新刊書紹介

新刊書紹介

中国ビジネス 技術・プランドの活かし方〜事業企画・知財・法務・税務のノウハウ〜

編著 谷口 由記,小倉 啓七,中尾 優,佐和 周
出版元 経済産業調査会 A5判 248p
発行年月日・価格 2012年2月2日発行 2,600円(税別)

 現在,多くの企業で展開されているグローバル・ビジネスモデルにおいては,それぞれの事業展開に引きずられて,法務・税務も否応なく グローバル化の波に巻き込まれていきます。その中で,知財の役割が見直され,その利用価値に注目が集まってきています。

また,知的創造サイクルにかかわる業務は,社内の事業全体に広がっており,もはや専門の部署のみで対応できる業務ではなくなってきて いるのが実情です。この業務に携わるには,知的財産の取得から活用に至るまでの多様かつ有効な知識が必要となります。

さらに,知財の権利化には各国での行政処分に必要とされる時間が必要であるため,事業企画を考慮する上では,事業展開前に出願〜権利 化といったリードタイムが存在することも考慮に入れなくてはなりません。

しかも,中国をはじめとする新興国ビジネスでは,現地で製造・販売を行うビジネス展開も多く,これまで対先進国向け輸出型ビジネスを 展開してきた日本企業が深く経験してこなかった知財業務内容が重要となってくる場合が多くなります。

このような多種多様の考慮点について,判断にスピードが要求される現場では,知財・法務分野と事業企画・財務分野の関連性の理解はと ても重要なものとなります。

本書は,単に中国への特許出願手続き等について説明した冊子ではなく,実際に中国でビジネスを進めるにあたり,知財・税務に絡んで問題となる点をパターン毎に分けるなど,上記問題点とその対応方針についてコンパクトに説明 されています。

第1章 事業企画編
第2章 出願実務編
第3章 知財ビジネス法務編
第4章 税務編

例えば,第1章の「事業企画編」では,「中国での製造及び販売ビジネス」を行うのか,あるいは「中国へのライセンスアウトビジネス」 を行うのか等といったように,様々なビジネス形態に対する知財の活用パターンが形態毎にまとめられています。また,実際にビジネスを進 めるにあたって問題となりそうな点についての簡単なアドバイスもまとめられており,その内容は,普段,知財を専門とされていない方にも わかりやすいものとなっています。その他の章においても同様であり,中国ビジネスをこれから手がける企業のみならず,すでに展開してい る企業にとってもさらなる知財戦略構築に向けた手引き書として有用であると思います。

実際のビジネスではもう少し事案が複雑になり,専門家への相談は欠かせませんが,相談内容を専門家に説明するための手助けにも大いに 活用できる一冊であると思います。

(紹介者 会誌広報委員 M.T.)

新刊書紹介

意匠法

編著 茶園 成樹 編
出版元 有斐閣 A5判 306p
発行年月日・価格 2012年3月31日発行 3,000円(税別)

平成24年4月1日に特許法などと共に意匠法 の改正法が施行された。意匠法では特許法の条 文を準用している条文も多く,特許法の改正に よって意匠法も大きく改正されたと言える。本 書は改正法施行前日という絶妙なタイミングで 発行されたものであり,もちろん改正の内容を 反映している。事件が多く解説書も多い特許法 や著作権法に比して,意匠法に関する書籍は決 して多いとは言えず,法改正に対応した意匠法 についての書籍というのは本書がおそらく最初 のものとなるのではないだろうか。

編者は大阪大学で教鞭を取られている茶園成 樹教授であり,他にも著者として大阪大学の研 究者教員・実務家教員が名を連ねている。 本書の構成は,「意匠保護制度」(第1章)に 始まり,意匠権取得までの手続的内容(第2章 〜第8章),意匠権取得後の実体的内容(第9 章〜第11章)まで一通りを網羅しており,本書 を読むことにより意匠制度の全体像を把握する ことができる。

内容は,本書「はしがき」にて編者が言及し ているとおり,初めて意匠法を学ぶ人を広く読 者として想定しているため,意匠制度の基本的 事項を解説するものとなっている。学術的に議 論の分かれる論点は基本的には判例・通説によることとしており,初学者の混乱を招かないよ うな配慮がなされている。初心者にとって難し い法律用語は「用語解説欄」で解説されており, さらに「CASE」欄には本書各セクションの内 容に沿った事例を掲載することにより実際にど のような場面が想定されるのか分かり易く解説 されている。また,本書各節のはじめには要点 をまとめた「POINT」欄があり,各節におい て何が記載されているのか一目瞭然となるよう 工夫がされている。

