新刊書紹介

新刊書紹介

韓国特許実務入門−第2版−

編著 康 應善 著
酒井 宏明 編著
出版元 経済産業調査会 A5判 460p
発行年月日・価格 2011年12月26日発行 4,400円(税別)

 2011年,韓国特許庁に出願された特許出願件数は,179,687件であり,2010年に比べ,約6%も増加しています。これは,中国・米国・日 本に続く,世界第4位の水準です。このうち,日本企業による出願は15,556件で,不景気といわれながらも,2010年に比べ,約10%増加しており,これは全外国企業による韓国特許出願(41,519件)の約37%に該当します。このように,日本企業は,韓国へ多くの特許出願をしていますが,一方,日本語で記述された韓国特許の実務書は,実質上,皆無だったのではないでしょうか。

本書は,日本企業の特許担当者が読者として想定されており,特許出願から審査および審判,さらに審決取消訴訟,侵害訴訟,最終的には特 許登録管理までを網羅した実務書となっています。終始一貫して,単に理論にとどまるのでなく,あくまでも‘実務’を中心として,入門者 から専門家までを意識し,韓国特許法のみならず,実務の流れ,学説および判例に至るまで,読みやすく整理して説明されています。そして, 特許担当者が必ず知っておかなければならないことが,日本特許法と比較して,簡潔かつ明瞭に解説されています。特に,2010年までの最新 の統計(例えば,訂正審判の請求件数とその処理結果の統計など)が掲載されていますので,実務を行ううえで,非常に参考になります。ま た,韓国特許法は,日本の特許担当者が理解しやすい表現になっており,本書をひもときながら日韓特許法の差を自然に理解できるようにな っている点にも本書の特徴があるといえます。

さらに本書を見ていくと,本書がいかに実務的観点で書かれているのかがわかります。例えば,183頁には,審査官との面接審査に関する ことが説明されています。ここでは,韓国特許庁が,ソウルではなく大田(ソウルから約150km離れている)にあり,審査官との面接は,特許 庁がある大田(広域市)で行うことになることが書かれています。そのため,ソウルの代理人が面接を実施する場合,移動時間を含め約5〜 6時間程度が必要となり,面接の必要性は費用的な面も考慮して検討すべきことが解説されています。このように,韓国特許庁がソウルから 結構離れた位置にあること自体,日本の特許担当者は,あまり知らないのではないでしょうか? かくいう私も本書を読んで初めて知りま したが・・・。とにかく,このように特許担当者にとって,実務上必須の実用書であることは間違いありません。

なお,2011年11月,韓国は米国とのFTAの批准手続きを完了しました。これに伴い,韓国では2011年12月2日付けで,米韓FTAを反映 した改正特許法が改正・公布されました。本書には,この改正内容が反映されていないため,その点は予め留意する必要があります。この点 は,第3版での解説の追加を期待しましょう。

(紹介者 会誌広報委員 Y.K.)

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実務詳説 著作権訴訟

編著 睇堯≠探子 著
出版元 きんざい A5判 440p
発行年月日・価格 2012年1月27日発行 4,600円(税別)

本書は現役の知財高裁裁判官である著者が昨年執筆した「実務詳説 特許関係訴訟」に続いて,著作権訴訟について執筆した裁判実務の解 説書である。

著作権者が原告となって侵害行為の差止等を請求する著作権侵害訴訟を中心に解説されているが,それだけに留まらず,著作権に関する訴 訟に必要な手続的・法的情報が網羅的にまとめられている。各ポイントでは過去の判例を紹介しつつ,その留意点がバランス良く且つ丁寧に 解説されており,本書の実用性が高められている。

以下,構成と内容について簡単に紹介する。
「第1章 訴訟手続」では,訴状や答弁書の記載例を挙げながら,手続の概略が紹介されている。また,和解や仮処分については,それぞ れ留意点が挙げられており,実務者にとって参考となる。

「第2章 当事者と保護対象」では,原告と被告,著作物性についてまとめられている。特に著作権侵害行為の主体については,昨年立て 続けに出されたテレビ番組の転送サービスにおけるサービス提供者の著作権法上の責任をめぐる裁判の最高裁判決(まねきTV事件,ロクラク胸件)を含めた5つの最高裁判決や下級審,学説を紹介しながら詳細に解説されている。

「第3章 請求の趣旨と原因」では,差止請求や損害賠償請求等の各請求における趣旨や要件事実について,文例やブロックダイヤログを 用いて留意点を論じている。

「第4章 著作権侵害の成否」,「第5章 著作者人格権侵害の成否」では,著作権侵害訴訟の中で圧倒的多数を占める複製権及び翻案権を はじめとして,権利の種類や著作物の種類による特性をふまえながら,侵害の成否や制限規定の適用の可否について,それぞれ留意点を概説 している。

「第6章 国際化と著作権訴訟」では,国際化に伴って渉外的要素を含む訴訟が増えてきたことから,国際裁判管轄や準拠法,外国人の著 作物,国際取引について解説されている。

「第7章 その他の著作権訴訟」では,著作権の譲渡契約やライセンス契約に伴う侵害訴訟以外の訴訟類型についても説明されている。 このように本書は,実際に訴訟実務にかかわる弁護士や弁理士だけではなく,業務で訴訟案件を担当する企業の知的財産部や法務部の担当 者にとっても著作権訴訟の実務を理解するために非常に役立つものと思われる。「実務詳説特許関係訴訟」と同様,自信を持ってお薦めで きる一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 A.N.)

