新刊書紹介

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商標法講義

編著 西村 雅子 著
出版元 発明協会 A5版 498p
発行年月日・価格 2010年3月31日発行 3,800円(税別)

近時,「ブランド」の重要性は知財関係者のみならず,各方で話題に挙がっていますが,「ブランド」における商標の役割は改めて言をまたないところでしょう。

本書では,商標の基礎から実務上の論点,さらにはいわゆる「新しい商標」の議論について,講義形式での章立てで多くのトピックスが収載されています。特にお勧めしたい理由として,実務で出現頻度の高い条文を重点的に解説され,すぐに使える内容がコンパクトにまとめられています。一方,厳選された判例には丁寧な解説が附されており,各論点には充実した議論が行われています。

これから商標を勉強したい初学者へ本書は,専門職大学院で教鞭をとられている筆者により,講義に沿って執筆されており,初学者にも商標法の概説を理解できるよう判例や条文解釈を体系的に整理され,わかりやすく解説されています。「商標とは何か」から始まり,商標法での各制度の概要と議論を章別に具体例とともに解説され,実務に必要な知識が網羅されていますので,本書を読めば商標の理解に役立つものと考えます。

商標実務に携わっておられるベテランへ近時の法改正やいわゆる「新しい商標」について網羅されていますか。最新の判例を理解し,実務へ生かせていますか。本書では筆者により各論点の詳細な検討が論説されています。適宜判例や諸外国制度を引用し,最新の商標法・判例・学説の動きを理解でき,また重要判例の復習にも役立ち,ベテラン実務者の要求にも十分応えてくれると考えます。

さらに並行輸入や地域団体商標・小売等役務商標の論点や不正競争防止法や意匠法との関係も解説されているので,ベテランにとっても新たな知見が得られることでしょう。

商標を担当していない知財関係者へ商標に関する問い合わせを受けたことはありませんか。その際に担当者が別である,などと返答していませんか。難しい内容なら専門担当者に照会することも構わないでしょうが,貴方を頼っての問い合わせなら,一般的な内容なら答えてあげてもよいのではないでしょうか。本書を一読すれば,商標の基礎知識が網羅できますので,知識・業務の幅が広がり貴方への信頼が増すことでしょう。

以上,すべての知財関係者にお勧めしたい一冊です。

(会誌広報委員会   S.Y.)

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中国特許法ガイド−第3次法改正の解説−

編著 汪 恵民 著
出版元 経済産業調査会 A5判 406p
発行年月日・価格 2010年3月30日発行 4,000円(税別)

中国は,今や世界経済を牽引するほどの経済大国となっており,グローバルな企業活動を進めるうえで極めて重要な国といえる。輸出大国である我が国においては,海外の知的財産権は生命線であり,中国も例外ではない。今次の改正専利法及び改正実施細則によって,中国における知的財産権制度の役割は益々大きくなるものと思われ,知財に関わる実務者にとって中国特許制度の知識は必要不可欠になってきている。

本書は,中国特許制度を理解しやすいように中国専利法の各法条の構成に従って6章から構成される。

第1章では,中国特許制度とその沿革が紹介されている。今回改正(第3次改正)の概要については,中国専利法の理解を深められるよう,必要と認められる箇所には中国専利法の関係条文の改正経緯も紹介されている。現中国専利法(第3次改正法)は,専利権者の権利の強化が図られると共に,関係する国際的な取極への適合及び中国の国情に合った特徴的規定が盛り込まれたものとなっている。中国語でいう「専利」は発明,考案,意匠を含む概念であり,「専利権」には我が国でいう特許権,実用新案権,意匠権が存在する。本書では,読者の利便性を考え,現中国専利法について,特許権,実用新案権お よび意匠権を区別して解説がなされている。

第2章から第4章では,専利権授与の要件と,専利の出願及び審査に関連する実務が紹介されている。基本書として各項目を解説するとともに日中両国特許法の比較が各所でなされ,我が国特許法の基本書を読んだ経験のある者にとっては,非常に読み易い構成となっている。第2章の末尾には,日中両国特許法の相違点が表にまとめられており,相違点を調べたい場合に便利である。