このような内容から,編者は大学・大学院の 意匠法の授業のテキストとして,また,独学で 意匠法を勉学する人の独習用の教材としての利 用を想定していると記載しているが,それだけ ではない。企業で知的財産部門に新たに配属さ れた人の入門テキストとしても好適であるし, さらに企業内で製品のデザインに関わる人にも 是非読んでいただきたい。また,既に企業内で 実務に携わる人であっても意匠登録出願から権 利行使まで実務の全般に関わっている人は少な い。実務家にとっても既にある知識をレビュー し,知識の抜け・漏れを補い,改正法を含めた 知識のアップデートができるだろう。

編者は,本書を皮切りに今後知的財産法に含 まれる他の法律についても本書と同コンセプト の解説書を出版していきたい,と述べている。 今後出版されるであろうこれらの書籍を知的財 産権法の基本解説書シリーズとして揃えておき たい。

(紹介者 会誌広報委員 A.O.)

新刊書紹介

デジタルコンテンツ法制 過去・現在・未来の課題

編著 増田 雅史,生貝 直人 著
出版元 朝日新聞出版 A5判 191p
発行年月日・価格 2012年3月30日発行 1,800円(税別)

近年IT技術・ITインフラの発達によって, 音楽,映像,書籍などあらゆるコンテンツがイ ンターネット上で流通するようになった。

このような社会状況の変化に対応して,わが 国においても著作権をはじめとする様々な法改 正が進められ,また内閣府の知的財産権本部を 中心に数多くの政策が採られてきている。デジ タルコンテンツ産業の市場規模は,この10年間 で2倍以上に急成長している。半導体産業など の製造業は,アジアなどの新興国の台頭によっ てそのシェアを奪われつつある中,デジタルコ ンテンツ産業は,今後益々成長していく産業で ある。

本書は,デジタルコンテンツに関する法制度 の変遷,海外の動向について振り返り,現在の 課題について解き明かしている。そして,今後 10年デジタルコンテンツ産業の発展のための規 制のあり方について述べている。

第犠蓮屮灰鵐謄鵐痛\の中核としての著作 権法」では,基本的な著作権法について解説し ている。

第蕎蓮屮妊献織襯灰鵐謄鵐痛\の成立と発 展」では,1996年ごろから現在に至るまでの世 界の動向と法制度の変遷についてまとめられて いる。

また年表にしてまとめられているので大変見 易くなっている。第珪蓮2010年代のデジタルコンテンツ法制」 では,欧州・米国における最新の状況を参照し, それをもとに,わが国の今後の法制度のあり方 について述べられている。

著作権法は,複製行為に向けられた産業規制 法的な法律である。以前は媒体へのコピーに対 する考え方だったが,インターネット上でデジ タルコンテンツが多様な形態で流通・利用され るようになった結果,複製に対する考え方も様 変わりしてきた。誰もがインターネット上でコ ンテンツ(著作物)を創作・発表できるように なった今,著作権を「複製を制限する権利=コ ピーライト」として捉え続けているだけでは, 著作権法1条の「文化の発展に寄与する」との 法目的を満足できないのではないだろうか。こ のような情勢の中,法による直接規制だけでな く,企業や業界団体による自主規制や公と私の 協力関係に基づく共同規制といった世界の様々 な動きがある。一方,わが国は場当たり的な法 改正,不十分な振興政策(≒規制の温存)を繰 り返したため,グローバルな潮流へ乗り遅れ, 海外企業などにデジタルコンテンツの流通市場 を握られるに至った。

本書の結語において筆者らは,今後のデジタ ルコンテンツ法制の形成は,一国の政府による 「国内的な立法」だけでも,そして制定法とい う「狭義の法」のみでも決定できず,国際的な 公と私のネットワークの中においてしか,見出 されないと主張している。今後10年,デジタル コンテンツビジネスは大きな変貌を遂げていく と思われる。そのような状況の中で自らの立ち 位置を明確にするためにも本書を推薦する。

(紹介者 会誌広報委員 Y.O.)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.