新刊書紹介

新刊書紹介

意匠の表現

編著 吉田 親司 著
出版元 経済産業調査会 A5判 440p
発行年月日・価格 2012年4月13日発行 4,500円(税別)

本書は,元特許庁審査長,審判長,また現弁理士として長年,意匠の形態を表現した経験をもつ著者が,意匠分類のAグループからMグル ープの意匠に係る物品についてその意匠の形態の文章化を試みた表現事例集である。

意匠の類否判断は意匠全体を観察することを原則とし,そこで両意匠の物品が同一又は類似であるか,両意匠の基本的構成態様(意匠の骨 格をなす態様)と具体的構成態様(意匠を詳しく観察した態様)を認定する。そこから,基本的構成態様と具体的構成態様それぞれの共通 点,差異点を認定することにより意匠の類否判断を行っている。

意匠実務担当者にとって,拒絶理由に対する意見書の作成,審判請求での請求の理由の作成等では,意匠の類否判断の前提となる形態の認 定は不可欠である。

意匠の形態の認定の巧拙が,判決に大きな影響を及ぼすため,意匠の形態の文章化はとても重要になっている。

以下,構成と内容について簡単に説明する。

「第1章:意匠の表現について」では,意匠特有の表現「状」,「体」,「視」,「略」などといった伝統的な慣用表現についての説明がされており,過去の意匠登録無効審判,意匠侵害事件,審決取消訴訟を例として,複数ページにわたって紹介している。

特に25ページに記載されている判決(昭和53年(行ケ)第30号判決「包装用容器」東京高裁,昭和55年(行ツ)第75号判決 最高裁)について は紹介者にとって身近な物品であり,とても理解しやすい内容となっている。

「第2章:意匠の表現(意匠分類別)」では,意匠の形態の文章による表現を意匠分類のAグループからMグループまでの意匠に係る物品に ついて,その意匠の形態を1ページ以内に文章化した事例集としてまとめられている。ここでは,基本的構成態様と具体的態様とを分けて記 載することにより,意匠の形態全体を把握し,そこから具体的な態様を認識し,広く知られた形状等に置き換えて表現されている。

特に173ページに記載された「F4-54B 包装用容器」については紹介者にとってなじみのある物品であり基本的構成態様,具体的態様につ いてより理解を深めることができた。

「表現意匠 参考審決及び参考判決」には第2章で記載された事例集について,その登録番号・出願番号・意匠に係る物品・意匠権者・審 決番号もしくは判決番号に関して記載されている。

本書では,様々な分類の物品について意匠の形態の文章化が,1ページ毎にまとめられ,意匠実務初級者にとっても理解し易い内容となっ ており,また,意匠分類毎に表現事例集として掲載されているので,意匠業務に携わっている多くの方に読んでいただけると思う。

(紹介者 会誌広報委員 T.K.)

新刊書紹介

実務解説 特許・意匠・商標

編著 盛岡 一夫 他47名著
出版元 青林書院 A5判 788p
発行年月日・価格 2012年7月30日発行 6,000円(税別)
本書は,実の所,「法律知識ライブラリー特許・意匠・商標の基礎知識」の改訂版である。

同書は,2004年の第四版(以下,「第四版」という)が最終版であったので,実に8年ぶりの改訂となる。今回は,平成24年4月1日に施行 された「特許法等の一部を改正する法律」の法改正等を踏まえ,一問一答形式を踏襲しつつ項目の追加削除を行い重要で基礎的な107項目を, 著者も一部変更して,知的財産法研究の分野で日本を代表する学者,裁判官,特許庁関係者,弁護士,弁理士の総勢48名により説明された待 望の実務解説書である。

近時の法改正や知的財産法を巡る状況の変化に対応して,第四版と比較して追加された項目は, ‘探の要件(3)新規性喪失の例外 ( 柳澤 智也著), 特許無効審判と訂正( 南 宏輔著), ダブルトラック問題(飯田 秀郷著),ぞ蝶梓愀検放睇堯≠探子著), タ綺歔蔀屐蔑咫,い鼎瀉),γ楼菽賃両ι検壁妖帖」∋涼),Ъ由貿易協定ないし経済連携協定における知的財産の保護(後藤 晴男 著),┛篥岨餮擦斑療財産(眩辧\男著)の8項目である。一方,第四版から削除ないし他の項目と統合された項目は以下の7項目であ り,‘探料の納付,特許異議申立制度,専用実施権と許諾による通常実施権(「特許権の移転等」に統合),PCT国際出願の制度改 革(PCTリフォーム),ヌ瓜上の救済手段(「商標権の侵害」に統合),さらに「第5章 工業所有権(産業財産権)に関する手続等の特例」 にあったε纏匸霾鷭萢組織による手続き等,Щ慊蠑霾鷭萢機関及び指定調査機関は章毎なくなり,第四版の106項目から本書は107項目に なった。

書名から「基礎知識」が消え,「実務解説」に変更されたが,内容が難解となったということはなく,重要項目について基本的なことを中心に解りやすく解説されている点は変更ない。

また,書名に「実用新案」がないが,これも従来通り「実用新案技術評価書」など4項目について解説されている。

「法律知識ライブラリー 特許・意匠・商標の基礎知識」は縦書き二段構成であったが,本書は横書きに変更され文字も大きくなり,項目 ごとに改頁されとても読み易くなった。また,「事項索引」の後に「判例索引」も追加され判例からの検索も可能となった。第四版に比べ頁 数が1.5倍程になったが,内容の大幅な追加・変更というより,こうしたフォーム変更が主な要因である。読みやすいフォームになった半面, 1,500円の値上げとなっている。また,従来の手続フロー図の他に,本書では図表が幾分増えたようであるが,さらなる図表の活用を次の版 では期待したい。

本書は,1冊で特許,実用新案,意匠,商標の重要で基礎的な内容を理解することが出来,とても重宝である。初学者が四法を通しで勉強 するための基本書として,あるいは実務者が必要なポイントを確認するための参考書としてお薦めできる一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 M.K.)

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