新刊書紹介

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デジタルネイチャー

編著 落合 陽一 著
出版元 PLANETS A5判 288p
発行年月日・価格 2018年6月15日発行 2,800円(税別)
 1990年台前半「ユビキタス」という概念が提唱され,あらゆるものがコンピュータでつながった世界観が想定されている。その後Windows,Macの登場で一気にPCが普及し,スマートフォンの登場で,今ではいつでも,どこでもインターネットに繋がっている状況になっている。 最近では第4次産業革命が叫ばれ,AIの進化でこれからの人間の社会生活が大きく変わっていこうとしている。それはどんな社会なのか,想像できるだろうか。本書では,「デジタルネイチャー(計算機自然)」の世界観を示し,機械と自然が融合する時代を描きだそうとしている。

 書籍のタイトルにもなっている「デジタルネイチャー」とは,「生物が生み出した量子化という叡智を計算機的テクノロジーによって再構築することで,現存する自然を更新し,実装すること」と書籍の中で述べている。AIの進化によって,人間と機械の境目がなくなってきつつあり,人々は世界を認識するときに,それが「自然」なのか,あるいは「計算機による自然」なのかを意識することがなくなる生活をおくるようになるだろう,と述べている。機械が人間のような挙動を示す例として,女子高生AI「りんな」のように,人間と見分けがつかないツイートをする自動プログラムが生まれ始めているという。本書は,著者が頭の中で描く未来についての思想であるので,どのように受け取るか個人個人によって差があるかと思うが,最近AIの進化が著しく,AIがより人間社会の中に入り込んできたら,どんな社会になっていくのか,想像力を働かせるのに苦慮している方々が多いのではないだろうか。

 知財関係者は,数年先を考えて特許出願などをしていくことを生業としている。したがって,先のことを想像することに慣れているし,そのような目利きでないといい特許を生み出していけない。それでも近年のAIの進化でどんな社会に変化していくかは,中々想像することはできず手助けがほしかった。映画の中で出てくる現実世界とデジタル世界が融合したような未来の世界観がもうすぐそこまできている。いや,すでにAIは生活の中に入りこんで人間をサポ ートしている。是非,著者が描く将来の世界観を感じていただきたいと思う。

(紹介者 会誌広報委員 Y.О)

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