新刊書紹介

新刊書紹介

知的財産権 法理と提言 牧野利秋先生傘寿記念論文集

編著 中山 信弘,斉藤 博,飯村 敏明 編
出版元 青林書院 A5判 1,224p
発行年月日・価格 2013年1月24日発行 16,000円(税別)
サブタイトルの通り,牧野利秋先生の傘寿を 記念しまとめられた大論文集である。知財界を 代表する日本内外の50人を超える執筆者の手に より,1,000ページを上回る大著となっている。

総論,特許,商標から,ドメイン名,能力担 保研修に至るまで,10章に分けられている。さ らに特許に関する第2章は侵害論,職務発明, 審決取消訴訟等の5つの項目に分類され,31の 論文から構成される。興味深いのはパブリシテ ィ権やドメイン名といったテーマで大きな章が 別途設けられている点である。これらの章にお いてはそれぞれ一論文の掲載ではあるが,昨今 における注目度の高さから独立した章として設 けられたことがうかがえる。なお,パブリシテ ィ権については不正競争防止法の章でも扱われ ており,議論の的となっていることがわかる。

紹介者自身が興味を惹いた点はいくつかある が,その中でもプロダクトバイプロセスクレー ム(以下,PBPC)に関する論文が二本続けて 掲載されているのは特に気になった点である。 化学系メーカーの特許出願担当である紹介者と しては避けて通れない局面も多いテーマであ る。知財高裁特別部平成24年1月27日判決に対し,二人の論者がそれぞれの意見を載せている。 実務上,クレームに落とし込む内容,具体的記 載の仕方が最重要であることは言うまでもない が,真正PBPCか不真正PBPCか,製法特許に すべきではないか等々考察する際にこれらの論 文は一つの拠り所となろう。権利行使を想定し たクレーム記載について示唆があり,参考にな った。また,簡潔に欧米のPBPCについても触 れられている点も有益だった。

第5章の商標の論文も興味をもった箇所であ る。商標権の効力の及ばない範囲,権利濫用, パロディなど,いわば権利の境界部分でのせめ ぎ合いを扱った論文3報が掲載されている。多 くの判例に基づいて検討が重ねられており,取 引の実情,つまり,競業者となる他事業者の観 点と需要者の観点の双方があらためて重要であ ることを考えさせられた。また,商標自体では なく信用が商品に化体されてこそ意味があると の商標の本質についても再認識できた。

これらは一例であり,企業知財部門員の担当 業務によって注目するテーマは異なるだろう が,本書は多くの実務家に有益な情報が詰まっ ている。日常業務からさらに深い考えをめぐら すには好適な内容であり,部門に一冊,用意さ れてはいかがだろうか。

牧野先生,執筆者の方々のご提言や論文に今 後も注目していきたい。

(紹介者 会誌広報委員 A.N.)

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著作権法コンメンタール別冊 平成24年改正解説

編著 池村 聡,壹貫田 剛史 著
出版元 勁草書房 A5判 248p
発行年月日・価格 2013年3月10日発行 3,000円(税別)
本書は,「著作権法コンメンタール(全3巻)」 の別冊の第二弾であり,元文化庁長官官房著作 権課の著作権調査官である著者らによって,平 成24年改正法を中心に解説されたものである。 今回の改正は「平成の大改正」と呼ばれる平 成21年法改正に続いて大規模な改正が行われて おり,いわゆる「日本版フェアユース」に関す る新設条文や,違法ダウンロードの刑事罰化な ど多岐に亘っている。本書では「著作権法の一 部を改正する法律(平成24年改正法)」と,「国 立国会図書館法の一部を改正する法律の附則に よる著作権法の一部改正」といった大きく2つ の構成に分けて,条文ごとに逐条解説として記 載している。また改正の経緯や関連規定などに も触れられているため,参照しやすい構成とな っている。

平成24年改正法の改正事項は,仝⇒を制限 する方向での改正(いわゆる「写り込み」等, 国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送 信等,公文書管理法等に基づく利用),権利 保護を強化する方向での改正(著作権等の技術 的保護手段,違法ダウンロードの刑事罰化)で ある。これに加えて,権利を制限する方向での 改正として,「国立国会図書館法の一部改正法 による著作権法の一部改正」がある。こうした内容について条文と照らし合わせ て,各々が「改正の要旨」「主体・客体」「関連 条文」などを含めてまとめられており,日頃か ら著作権法に馴染みのない者でも理解しやすい 構成となっている。また,単に法改正部分のみ を記載するのではなく,改正の背景や根拠など についても詳しく解説されており,今回の改正 全ての過程を担当した著者ならではの解説書と なっている。

