新刊書紹介

新刊書紹介

知財戦略としての米国特許訴訟

編著 岸本 芳也 著
出版元 日本経済新聞出版社 A5版 392p
発行年月日・価格 2016年7月25日発行 3,800円(税別)
 米国で事業を行う企業にとって,訴訟大国・ 米国における訴訟対応は,事業活動の一環と言っても過言ではない。本書は,元特許庁審査官 で,外国法事務弁護士事務所においても10年以上の経験を有する著者が,米国特許訴訟に関する制度,手続きを詳細に説明すると共に,留意すべき点や心構えといった実戦的な記載も非常に充実しており,米国特許訴訟に直接対応する方はもちろんのこと,特許調査等で関係する方にもお勧めしたい1冊である。

 米国特許訴訟における手続きの概要と具体的な実務対応については,第3章の警告状を受け取った際の初動対応から,特許付与後異議申し立てによる攻撃的防御,訴訟開始後の対応,ディスカバリー,陪審裁判,第10章の和解と代替解決策(調整,仲裁等)に至るまで,時系列に沿って説明されている。説明は詳細かつ実戦的に記載されており,例えばディスカバリーについては,テキサス州東部地区を例にローカル・パテントルールについても説明がある,といった具合である。パテント・トロール対策についても独立した章を立てて解説している。最後の第11章「日本企業が留意すべき点と対応戦略」において防衛戦略のポイントがまとめられており再確認できることもありがたい。

 実戦的な記述として,米国訴訟対応上の留意点や心構えに多くのページが割かれていることも本書の特徴である。警告状に対する回答での留意点,IPR・PGRを活用するメリットと留意点,逆に特許権者の対応戦略,米国文化の理解,デポジションでの心構え等が独立した節として記されている。

 第2章において米国の特殊な裁判システムを 紹介しているが,その特殊性も,基となるコモ ン・ローとエクイティの2つの判例法体系から 紹介されており,理解が進みやすい。こうした 書きぶりや,連邦地裁総合ランキング,手続きの利用状況,パテント・トロールの特許保有ラ ンキングといった統計データが充実している点 は,著者が元特許庁審査官ならではと言えよう。

 タイトルに「知財戦略としての」とあるよう に,特許保有件数を誇る時代の終焉を宣言し,特許棚卸を進め防衛・攻撃の両面から知財戦略を構築すべきことも説いている。

 本書は,読みやすさを重視したQ&A形式や見開きに1項目といった形式ではなく,各項目 を十分に説明し尽くすことを重視して紙面を割 いている。そうした形式的な面でも中上級者向けであるが,その一方で,説明は平易で非常に わかりやすく,レイアウトもユーザ・フレンド リーで読みやすい。意欲のある初心者,初級者にもお勧めしたい。

(紹介者 会誌広報委員 T.I.)

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