新刊書紹介

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著作権法案内

編著 半田 正夫 著
出版元 勁草書房 四六判 320p
発行年月日・価格 2014年7月20日発行 2,300円(税別)
 本書は,著作権法関連の書籍を多数執筆している半田正夫弁護士による解説書であるが,巻頭で「著作権についてなんらかの関心をもって はいるが,その知識を全くもっていないヒトを 対象に,著作権制度の仕組みをわかりやすく解説しようと試みた」と述べられている通り,初学者にも理解しやすい話題を基にQ&A形式で 記載されている。

 本書の構成としては,まず第1章で著作権がどのような権利なのか,どのような過程で法制度が確立されてきたのかを,ルネサンス期のヨーロッパに遡って解説し,次いでそれがどのように日本に取り入れられてきたのかが述べられている。そこでは,日本の「マネ文化」などに根差す,日本人の本質的な著作権意識の低さにも触れられており,読み物としても面白い内容 となっている。

 また,第2章では著作者・著作権者,第3章では著作物について,共同著作や職務著作,二次的著作物や編集著作物などの類型が解説されている。例えば,よく「共著」という言葉を目にするが,実はこれも厳密には著作者の寄与によって「結合著作物」と「共同著作物」に分けられ,譲渡時等の扱いが異なるといったことや, 「監修者」がどのような権利を持つのかなど, 普段あまり意識していなくとも,いざその著作物を利用したいという場合に,誰にどのような 権利について交渉すれば良いかを考える上で知 っておくべき事項が纏められている。

 そして第4章から最後の第11章にかけて,著作者人格権や著作隣接権,その他派生する権利や権利行使(保護期間・権利の制限・救済等), 国際間での著作権保護が取り上げられている。 このあたりになってくると,いわゆる教科書的な解説書では読み進めるのが辛くなってくるところだが,本書では「親友からの相談のメールを他人に転送した場合」や「レンタルCDをダビングして友人に譲った場合」等の日常的な事例や,図書館での資料のコピー,論文の引用・ 転載,セミナーの録音,パソコン用ソフトのバ ックアップ等,業務上で経験するような事例を 挙げて説明されているため,興味を持って読むことができる。また,条文や判決などの明確な根拠がある訳ではない場合についても,著者の 知識と経験に基づく指針が述べられており,トラブルの回避・解決にあたって参考となるものである。

 なお,本書は設問ごとに分かりやすく簡潔な解説と,関連する設問への案内が示されており, どのページから読み始めても良いものとなっているため,上級者が必要な項目について復習する際にも役立つと思われる。

 論文の盗用やゴーストライターなどの事件を機に著作権に関心が寄せられている昨今,注目すべき一冊である。 

(紹介者 会誌広報委員 H.A.)

新刊書紹介

インド知的財産法 −特許・意匠・商標・著作権法及び 各規則の英日対照表付き−

編著 遠藤 誠 著
出版元 日本機械輸出組合 B5判 660p
発行年月日・価格 2014年6月5日発行 7,000円(税込)
 近年インドが著しい経済発展を続けている中,インドに進出している日系企業は既に1,000社を 超えるといわれ,インドは今や日本企業にとって最も重要な国の一つとなっている。

 同時に,インドの知的財産の重要性も急速に増しており,インドにおいてビジネスを行う企業は,インドの知的財産法制度とその運用についてあらかじめ検討しておくことが必要となっている。

しかし,日本語でインドの知的財産法制度について解説している資料は非常に少ない。そのため,インドの知的財産法制度について,どのような特徴があり,どのような点に留意して対応することが必要か等,検討することは難しいのが現状である。

 このような状況において,本書は,インドの知的財産法制度全般について,日本企業の視点から,概要や特徴など最新の動きを含めて解説されたものである。また,本書の大きな特徴は,インドの知的財産法制度の理解を深めるため, インド特許法,意匠法,商標法,著作権法および各規則の全条文を翻訳し,原文(英文)と和訳を並べて掲載されている点である。

第1章では,インドとその魅力を,第2章と 第3章では,インドの法制度全般と知的財産法制度の概要が解説されている。

第4章から第10章では,特許法,意匠法,商 標法,著作権法,営業秘密の保護,その他の知的財産権及び詐称通用(パッシング・オフ)について,解説されている。

第11章から第13章では,ライセンス契約,エンフォースメント並びに法令及び判例の情報源について概説されている。

そして最後に,資料編として,上述の通り,インドの各知的財産法および各規則の英日左右対照表が519頁にわたって掲載されている。

以上,紹介したように,本書はかなり大部の書物となっているが,それだけ資料的な意味においても大きな価値があるものと思われる。イ ンドの知的財産に関わる者にとっては心強い一 冊になるであろう。現在インドの知的財産に携 わっている読者もこれから携わる予定の読者も,職場に一冊置いてみることをお勧めしたい。

(紹介者 会誌広報委員 Y.D)

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