新刊書紹介

新刊書紹介

新・注解 特許法

編著 中山 信弘,小泉 直樹 編
出版元 青林書院 上巻 A5判 1,424p
下巻 A5判 1,536p
発行年月日・価格 2011年4月26日発行
上巻 17,000円,下巻 19,000円(税別)

 10年の期間を経て,ついに注解特許法が改定された。いまさら説明の必要もない特許法の体系書であることは読者もご承知のことであろうが,改めて本書の特徴を紹介したい。

 この10年間,知財分野で大きな判決や法改正が相次いだ。前版の出版時期は,キルビー判決の言い渡し日(2000年4月11日)とほぼ一致している。その後も多くの重要判例や法改正を重ね,現在に至っていることは周知の通りである。その間,本書の改定を待ちわびた知財関係者は多いことだろう。本書が読者の期待に沿うことは間違いなく,最新の判例,学説動向を網羅している点で,前版に勝るとも劣らないといって問題ないだろう。
 最新の判例が収録されている点について若干の紹介をしたい。現在審査基準の改定が検討されている延長登録出願(特許法68条の2)の項目では井関涼子同志社大学教授により,詳細な議論が執筆されている。まさしく現在の特許法が収録されている点を強調したい。

 今回の改訂の大きな特徴は,執筆者のほとんどが前版から変更された点である。弁護士・弁理士の執筆が増えている。実務視点での網羅的な裁判例の紹介・解説は多くの実務家にとってのマイルストーンとなることは間違いないだろう。

 本書を紹介するにあたり,全文を読んだ。恥かしながらこの厚みの書籍を全文読んだのは初めてである。大きな抵抗なく読破することが出来たことは自分でも驚きである。本書から改めて特許法はよくできており,発明を奨励しもって産業の発展に寄与するとの特許法の精神を再認識できた気がする。
 特許に携わる読者に伝えたい。本書は厚く全部を読破することは難しいかも知れない。しかし特許法のすべてが本書に収められていると言っても過言ではない。時間と費用をかけても本書は読む価値がある。騙されたと思って一度手に取ってほしい。決して損はないはずである。

 繰り返すが,本書は前版を踏襲したうえで10年の進展を網羅し,さらに将来の特許法の発展を理解するうえで必須であり,特許,さらに知的財産を理解するうえで必読の書籍である。

 日本の知的財産業界にとって,これほどの書籍があることを改めて誇りに感じ,加えて編者である中山信弘先生・小泉直樹先生にはこれほどの大書を編集されたことに,心より敬意を表したい。両先生並びに執筆者先生方のご健勝と更なるご活躍を願ってやまない。

(紹介者 会誌広報委員 S.Y.)

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明治の特許維新−外国特許第1号への挑戦!−

編著 櫻井 孝 著
出版元 発明協会 A5判 240p
発行年月日・価格 2011年4月18日発行 1,800円(税別)

 「知財管理」誌8月号の編集後記でも少し触れていますが,2010年11月,オバマ米大統領から菅前内閣総理大臣に,今から100年以上前に日本人がはじめて取得した米国特許の複製が贈呈されました。その米国特許の発明者は,文明開化の横浜で活躍した煙火師の平山甚太という方です。
 本書は,第1章で米国特許を取得した最初の日本人(前出の平山甚太)の物語,第2章で英国特許を取得した最初の日本人(西川虎之助)の物語,第3章で日本特許を取得した最初の外国人の物語と,特許制度の構築までの高橋是清を中心とする明治の偉人の奮闘の様子や歴史的経緯などを,豊富な資料を用いて解説しています。
 今日,グローバルに事業展開を行う多くの企業にとって,米国をはじめとする外国での特許戦略は重要な意味を持ちます。しかしながら,今から100年以上前,日本でまだ特許制度が創設される以前に,米国に特許出願(明治16年3月15日出願)を行い,特許権(同年8月7日登録)を得て,グローバルに事業展開を行った実業家がいたことに驚かされます。また,この明治16年は,ライト兄弟が人類ではじめて飛行機を飛ばした明治36年や,日米間に最初の電信(電報)用の太平洋横断海底ケーブルが敷かれた明治39年より前であることから,通信手段も儘ならない時代であったことがわかります。この時代に,平山甚太は米国代理人と連絡を取り迅速に米国出願についての書類のやり取りを行っていたのです。平山甚太のグローバルな事業戦略への思いの強さ,挑戦する力が感じとれ,賛嘆させられます。
 また,平山甚太が米国に特許出願するより7年も前に,英国で特許を取った日本人もいたそうです。それが化学者の西川虎之助です。第2章で紹介されていますが,西川虎之助が英国に滞在している間に特許出願をしたものということです。日本に住みながら,苦労しつつ米国に特許出願した前出の平山甚太のケースとは事情が異なると思いますが,明治9年に英国特許を取得したことは大変すばらしいことです。
 通信手段が発展し,地球の裏側の出来事もすぐに知ることができる現在であっても,私は,出願経験の少ない国で外国特許を取得することは容易ではないと考えます。外国特許に苦手意識を持つ,私のような考えの知財担当者は,本書を一読して,気持ちを新たに明日からの業務に取り組んでみてはいかがでしょうか?

