新刊書紹介

新刊書紹介

知財高裁判例集[平成23年版]

編著 知財高裁判例研究会 著
出版元 青林書院 A5判 482p
発行年月日・価格 2012年11月30日発行 5,000円(税別)
本書は,知財高裁で平成23年中に言い渡され た判決中から,先例的価値があると思われるも の141件を選択して,その要旨を紹介したもの である。判決は,
機々義併件(著作権,不競法の判例も含む)
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に大きく分けられており,更に,権利別・争点 別に並べ直されたものである。同じ争点に関す る判例は判決言い渡し日順に並べてある。

各判決は,判決文を要約し,2〜6ページで まとめられており,まとまった時間が取れなく ともちょっと時間がある時に,切りの良い所ま で少しずつ読み進めることができ,時間のない 人でもさほど苦労なく読み進められると思われ る。また,商標の判決については争点となって いる標章が末尾に載せられているものが多く, 判決の理解に役立った。

それぞれの判決は,判決要旨,事案の概要・ 争点,判決の要点の順にまとめられており,そ れぞれの事件に予備知識がない者でも,大体ど のような事件であるか分かりやすい構成になっ ている。判決を言い渡した専門部も記載されて いるため,紹介者は行わなかったが,各部ごとに判例を集めてその部の傾向を見出すことがで きるかもしれない。

個々の判決についてのコメントは個別具体的 な例としか言いようがないのだが,進歩性につ いては数十の判例が並べて掲載されており,現 在の知財高裁が考えている進歩性のレベルが定 性的ながらも掴めてくるので,とても役に立っ た。個人的にこの本で一番役に立った所である。 実務者にとっても,担当している事件の判決を 予見するに当って参考になると思われる。

本書では,技術分野別に(例えば機械,電機, 化学というように)分けられていないが,進歩 性や記載要件の判断は(専門部を超えて)かな り統一されており,争点別で分かれていること によって近年の判例の理解がより進むものと思 われる。

ただ,敢えて注文を付けるとすれば,審決取 消訴訟が拒絶査定不服審判の審決取消訴訟と無 効審判の審決取消訴訟とで分けられていないた め(周知の通り,後者は知財紛争の一環であり, 審決取消訴訟というよりはむしろ裁判の第二審 の傾向が強い),次回の版では分けていただく とありがたい。

まとめると,知財高裁の最新の動向を比較的 短い分量で容易に知ることができるので,実務 者にとって有益な一冊である。よって,一読を 勧めるものである。

(紹介者 会誌広報委員 N.I.)

新刊書紹介

新旧対照 改正米国特許法実務マニュアル
−改正米国特許法,規則及びガイドラインの解説−

編著 河野 英仁 著
出版元 経済産業調査会 A5判 390p
発行年月日・価格 2012年11月26日発行 3,800円(税別)
本書は,改正米国特許法の全てを分かり易く 解説した実務者必携のマニュアルである。

2011年9月16日に成立した米国改正特許法 (Leahy-Smith America Invents Ac(t AIA))は, かつてないほど大規模かつ全面的な法改正であ る。改正項目別に22章にわたり体系的に章立て をして解説するとともに,新旧の米国特許法の 日本語訳を併記し対照している。そのため,確 認したい法改正部分について,参照しやすい構 成となっている。さらに,実務に直結する主要 改正規則の日本語訳を掲載している。また,実 務上重要となるポイントを条文,規則及びガイ ドラインからピックアップし,適宜関連する判 例を盛り込んで整理しており,短時間で各改正 項目を把握できる。特に理解が困難な,先願主 義への移行に伴う新規性,拡大先願の地位,新 規性喪失の例外及び非自明性に関する規定等 は,図を用い,理解し易いように解説されてい る。

本書は,施行時期・先願主義への移行(1, 2章),ベストモード要件や虚偽表示違反に対 する制裁の緩和(3,4章),由来手続(冒認手 続)(5章),特許権に対する防御(6章),各 種レビュー制度等(付与後,当事者系,トライ アル実務,7,8,11章),査定系再審査(9章),ビジネス方法特許に対する暫定プログラム(10 章),補充審査(12章),情報提供制度(13章), 先使用権(14章),優先審査(15章),重要製品 に対する優先審査(16章),発明者の宣誓また は宣言と,譲受人による出願(18章)等々,全 22章からなる。

今回の改正は,複数の段階を経て順次改正法 が施行される点にも特徴がある。例えば,準司 法手続により特許の有効性を争うレビュー制度 及び不正行為の抗弁の事前解消手段である補充 審査制度は成立1年後の2012年9月16日に,先 願主義は成立1年6月後の2013年3月16日に施 行される。このため,現在適用される法律は改 正法なのか,旧法なのか,を確認する必要があ るが,この点においても分かり易く解説されて いる。

例えば,付与後レビュー制度は,先願主義制 度の下での特許のみが対象であり,当事者系レ ビュー制度は,施行日前,施行日,施行日後に 発行された特許に適用される。このように,施 行日は同じ2012年9月16日であったとしても, 各制度が適用される特許が異なるため,各制度 の利用には注意が必要である。

なお,改正法自体は大まかな事項しか規定し ておらず,実務上重要な事項は改正法施行日に 照準を合わせて公表される規則及びガイドライ ンを分析する必要があるところ,本書の執筆時 には最終的な規則及びガイドラインが確定して いない部分があることに留意したい。

米国特許法の大改正の内容を網羅的に把握で きる本書は,米国特許実務担当者にとっては必 携である。

(紹介者 会誌広報委員 K.S.)

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