第5章及び第6章では,専利権の存続期間,消滅,無効及び保護について紹介がされている。

中国では,法律条文の理解が一致していない場合や,法律の正確な実施に影響がある場合に,法律の解釈や法令の追加等の措置が採られる。 「司法解釈」と呼ばれるもので,法律と同等の効力を有することから,エンフォースメントを検討する場合は司法解釈にも注意を払う必要がある。本書では,多数ある司法解釈の中で侵害関係で重要なものを取り上げつつ,専利権の保護について説明がなされている。また,侵害/非侵害の判定については,「北京高級人民法院の執行通知」を参考に,等同(日本の均等に相当)の原則や,禁反言の原則についても説明がなされている。

本書は,中国特許制度の紹介とともに,例えば「日本から中国へ出願する際の特許請求範囲の記載に関する注意点」等,筆者の長年の代理実務から注意すべき点が述べられており,出願や中間処理の実務を進める上で有益な情報が満載である。

中国特許制度の概要を学びたい初学者はもちろん,中国特許実務に携わる全ての知財担当者にお勧めしたい一冊である。

(会誌広報委員会  T.F)

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企業発展に必要な特許戦略

編著 宇佐見 弘文 著
出版元 北樹出版 A5版 208p
発行年月日・価格 2010年4月1日発行 2,500円(税別)

知財戦略の三位一体経営の重要性はもはや企業にとって一般常識となりつつある。このような三位一体経営を実現するため,各企業は様々な取り組みを行っているが,どのような戦略をたてていくかは未だ試行錯誤の状態が続いていると見受けられる。

著者は,大手薬品メーカにおいて長年知財関連の仕事に携わり,医薬品企業における特許戦略に精通している。本書では,医薬品業界の特許戦略の具体例を挙げつつ,企業にとって特許とは何か,企業活動を効率的かつ円滑に進めるための特許を戦略的に活用する仕方や考え方(特許戦略)とは何か,などを解説している。

以下に,本書の内容について紹介する。

一言に特許戦略といっても様々な方面からの検討が必要である。まずは,企業における特許戦略の位置づけなど全般的な説明を行っている。そして,特許戦略の種類を「出願戦略」,「権利化戦略」,「情報戦略」,「係争戦略」,「コスト戦略」,「管理戦略」に分けて,各章において詳細に解説がなされている。

「出願戦略」としては,研究開始前からの研究段階から特許出願が完了するまでの期間の戦略を取り扱っている。検討すべき主な課題としては,―妬8Φ罎硫麋髻き⊇亟蠅隆霆燹ぬ榲,時期,方法,方針,H明者の認定,そ亟蠖佑侶萃蝓きゥ離Ε魯Φ蚕僂亮茲螳靴ぁきκ幻ト表等の取り扱い,Т慙契約に基づく取り扱いがある,と解説している。特に特許出願の必要性を企業経営の観点からどのように判断していくか,ということについて厚く記載されており,非常に参考になる。さらにどのような観点でどこの国に出願すべきかまで触れている。

「権利化戦略」では,どのように審査に対応していくか,といったかなり具体的な記載がなされている。自社製品,他者製品の状況を見ながら,必要なクレームを作成していくことが記載されている。特に医薬品特許に特有の制度である保護期間の延長戦略など非常に詳しく記載されている。

「情報戦略」では,パテントマップなどを挙げて各段階に活用することを記載されているが,一般的な話を解説している。

「係争戦略」では,自社の研究・開発品または技術と係争戦略や交渉の要否と時期,製品・技術導入における戦略について解説している。

「コスト戦略」では,国内外代理人に出願業務などを依頼する場合,一般の業務委託に比べて高額な費用が必要であるため,その費用に見合った成果が得られているかを厳格に判断するには,どのような考えに基づけばいいか,を丁寧に記載している。

「管理戦略」では,主に特許の価値評価に基づいた活用,権利維持,放棄といった点での戦略について解説されている。

出願戦略,権利化戦略の部分が厚く記載されており,全体を通して今まで企業内でもノウハウ的なところであった戦略論が述べられていて,実際に特許実務を担当されている方々には非常に参考になるとともに,広く企業内の知財に関わる方々が活用できる書物になっていると思われ,ぜひお勧めしたい一冊である。

(会誌広報委員会   Y.O)

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