新刊書紹介

新刊書紹介

新米国特許法 対訳付き 増補版

編著 服部 健一 著
出版元 発明推進協会 A5判 448p
発行年月日・価格 2014年2月21日発行 3,200円(税別)
 本書は,著名な米国弁護士である服部健一氏 が著された新米国特許法(以下,新法)につい ての逐条解説であり,その解説は,図表等を用 いた非常に分かり易いものとなっている。新法 の解説は150ページ程度で簡潔・明瞭に解説さ れており,後半部分は新法を含む全条文の逐条 翻訳となっている。逐条であるため確認したい 条文へのアクセスが容易である。

 新法は2011年9月16日,オバマ大統領がサイ ンして成立したが,この新法の作成は米国議会 が中心になって行い,米国特許商標庁はほとん ど関与していない。その米国議会は新法の趣旨, 解釈,運用あるいは特徴の説明や解説は一切行 っていないので新法の運用はいまだに明確でな い点が多い。その原因は,米国が世界に類を見 ない特異な三権分立に基づく権限体制を有する 連邦国家であり,それを示す米国憲法を中心と して作られてきた国であることから生じてい る。また,米国特許法は米国憲法に明記された 数少ない米国連邦法の1つであるため,その運 用や解釈は米国憲法を基幹とする点が非常に多 くあるので,米国憲法の理解は必須である。そ こで本書では,まず米国憲法の説明から入って いる。憲法主要条文,それらと特許法との関連, コモン・ロー,及び,法(Law)と衡平法(Equity) の解説を述べた後で,米国特許法の変遷につい て解説している。そして,第二篇から新法の解 説が始まる。

 100条に追加された定義に始まり,102条の先 願主義,冒認立証手続,宣誓書,第三者情報提 供,補足審査,付与後レビュー,先使用権,マ ーキングトロールの抑制などを含む改正につい て分かり易く解説がなされている。特に,102 条(b)の発明者の開示の例外,新法適用経過措 置等については,仮想事例・シナリオを用いて 具体的な法の適用が理解できるように解説され ている。また,先願主義審査ガイドライン及び 関係施行規則についても,収録・解説されてい る。

 殆どの特許実務家は米国特許法を避けては通 れないといっても過言ではない。本書は米国特 許法を確認したい時のために,法文集とともに 書棚に揃えておきたい。  

(紹介者 会誌広報委員 KS)

新刊書紹介

改訂2版 米国特許明細書の作成と審査対応実務

編著 立花 顕治 著
出版元 経済産業調査会 A5判 230p
発行年月日・価格 2014年3月26日発行 2,600円(税別)
   本書は米国における明細書の作成方法と,米 国特許の登録までの一連の流れを記載したマニ ュアルである。そして,改訂2版とあることか らお気づきのように,2011年9月16日に成立し た米国改正特許法(Leahy-Smith America Invents Act( AIA))により,必要となった追記・ 修正が行われている。

 知財部門に来たばかりで特許は何も分からな い方や,日本特許法なら知っているが,米国特 許法となると怪しい,という方も多いのではな いだろうか。本書はそのような方々に特にお勧 めである。
 また,AIA以降,改正点を中心に言及した記 事や書物は多いが,本書のように,改正点も含 めた米国特許取得における一連の手続きがまと められた本はまだ少ない印象を受ける。そうい う意味においては,普段米国特許実務に携わる 方々の辞書代わりとしても有用であろう。

 本書の目次は大まかに,改正米国特許法と特 許出願手続の概要(1章),出願〜許可通知ま での各種手続(2,5〜11章),許可通知以降 の手続(12〜13章)からなる各種手続を網羅す る項目に加え,米国出願用明細書の書き方(3, 4章)に言及した内容も含まれる構成であり, かなり盛り沢山な内容である。なお,改訂2版 となって,第1章が追加されている。
 章の数の多さから,分厚く難解な本を想像さ れるかも知れないが,その点はご安心を。本書 は実測12mm程度と手に取りやすいサイズであ る。

 本書の特徴は3点あると思う。
 1つ目は,上記のような盛り沢山な手続を分 かり易く,かつ,簡潔に記載されている点であ る。更に,本書は手続だけではなく,米国で留 意すべき明細書の記載方法も含めて1冊に収め ており,いかにコンパクトにまとまっているか という点に注目して貰いたい。
 2つ目は,法改正前後の適用の違いに触れら れている点である。もっとも,当面の審査実務 では法改正前・後の出願が併存することから 102条,103条等の改正前後での適用のされ方の 違いへの言及は重要であるが,コンパクトな本 書にもきちんと含まれている。
 3つ目は,AFCP2.0のような期間限定の試行 プログラム等まで記載されている点である。細 かい制度まで記載されており,本書を参照した 出願人が取り得る選択肢を広げる配慮がなされ ている印象を受ける。

本書は,知財部門の多くの方々にとって,有 益と考えられる書物である。ぜひ一度手にとっ て頂き,その目で内容を確認頂ければ幸いであ る。

(紹介者 会誌広報委員 Y.H)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.