新刊書紹介

新刊書紹介

商標登録制度の解説と意見書24例

編著 眞島 宏明 著
出版元 経済産業調査会 A5判 320p
発行年月日・価格 2012年3月23日発行 3,500円(税別)

 本書は題名どおり,前半の商標登録制度の解説パートと後半の意見書例パートから構成されている。

執筆当初は,意見書作成のマニュアルのみの構想だったが,質の高い意見書を作成するためには商標法に対する体系的な理解が必要である と考え,商標登録制度の解説を組み込んだということである。ここでは商標法の目的からマドリッド協定の議定書に基づく特例まで簡潔に解 説されている。

意見書例パートは第1章 総論,第2章 識別力に関する意見書,第3章 類否に関する意見書,第4章 公序良俗の関する意見書,の4 章から構成されている。

総論では,説得力のある意見書を作成するために必要な,拒絶理由の把握,対応方針の決定から実際に意見を文書化,庁に提出するまでの ステップが提示され,更に各ステップごとに注意事項などが記載されている。

意見書例は題名のとおり24例取り上げられているが,識別力に関する意見書11例,類否に関する意見書10例,公序良俗に関する意見書3例 の内訳となっている。出願人が受ける拒絶理由通知のうち識別力(3条1項各号)と類否(4条1項11号)に係る拒絶理由通知が大半を占め ることからいえば,識別力と類否に関する意見書例が多く取り上げられているのは納得できる。

各意見書例には,拒絶理由の分析から導き出される拒絶理由の解消の鍵となる主張,その主張をするために論じるポイントなどの簡潔な解 説がされている。

意見書例自体ももちろん参考になる。しかし,同じ条文違反で拒絶理由を受けたとしても,商標が違えば鍵となる主張や論じるポイントは違 ってくる。このため,拒絶理由の分析方法や論点のポイントの導き方についての解説のほうが,実際に意見書を書く場面では,より応用が 利き活用価値があるのではないかと思う。

数点の意見書例が記載された商標実務書はいままであったかもしれないが,意見書につき真っ向から取り上げた本書のようなものは今まで なかった。意見書例は数多く知れば知るほど,自分の中に引き出しが増え,よりよい意見書がかけると思うので,本書は大いに参考になる。 意見書作成に悩む商標実務家にお勧めの一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 U.E.)

新刊書紹介

特許判例百選[第4版]

編著 中山 信弘・大渕 哲也・小泉 直樹・田村 善之 編
出版元 有斐閣 B5判 220p
発行年月日・価格 2012年4月5日発行 2,400円(税別)
本書は,おなじみ有斐閣の別冊ジュリスト判例百選シリーズの特許判例百選である。斯界を代表する学者・裁判官・弁護士等が特許分野の 最重要判例104件をわかりやすく解説している。

第4版で初収録の判例は42件あり,前版に収録された判例と大幅に入れ替わっている。また2012年4月施行の改正特許法と関連する判例に ついてはその影響も解説された最新の内容となっている。前版に比べて特筆すべきはやはり知財高裁の裁判例が多数収録されている点と,職 務発明に関する判例が充実してきた点である。

コンテンツは論点ごとに体系的に整理されて収録されているため,調べたい論点にアクセスし易く,また,見開き2ページで1つの判例の 解説が完結しており,読み易いのも特徴である。

リサイクル製品と消尽論の考え方を判示したNo.57インクタンク事件や,特許法104条の3の趣旨を説いたNo.76ナイフの加工装置事件(尤 も訂正審決の確定は平成24年特許法改正により民訴法338条1項8号所定の再審事由ではなくなった。)など,注目判決を復習するのにも便 利である。

論点の体系と収録数は以下の通り。

  • I 発 明(7件)
  • II 特許要件(15件)
  • III 発明者の権利(5件)
  • IV 発明者および職務発明(8件)
  • V 出願・審査(4件)此/拡宗θ縦蝓複厳錙
  • VII 審決等取消訴訟(8件)
  • VIII 特許権の効力(4件)
  • IX 特許権の侵害等(20件)
  • X 侵害に対する救済(12件)
  • XI 特許権の利用(6件)
  • XII 渉外関係(4件)
  • XIII 実用新案法関係(3件)
  • 「発明」の項目では,主に自然法則の利用とは何かを考える際に参考となろう。ソフトウェア産業に携わる知財部員にとって,発明の定義 として法定された我が国特有の本要件の理解は必須である。「出願・審査」及び「審判・判定」を含め,「特許要件」の理解は出願実務のみならず攻撃・防御の場面において抵触性と双璧をなす要である。また,「発明者の権利」,「発明者および職務発明」の理解は,特許法35条に規定する「相当の対価」について対応する知財部員にとって必要である。また,「特許権の効力・侵害等・救済」は,まさに企業の特許資産価値を評価する上で理解しておかなければならないだろうし事業における特許リスク評価と表裏一体であることは言うまでもない。特に,知財高裁大合議による,No.64プロダクト・バイ・プロセスクレームの最新の解釈論は,メーカーの知財部員であれば理解しておくべきであろう。

    また,No.65インターネット関連発明のクレーム解釈による侵害主体の認定については,ネットゲームなどに代表されるインターネットを利 用するビジネスモデルを展開する企業にとっては注目しておくべき事件である。

    よって,特許判例百選は企業の知財部の方にとって,必携の書である。

    (紹介者 会誌広報委員 K.S.)

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