新刊書紹介

新刊書紹介

インド特許実務ハンドブック

編著 安田 恵,バパット ヴィニット 著
出版元 発明推進協会 A5判 380p
発行年月日・価格 2018年11月発行 4,000円(税別)
 インドは,人口が世界で2番目に多く今も増え続けている,この四半世紀の間に経済成長率が5〜7%程度を維持しつづけている,などの点でビジネス面でも大いに注目すべき国の1つだと思います。とすると,実務上の細かい部分も含めてインドの知財制度はどうなっているのか,当然気になると思います。
 しかし,いざインドの知財の情報を集めよう と思っても,5極に比べて情報は相対的に少なく,実務をこなす際に苦労しているのではないでしょうか。
 本書の「はじめに」の欄でも,著者が指摘するように「インドでは,法解釈が確立されていない条項や手続きが多く存在します」ので,ある程度インドの特許実務を手掛けた経験のある人にとっても,実務において迷う場面もあるかと思います。また,現地代理人とコミュニケー ションをとる際にも,何が分かっていて何が分からないかを上手に伝えないと,期待していた回答が得られず,苦労することもあるかと思います。

 本書は,日本の弁理士と,インドの弁理士(JIPAのWA1およびF6研修の講師経験有)との共著です。両弁理士の共同執筆のため,日本とインドとの間で特許制度がどのような部分で同じなのか異なっているのか,分かりやすく書かれています。
 条文や審査基準に書かれていないために解釈が割れる部分についても,複数の解釈を説明した上で,安全面でどの解釈をとるべきか,述べられています。条文上,任意なのにもかかわらず,実務上は義務となっている手続きについても述べられています。
 そしてインドの特許法を一通り理解できるよう重要な条文について逐条解説もされていますので,これ1冊が手元にあれば,インド特許の実務初心者でも,まずは実務をこなすために必要な情報が得られる形になっています。

 ところで私自身も先日,インド特許出願の権利化作業を行いました。管理官(Controller)からの書面を最初に読んでみた際,方式面でも実体面でも何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。そこで本書の関連する項目を参照したところ,分からなかった事項はほぼ理解できました。細かい部分で不明な事項については,現地代理人に突っ込んだ質問をすることで的確な回答を引き出すことができました。
 ちなみに「管理官」とはどんな人で,どんな役割があって審査官(Examiner)との違いは何か,といった基本的な事項も本書には書かれています。インドの実務初心者はもちろん,ある程度経験のある方にも本書をおすすめします。

(紹介者 会誌広報委員 S.Y.)

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