逐条解説と聞くと,一見文章が多く分かりづ らい印象を受けるかもしれないが,本書は難解 な条文について独自の問題設定や具体例を盛り 込みつつ,読者に分かりやすいよう丁寧に解説 されている。個々の逐条解説では,条文の意義, 概要,背景等はもとより,関連事件の紹介や判 決なども記載されている。特に著作権法18条「公 表権」では,他の著作者人格権の「氏名表示権」 とともに,対比表を用いて法改正部分がわかり やすく記載されている。

さらに外国における立法例等の紹介や,不正 競争防止法との関連性,偽造品の取引の防止に 関する協定(ACTA)といった種々の観点を含 めており,企業の知財担当者にとって分かりや すい構成となっている。

頻繁に改正する著作権法の法改正内容を網羅 的に且つ包括的に把握できる本書は,日頃から 著作権法に携わる企業実務者にとっては必携で ある。

(紹介者 会誌広報委員 K.O.)

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現代知的財産法講座  知的財産法の国際的交錯

編著 高林 龍・三村 量一・竹中 俊子編集代表
出版元 日本評論社 A5判 592p
発行年月日・価格 2012年12月25日発行 6,000円(税別)
本書は,「現在知的財産法講座」の全4巻の 靴任△襦ちなみに,気蓮ぁ崔療財産法の理 論的探求」,兇蓮崔療財産法の実務的発展」, 犬蓮崔療財産法学の歴史的鳥瞰」である。本 書は,知的財産法研究の分野で国内外を代表す る学者,弁理士総勢19名により,特許法,著作 権法,商標法・不正競争防止法の理論と実務に 関する国際的側面から研究された待望の実務書 である。

全ての論文を紹介できないので,各法域から 1論説を選んで紹介する。

●知的財産権全体の問題
【ファッションと法についての基礎的考察】 ファッションとは,「衣服」より広い「流行」 「はやり」と捉え,流行を追い求めて競争が展 開される社会において,いかなる模倣が認めら れ,いかなる模倣は認められないかの線引きを 行うのが知的財産法の役割としている。目新し い切り口で,現代社会のファッションに対して 知的財産法の貢献が検討されている。

●特許法
【職務発明制度の比較法的考察】
特許制度の国際的調和が進むなか,発明者の 認定と特許の受ける権利の認定については,判 例法国と大陸法国の取扱いがあまりに違いすぎ るため調和のための共通理念に達することは困 難と考えられてきた。本稿では,判例法国の典 型的制度として米国特許法,大陸法国の典型的 制度としてドイツ特許法,更に両国の制度の特 徴をあわせもつハイブリッドのような職務発明 を持つフランスと日本の職務発明制度を検討さ れている。そして,4つの職務発明制度を参考 に,発明者と使用者の利益考量を行い,発明者 と使用者の調和のための制度が提案されている。

●著作権法
【デジタル著作物のダウンロードと著作権の消 尽】
適法にダウンロードされたソフトウェアの複 製物の消尽について,欧米の動向を参照しつつ, 我が国の望ましい法制度が検討されている。近 時,インターネットを通じたコンテンツ取引が 爆発的に増加しており,著作物の創作と利用の 調整を図る著作権制度がこのような事態に如何 に対応するかを検討するにあたって有用な論説 である。

●商標法・不正競争防止法
【パッシング・オフ制度と不正競争制度の比較 考察】
消費者に対する欺罔を防ぐ政策を最重要視す るコモン・ロー制度のパッシング・オフ(詐称 通用)制度と市場競争者による「公正かつ誠実 な」行動に焦点を当てるシビル・ロー制度の不 正競争制度との間には明確な文化的相違があ る。本稿では,(1)模倣品と比較広告,(2) 商品化権,(3)キーワード広告の3つの領域 において,パッシング・オフ制度と不正競争制 度の対立と収束について有用なケーススタディ が提供されている。

本書は,1冊で特許,著作権,商標の理論と 実務について,ややマニアックなテーマも含め て最近の国際的交錯を理解することのできる実 務書としてお薦めできる一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 K.M.)

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