新刊書紹介

新刊書紹介

知財戦略のススメ  コモディティ化する時代に競争優位を築く

編著 鮫島 正洋,小林 誠 著
出版元 日経BP社 A5判 248p
発行年月日・価格 2016年2月9日発行 2,400円(税別)
 「下町ロケット」に登場する弁護士のモデルとなった鮫島弁護士による書籍を紹介する。
 「はじめに」において「知財,知財権に対す る堅いイメージが,・・・知財を付加価値として製品に組み込み,これを競争力の源泉とすることを阻害してきた」として始まり,「知財に関心を寄せつつも,知財を使いこなし切れていないビジネスパーソンだったらおそらく知りたいであろうというテーマ」を選定したと記している。知財と経営をリンクさせるにはどうしたらいいか,日頃知財に関わる企業の知財担当者だったら,すぐに手に取って読んでみたくなる書き出しである。本書は共同著者である小林誠氏により経営と知財と会計の観点から深い検討が加えられており,さらに興味がわいてくるであろう。

 本書の構成は以下のようになっている。
 第一章は,コモディティ化した状態での知財戦略について述べている。
 第二章は,オープン・クローズ戦略について事例を通じて,自社の競争力を高めるための戦略について示している。
 第三章は,保有する特許を自ら実施しない企業・団体(いわゆるNPE)の実態について示している。様々なタイプのNPEの戦略について理解できるだろう。
 第四章は,知財の取引に関する内容で価値評価について述べており,さらにNPEと訴訟する場合の対策について示している。
 第五章は,M&Aについて解説している。特にグーグルによるモトローラ買収の思惑と妥当性について検討し,会計上の留意点について解説している。
 第六章は,特許のコストとリターンについて明らかにしている。知財担当者は特許にかかる費用はわかっているが,投資に対するリターンがどうなっているのか,経営や事業戦略との関係において中々うまく説明できない,といった経験はないだろうか。本章は参考になるので是非お薦めする。
 第七章は,グローバルな出願戦略および訴訟戦略について,第八章は,グローバルな視点での知財管理と税について解説している。知財の管理・活用に関するグローバルな意思決定の仕方を論じている。

 本書は知財担当者が日頃の業務で直面するであろうテーマ全般について,知財と経営と事業戦略の観点からどのように意思決定していけばいいのか,その基本的な考え方を教えてくれる。ドラマではない,実際の現場で生じる様々な問題に直面したときの「知財戦略のススメ」が記された本書を読んで,是非業務に役立てていただきたい。

(紹介者 会誌広報委員 Y.О)

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実務解説 職務発明  平成27年特許法改正対応

編著 深津拓寛・松田誠司・杉村光嗣・谷口はるな 著
出版元 商事法務 A5判 260p
発行年月日・価格 2016年3月15日発行 3,000円(税別)
 平成28年4月1日に職務発明制度の見直しを含む「特許法等の一部を改正する法律」(平成 27年法律第55条)が施行された。
今 回の改正では,従来の発明者帰属に加え,職務発明規程等の社内ルールで定めた場合,発明が完成したときから会社が取得することができる会社帰属が選択できるようになった。また,企業戦略に応じた柔軟なインセンティブ施策を 講じることを可能にすべく,これまでの「相当の対価」から金銭以外の経済上の利益を与えることができる「相当の利益」に変更された。
 企業の知財部門は,本改正の内容を把握し,自社の職務発明制度を見直すべきか否かを検討してどのような対応を取るかを決めなければならない。主な対応内容は以下の3つであると思われる。

現行の社内ルールを継続する
会社帰属に変更するが「相当の利益」の基準は変更しない
会社帰属に変更し「相当の利益」の基準も変更する

 △筬を選択して社内ルールを変更する際,会社および従業員が行うべき手続の種類と程度を明確にするため,特許法第35条6項に基づきガイドライン(2016年4月)が公表された。
 本書は「ガイドライン」の解説書として法律の施行にあわせて出版されたものである。本書は,改正法の企画立案等に関与した特許庁制度審議室法制専門官(任期付公務員)経験者が,企業の知財担当者などの実務者向けに制度内容を具体的に説明し,実務上問題となる点について検討を行った結果がまとめられている。
 第2章では,平成16年改正から今回の改正に至るまでの経緯が記載されている。なぜ会社帰属を選択可能になったのか,なぜ「相当の利益」という文言になったのか,改正の経緯を知ることができる。

 第3章,第4章では,改正法およびガイドラ インが解説されている。社内ルールを変更する場合,基準の協議,開示,意見の聴取を行うことを求められており,その内容がガイドラインに書かれている。本書はその内容がコンパクトかつ的確にまとめられている。

 また第5章では,「権利の帰属」や「相当の利益」,「不合理性の判断」など,読者がガイドラインを読んで判断に悩むと思われる項目がQ&Aとして計58個まとめられている。これにより基準の開示や協議を具体的にどの程度やれば良いのかを把握することができるだろう。

 そして巻末には,参考資料として企業向けと大学向けの職務発明規程例が用意されている。社内ルールを見直す場合,必要な項目やその表現方法の参考になるであろう。
 社内ルールの変更にあたっては,法改正の内容やガイドラインはもちろん,各社の事業内容や事業規模,これまでの出願件数などを総合的に勘案した上で実施可否を判断するだろう。
 社内ルールを変更するかどうか,変更する場合にどのような対応をすべきかを検討する際には,本書を「参考書」として活用してみてはいかがだろうか。

(紹介者 会誌広報委員 A.N.)

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