(紹介者 会誌広報委員 M.N.)

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知財戦略経営概論−知識経済社会を生き抜く教養書−

編著 玉井 誠一郎 著
出版元 日刊工業新聞社 A5判 334p
発行年月日・価格 2011年2月11日発行 3,000円(税別)

 本書のタイトルからどのような内容を想像されるだろうか。私は垂直統合モデル,水平分業モデル,オープン・クローズ戦略等を想像したが,予想に反し,考えたことがなかった斬新な「知財ブランドモデル」が提唱されていた。
 さらに,新鮮だったのは,哲学から入って,現状分析,日米の政策と日本の課題,知的財産の基礎知識,知財の重要性および従来モデルについて読者に理解させてから,本題である知財経営へと繋がっていく構成である。
 知財経営理論については,今までに提唱されている従来モデルとの比較もしっかりされており,唯我独尊ではないことが理解できる。また,本編の最終ページには,「知財ブランドモデル」の実現に向けての構想も具体化され,著者の強い思いが感じられる。

 本編は,第1章の「世界観を持つ」では,知財経営力を持つ個の時代と社会への貢献について解かれており,第2章では,無形資産価値の重要性について,過去の研究事例から解説されている。第3章と第4章では,データと日米の政策に基づき,日本の産業競争力と知財の問題を明らかにしている。
 第5章から第10章までは,「発明の創出方法,明細書の質,特許の本質,知財の価値,オープン・クローズ,日米の特許裁判」という知財活動を行う上での必須テーマを取り上げ,課題とともに解決策が提言されている。解説が学術的に偏らず,事例に基づいている点が読者の理解を助けている。
 第11章から第13章は知財経営・知財戦略について,従来の考え方,従来のモデルをメインに解説し,実務上の課題と解決策が提言されている。ここでも,図と事例をまじえながら解説されているため,非常に理解しやすいのが特徴的である。
 第14章と第15章が本題の「新しい知財モデル」と「今後の展開」であるが,第1章から第13章までの内容が,新しいモデルを理解する上で重要となることが分かる。何ページのどの図が関連するのか示されているため,非常に親切である。詳しい内容は省略するが,商品に使用されている知財情報を開示することにより,企業のブランド価値を形成するとともに,商品価値向上,コピー防止,参入障壁の確立,侵害発見の効率化,消費者の知財意識向上を図るものである。ここでも,概念的な説明だけでなく,従来モデルとの比較,具体的実現方法まで解説されているため,非常に説得力がある。

 戦略・経営論に終始することなく,知財経営的視点から網羅的にテーマを取り扱い,今までの政策や提唱モデルとともに新しい知財モデルを提唱しているため,生え抜きのマネージャーはもとより他部門からの異動でマネージャーとなった方にもお勧めの参考書である。

(紹介者 会誌広報委員 M.O)

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大学と研究機関,技術移転機関のための知財契約の実践的実務マニュアル

編著 雨宮 則夫・佐田 洋一郎 監修
奥 登志生・金 雄三郎・富崎 元成・木村 友久 著
出版元 経済産業調査会 A4判 240p
発行年月日・価格 2011年8月12日発行 3,800円(税別)

 本書は,題名通り,大学・研究機関・TLOが知的財産に関する契約を結ぶ際の参考に供するために書かれたものである。また,特許などの知的財産を共同開発する企業であって,自己で生産する能力を持たない企業(電力会社,ガス会社など)が契約する際も,そのまま適用できると思われる。
 著者は,企業(メーカー)の契約担当の経験者,特許事務所の専門家,大学の産学連携契約の経験者からなっており,その豊富な経験から契約を結ぶ際の注意点が述べられている。
 内容としては,まず,契約の一般常識,知財契約の典型例の例示,技術契約についての一般的な議論,知財契約の管理における注意点が述べられている。その後に各種契約文の雛形が掲載されている。更に著作権を対象とする契約について特に注意すべき点が述べられており,最後に用語の説明が付されている。尚,契約文の雛形については,付属のCD-ROMにWordR文書で収録されている。
 分量としては契約文の雛形が過半を占めているので,実務で契約文を作成するために読む目的ならば,全部を読む必要はないであろう。ただし,欧米の契約と異なり,「本契約に定めない事項および本契約の条項の解釈に疑義を生じた場合は,甲,乙誠意をもって協議し…」なので,全文を読んでも大きな負担にはならないと思われる。
 秘密保持契約,共同開発契約,共同出願契約,ライセンス契約,著作物系の契約各種など,この種の契約について一通り注意点が述べられており,また,契約文の雛形もあるので,これから知財契約に携わる初心者や組織にとっては非常に便利であり,お勧めできる。また,知財契約を業とする実務者や組織にとっても,今まで取り交わしてきた契約の条項に不要な制約を加えていなかったか,あるいは,入れ忘れていた条項がないか等がチェックできるので,見直すには参考になると思われる。
 雛形の各種契約文の条項であるが,文部科学省雛形もあり,資料としての価値がある。また,大学・TLOのスタンスが見えてくるので,これから大学・TLOと契約を結ぼうとする企業(特にメーカー)の契約担当者にとっても,有益である。是非一読を勧めたい。

(紹介者 会誌広報委員 N.I.)

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