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商標権侵害と商標的使用

編著 大西 育子 著
出版元 信山社 A5判 288p
発行年月日・価格 2011年10月20日発行 8,800円(税別)

 商標実務において「商標的使用」,つまり出所表示機能など商標としての機能を発揮する形で使用されているか否かについてよく問題とな るのは,不使用取消審判や侵害訴訟の際である。使用の方法によっては「商標的使用」に該当しないと判断され商標が取り消される,また例え ば商号と同じ標章の使用方法が「商標的使用」に該当し第三者の商標を侵害していると判断される,といったことがあるため,「商標的使用」 の概念につき商標担当者はしっかりと理解しておく必要がある。

「商標的使用」の理解不足を痛感することがあり,題名に惹かれて筆者は本書を手に取った。

本書は下記の5章により構成されている。
第1章 問題の所在と本書の目的
第2章 欧州における商標権侵害と商標の機能
第3章  わが国における商標権侵害と商標的使用
第4章 欧州法との比較と欧州法からの示唆
第5章 結論

上記構成からわかるように,本書では,まず欧州共同体における「商標的使用」につき,構成国の国内裁判所より付託され,欧州司法裁判 所が下した「商標的使用」とはいかなるものかに関する解釈・判断を通じて検討・分析が行われている。そして,日本における「商標的使用」 の概念につき判例や学説を通じて検討を行い,欧州共同体の解釈・判断とその検討結果を参考・比較しながら,考察を深めている。

なお,執筆者が参考・比較対象として欧州共同体を取り上げたのは,欧州共同体では,各構成国が独自の商標法を有し,各国ごとに商標権 が成立しうる状況において,共同体内の物の移動の自由と商標権の保護のバランスをとる必要があり,日本におけるよりも深い検討がなされ てきているからとのことである。

本書は弁理士である著者が執筆した学位論文に修正などを加えたものということであり,実務書そのものではない。しかし,侵害事件での 裁判所の判断などを通じて,商標法により保護される商標の機能とは何か,使用とはどのような行為をさすのか,など「商標的使用」をめぐ る詳細な検討がなされているため,実務で「商標的使用」かどうか判断しなければならない時の判断基準を作るのに本書は役に立つと考え る。

学術的な知識を求める方,実務に役立つ知識を求める方の両方にお勧めできる本である。

(紹介者 会誌広報委員 U.E)

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売り言葉は買うな!ビジネス交渉の必勝法

編著 一色 正彦,高槻 亮輔 著
出版元 日本経済新聞出版社 四六判 256p
発行年月日・価格 2011年11月7日発行 1,600円(税別)

日ごろ業務を行っていると,つくづく知財の仕事は交渉ごとが多いと感じる。相手会社とライセンス交渉を行う場合は言うまでもなく,社 内の発明者を相手に技術のポイントを引き出したり,発明原稿のブラッシュアップを頼んだりすることも大事な交渉の一つである。交渉は元 来互いに対立する利害関係を解決するものなので,それ自体が簡単でないのは当たり前だろう。しかし難しいからといって,相手をだまして罠 に陥れたり,大声で自分の主張を押し通したりしたのでは決して問題解決にはならない。まさに喧嘩(売り言葉)は売っても買ってもだめな のである。ではどうすれば交渉で自分のミッションを実現できるのか?本当の意味での交渉の成功とは何か?そうした疑問に,交渉学という 学問的成果と,模擬交渉(ロールプレイ)や現実のビジネス交渉での豊富な事例を用いて答えてくれるのが本書である

いくつか印象に残ったところを紹介する。まず,そもそも交渉は単なる小手先のテクニックなどではない。真のWin-Win(複数当事者が互 いに価値ある関係を作り,それが維持できている状態)を実現するための戦略的方法論なのである。従って交渉の成功とは,目先の利益が確 保できればいいというものではなく,利益の全体構造や相手と自分との関係を理解した上で,トータルかつ長期的に利益が確保できた場合で あるといえる。

交渉を成功に導くためには,しっかりと交渉シナリオを準備することが重要である(著者は準備8割,現場対応2割と説く)。このとき相 手と自分との関係を図でマップ化しておくとよい。これによって状況の全体像が見渡せ,仲間と情報の共有ができる。さらに準備にあたって は,なるべくたくさんのオプションを用意しておくことが有効である。交渉シナリオでは,まず交渉で実現したい「ミッション」(目先の合 意ではなく,中長期的視点,継続的視点に立ったもの)を明確にする。次にこれを具体化した目標を設定する。このとき,最高と最低の目標 を考え,幅を持たせて設定することが大切である。最後に,ミッションが実現できなかった場合の選択肢を用意しておくことも重要である。

交渉は結局相手が納得して合意しなければ成立しないので,「自分がもし相手の立場だったら」という視点に立って進めることが何より必 要である。このときコンテキスト(相手が背負っている背景や事情)が共有できればなおよい。

交渉のゴールは単に自分の目標が達成できればいいというのではなく,相手が自分の目標を受け入れた場合のメリット・デメリットまで考 えた上で,相手のメリットの実現と自分の最高の目標の実現とが同時に達成できればベストである。この意味で,交渉を真剣に考えることは, 事業戦略や経営戦略にも通じると思う。

本書の魅力の一つは,模擬交渉の興味深いエピソードがたくさん載っているところである。

最近はJIPAの研修でも交渉学が好評と聞く。自分もぜひ一度模擬交渉でロールプレイを体験してみたくなった。 本書が教えてくれる交渉の考え方,トレーニングの仕方は,知財に限らずビジネスの様々な場面で役立つと思う。

(紹介者 会誌広報委員 T.Y.)

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