新刊書紹介

新刊書紹介

意匠の理論

編著 吉田 親司 著
出版元 経済産業調査会 A5判 570p
発行年月日・価格 2017年6月26日発行 5,500円(税別)
 本書は,約50年間になされた意匠関連の判例の趣旨から意匠登録制度や意匠を理解することができるようにまとめられている一冊である。 本書はまず始めに,製品デザインの保護に関する著作権法,不正競争防止法,商標法及び特 許法を概説している。次に,意匠法によるデザイン保護を解説した後に,意匠の登録要件や,類否判断,要旨認定等を,過去の判例とともに詳しく解説している。特に,新規性,創作容易性,物品や形態の類否,要部の認定,観察方法,美感,部分意匠の類否判断や寄与率の認定,といった意匠の実務においてよく判断や検討しなければならない観点を細かく項目に分けた上で網羅されており,それぞれの項目において可能な限り過去の判例を紹介している点が特徴である。意匠における上記の観点は他の専門書においても詳細に解説されているが,紹介されている判例が少なくさらに判例を見つける必要があり,検討に時間を要することも多かった。本書があれば,すぐに過去の判例に当たることができ,検討がよりスムーズになるのではないかと思われる。

 また,引用されている意匠関連の判例も多く扱っており,50年前の過去の判例から,物品や形態の単一性に関して「容器付冷菓」事件(平成28年(行ケ)第10034号)だけでなく,「箸の持ち方矯正具」事件(平成28年(行ケ)第10167号)や,「靴底」事件(平成28年(ワ)第675号)といった平成29年に判決が言い渡された事件も引用されている。最新の判例の掲載は大変ありがたく,定期的な改訂版の発行を期待したい。

 さらに,判例の紹介において,判決の要旨とともに審決取消訴訟の判決では本願意匠と引用意匠,侵害訴訟の判決では本件意匠と被告意匠が並べて掲載されている。このように両者の意匠を並べて掲載することにより,意匠の要旨の認定や差異点が一目でわかるようになっており,判決の理解に役立つ。

 意匠法に関する基本書が少ないなかで,企業の知的財産部門における意匠実務者の育成は,社外研修とその後のOJTに頼らざるを得なかった。本書があれば,過去の判例の両者の意匠の外観を通じて,類否判断等を深く理解することが可能になり,実務者の育成にも役に立つと思われる。私は,過去の判例を参考にして部分意匠の類否の判断等を検討したいときに,本書を活用していきたい。企業はもちろん特許事務所にもおすすめの一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 N.H.)

新刊書紹介

わかって使える商標法

編著 虎ノ門総合法律事務所
出版元 太田出版 A5判 266p
発行年月日・価格 2017年7月12日発行 3,500円(税別)
 法を「わかって」,実務で「使える」ような内容が記載された書籍であることが窺い知れる。通常,商標実務は諸先輩方からのOJTで知りうることが多いだろう。また,商標法に関する専門書は,逐条解説と関連する判例の解説が記載 されており,商標実務に携わっている知財実務者にとって,実際に業務を行う上でどのように考えて判断したらいいか,中々実務への応用がしにくいものが多いと思われる。これに対し,本書は実務がどのような考えに基づいて行っているか,わかりやすく解説されている。

 本書は,商標制度の骨格を理解するための「基本編」,商標登録制度の手続を理解するための 「出願登録編」,商標の3つの争いと解決の考え方を理解するための「紛争編」,商標制度の周辺を理解するための「周辺・関連法編」で構成されており,それ自体は従来の書籍と概ね同じ である。

 「基本編」は,商標法の法制度の基本事項について触れており,「商標」,「商品・役務」,「使用」等について解説している。

 「出願登録編」は,先ずは商標法3条,4条の登録要件について解説し,商品・役務の区分については類似群について丁寧に解説されている。また,平成26年法改正で導入された色,音などの新しい商標についての最近の登録事例が掲載されており,これらの留意点についても理解することができる。
 「紛争編」は,本書では最も厚く記載されている。商標の紛争について,その争点から‐ι古使用か否か,⊂ι犬領猗檗き商品・役務の類否,の3つに分けて解説されている。

 平成26年改正時に条文第26条1項6号が改正され,「商標的使用」の考え方が示されたものと理解されている。そして「商標的使用」であるときに類否判断が必要となるということで,この3つの紛争類型について判例を挙げて詳細 に解説されている。
 本書では所々にコラムが挿入されており,理解を深めることに役立っている。記憶に新しいところでは,フランク三浦事件が取り上げられ ている。

 商標に関していくつか書籍を所有し,このコーナーでも紹介してきたが,本書は私のように企業において商標実務を始めて数年の初心者にとって使いやすく,大変役立つ書籍の部類に入るのではないかと感じた。是非そばにおいてみ てはいかがだろうか。

(紹介者 会誌広報委員 Y.О)

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