)

近年,日本企業の市場は世界中に拡大している。しかし,新興国の急速な技術力向上は,企業の基本理念である持続的発展を脅かす状況にある。

本書は,厳しい企業競争の中で持続的に発展していくためには,競争優位手段として,法制度上認知されている知的財産を活用した経営戦略が有効,かつ必要であるとし,知的財産の本質的機能と役割,そして,具体的活用戦略について解説されている。

知的財産とは何か,どのような法律で保護されているかから始まり,経営戦略上の機能・活用戦略・組織と人材・ライセンス契約まで,活用に必要な情報が網羅されている。

各章の初めに“要旨”と“概要”がシンプルにまとめられており,本文を読む前に内容がイメージしやすいため理解しやすく,読み返す時にも特定の場所が見つけやすい。

以下に,本書の内容について紹介する。第1章の「企業経営における知的財産活用の考え方」では,実現に向けてのキーパーソンとなる知的 財産統括責任者(CIPO)の役割について解説されている。第2章の「知的財産制度の概要:経済・産業政策制度」では,知的財産の種類と知的財産権について,法律と条文に基づき解説されている。第3章の「企業経営における知的財産の機能」では,知的財産の目的・機能と活用による効果について,どのような機能が企業の持続的発展に貢献できるのか具体的に解説されている。第4章の「企業経営における知的財産活用戦略」では,知的財産権を活用するために必要な“価値評価”と“活用形態”について,経営戦略的観点から具体的に解説されている。 第5章の「企業経営における知的財産活用組織,人材」では,戦略的活用を実践する上で必要な組織と人材について解説されている。第6章の「企業経営における知的財産活用契約」では,活用戦略を契約に落とし込む考え方,そして交渉と契約管理について解説されている。第7章の「企業経営における知的財産活用の評価」では,知的財産の単独評価ではなく,経営的観点から総合的に評価することの重要性が解説されている。第8章の「知的財産活用に関する重要事項」には,活用実現に向けての考え方と重要事項が総括してまとめられている。

第8章には,この本のエキスが濃縮されている。最後のまとめという位置付けかも知れないが,私のお勧めは,第8章から読んで,次に第3章〜第5章である。

そして,特に読んで欲しいのは,経営戦略に知的戦略を組み込む施策を検討している知財部員であるが,事業部で経営戦略の立案・推進を担当している経営企画や技術企画の方にもお勧めしたい一冊である。

この本を読んだ私の感想は,「“企業経営に知的財産を活用する考え方”を早く経営陣に理解してもらい,実行することがグローバル競争で勝ち抜くカギになる」ということである。

(会誌広報委員会  M.O)

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コンテンツ商品化の法律と実務―ライセンス契約完全ガイド―

編著 穂積 保 著
出版元 学陽書房 A5判 336p
発行年月日・価格 2009年9月24日発行 3,400円(税別)

日常生活において,音楽,映画,ゲーム,新聞・雑誌などの膨大な量の著作物に日々接しています。また,インターネットの普及により,誰もが著作者になれる一方で,意図しない権利侵害を行ってしまう恐れもあります。

本書は,こうしたコンテンツをビジネスとして扱う上で必要な知識を解り易く解説したもので,第1章でコンテンツ・ビジネスとはどのようなものかを,(アニメ)キャラクターを例にして解説することから始まります。

第2章では,著作権法,商標法,特許法,意匠法,実用新案法,民法,不正競争防止法などの概要とコンテンツ・ビジネスとの関連を簡単に解説した後,最も重要となる著作権法について,著作物の種類,著作者,法で保護されない著作物,著作隣接権を簡単に解説しています。

また,著作権(著作財産権)および著作者人格権に含まれる権利(支分権)の具体例を挙げて細かく解説しています。次いで,法に規定されている著作権が制限される場合を1つずつ具体的に挙げてその概要と注意点を解説した後,引用と認められる条件などについて細かく解説し,利用許諾の方法についても簡単に記しています。更に,著作権をめぐる検討課題について出版界から文化庁に提出された意見書を引用して解説しています。 第3章では,キャラクター・ライセンス・ビジネスを例にとり,動機と心構え,出会い,交渉と契約,マーケティング,管理,注意点の順で契約実務について解説しています。次いで,契約書作成時の重要なポイントについて具体的な項目(主な項目名には英語を併記)毎に例文とコメントで解り易く解説した後,契約書のレビューに際しての注意点をライセンサーとライセンシーの立場から解説しています。

第4章では,契約をめぐるトラブルへの対処方法をライセンサーとライセンシーの立場からQ and A 形式で解り易く解説した後,関連する判例を法令毎に解説しています。

第5章では,国際取引上の留意点について,条約の概要と著作権侵害への対処について解説した後,アジアの主要国の現状について記されています。

第6章では,各種の契約書のひな型(日本語版および英語版)を示すと共に留意点についても解説しています。

巻末には資料編として,関連する法令(一部は抄録)を掲載し,本文中に記載すると煩雑になるような事項の解説やトピックスなどはコラムとして記載しています。

以上紹介したように,コンテンツ・ビジネスに必要となる法令や契約書について解り易く解説されており,コンテンツを利用する実務者向けのハンドブックとしてだけではなく,コンテンツに興味のある初心者にも役立つ一冊だと思います。

(会誌広報委員会  ぽち)

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