新刊書紹介
新刊書紹介
企業活動と知的財産 〜なぜ今,知的財産か〜
編著 | 重田 暁彦 著 |
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出版元 | 日本パテントデータサービス A5判 152p |
発行年月日・価格 | 2016年11月1日発行 1,000円(税別) |
本書においてまず始めに,産業財産権の制度について紹介をしている。研究開発との関わり が深い特許制度を詳しく説明しているが,さらに意匠,商標,著作権,不正競争防止法などの 全般的な産業財産権の制度を簡潔にわかりやすく紹介している。そして,アウトソーシングや営業活動を行うにあたり知的財産の観点で留意すべき点を紹介している。また,単に産業財産権の紹介のみならず,「星の王子さまと特許」,「お化けは美しいか」,「特許第一号」といった,企業活動に従事する読者が身近に感じたり,知財に興味を持ったりするような話題が随所に挿入されており,知的財産に関する知識を深めることができる。
産業財産権全般の紹介に続いて,本書の特徴の1つである,特許情報に関連する事項について,詳細な解説がされている。「特許情報とは何か」から始まり,単に発明の内容や先行技術だけでなく,特許情報から技術動向,企業動向,市場動向まで把握できることを紹介したあと,調査目的に応じた特許情報の調べ方やどのように検索キーワードを選定しているのかを簡潔ながらも必要事項は網羅して解説されている。研究開発の各フェーズにおいてどのような調査をすればよいのかも触れられているので,研究開発者にとっては非常に有益な情報となると思われる。
そして,最後に,特許の創出から権利化,そして権利の活用に関する解説がされている。特 に,「発明の創出」の部分に焦点をあて,開発成果からの発明の捉え方や発明の創出方法について,具体的な手法を紹介しながら詳細に解説している点が特徴であり,研究開発者や知的財産部門に所属している実務家にとっても参考になると思われる。また,企業の知財活動において発明の評価は重要なポイントであると思われるが,この発明の評価についても解説されている。 本書は,企業,大学,独立行政法人と様々な環境で活躍された著者の長年の経験と,得られた知識が凝縮されており,参考になるものであった。特に,知的財産の実務経験の浅い知財部員や,研究開発者が読んで欲しい一冊であると感じた。
(紹介者 会誌広報委員 H. N)
新刊書紹介
特許情報分析とパテントマップ作成入門改訂版
編著 | 野崎 篤志 著 |
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出版元 | 発明推進協会 A5判 376p |
発行年月日・価格 | 2016年11月1日発行 3,000円(税別) |
本書は特許情報分析及びパテントマップの入門書として2011年に出版されたものに,作成したパテントマップの読み解き方,深掘りの仕方など,『自ら特許情報分析を行う際の基本』を重点的に加えた改訂版である。
第1章は,企業・組織における知財戦略の位置づけと特許情報活用の現状について述べられている。
第2章は,特許情報分析・パテントマップの基礎事項について纏められている。特許情報から得られる情報の特徴,及びパテントマップを作成する目的,更には代表的なパテントマップについて紹介されている。初めてパテントマッ プを作成する場合,どのパテントマップを作成したら良いのか困ることもあるであろう。本章では,『このパテントマップから何が表現でき るか(読み取れるか)』についても併せて紹介されており,パテントマップ作成時の助けとなるであろう。また,パテントマップ作成時の流れを6つにわけ,それぞれの段階での留意点についても纏められている。
第3章,第4章は,有料ツールを用いずにパテントマップを作成する方法について纏められている。特に第3章のExcelを用いた手法については,データ処理・操作方法について約100ページにわたり詳細に紹介されており,有料ツールが無くてもパテントマップを作成できるで あろう。
第5章は,パテントマップの読み解き・深掘り方法,及び魅せ方について纏められている。第6章は,意匠・商標,非知財情報の分析について纏められている。特許情報のみではわかることには限界があり,またパテントマップの変化の裏付けを取る際には必要な分析であろう。第7章は,実施した特許情報分析結果をどう組織で定着・活用していくかが纏められている。第8章は,海外特許情報分析時の留意点について纏められている。
第9章は,特許情報分析スキルを磨くための方法について,著者の私見が述べられている。
パテントマップの優位性,作成方法について述べられている書は多いが,パテントマップの読み解き・深掘り方法まで1冊で言及した書は少ないのではなかろうか。筆者の経験を基にされており,これからパテントマップを扱う人のみならず,特許情報分析を行っていた人にとっても改めて気がつく部分もあり,有用な一冊であるといえるであろう。
(紹介者 会誌広報委員 M.S)