新刊書紹介

新刊書紹介

IPランドスケープの実践事例集

編著 蟷旭翳産戦略研究所 山内明 監修
出版元 技術情報協会 A4判 366p
発行年月日・価格 2019年5月31日発行 70,000円(税別)
 2017年7月17日付の日本経済新聞朝刊で,欧米企業が先行活用する知財分析手法および同手法を用いた知財重視の経営戦略の総称として,IPランドスケープが紹介されて以降,IPランドスケープを活用する企業は増加していると思われるが,従来のパテントマップとの違いがよくわからない,どのように進めればよいのかわからないなどという知財部員も多いのではないだろうか。
 本書は,監修者の山内明氏をはじめとするIPランドスケープにおける著名人30名が執筆したIPランドスケープの専門書である。1章(IPランドスケープの基礎),2章(IPランドスケープ実践に向けた企業内取組事例),3章(IPラ ンドスケープ実践に向けた教育の在り姿),4章(IPランドスケープ実践のための各種スキル) から構成されており,IPランドスケープの基礎から実践までの幅広い内容となっている。
 IPランドスケープとは?,従来のパテントマ ップとの違いは?,求められるアウトプット は?,などのIPランドスケープの基礎から始まり,書名のとおりIPランドスケープの実践事例が豊富に紹介されている。特に2章ではIPラン ドスケープを既に知財活動で活用している各業界の先進的企業の取組事例が組織体制とともに紹介されている。また,4章ではIPランドスケープの進め方が具体的事例を交えて必要なスキルとともに解説されている。もちろんIPランドスケープの目的は様々であり,企業毎に状況も異なるため,紹介された事例がそのまま各企業に当てはまることは少ないと思われるが,IPランドスケープを進めるうえで一助となることは間違いない。
 また,本書のように複数の著者が自由裁量で執筆する専門書は,内容が重複しがちであり,知りたい情報にアクセスするのに時間がかかる場合が多いが,本書には監修者の山内明氏が作成した内容の一覧マップがあり,知りたい情報にアクセスしやすい工夫がされている。
 本書でも述べられているが,近年,日本企業の知財部門の役割としては,これまでの特許出願業務中心から,事業の成長に貢献することが求められており,そのためにはIPランドスケープの活用が必要不可欠と思われる。本書は,こ れからIPランドスケープを活用しようとしている企業の知財部員はもちろん,既に活用しているが,上手くいかずに悩んでいる知財部員にも,ぜひ一読をお勧めしたい。

(紹介者 会誌広報委員 Y.A.)

第4次産業革命と法律実務

編著 阿部・井窪・片山法律事務所 服部 誠, 中村 佳正,柴山 吉報,大西 ひとみ 著
出版元 民事法研究会,A5判 270p
発行年月日・価格 2019年7月14日発行 3,300円(税別)
 本書は出版時点における最新の第4次産業革命に関連する法令や法的論点を概説している。 第4次産業革命の進展は,経済活動や日常生活 など様々な分野に影響を及ぼそうとしており,法律実務を理解するには幅広い法令を横断的に把握する必要がある。知財法においても例えば特許法と著作権法との間でプログラムとデータの保護範囲の違いといった論点がある。

 本書では知財法はもちろんのこと,民法,個人情報保護法,独禁法,さらには製造物責任法や電気用品安全法などにも言及している。本誌の読者の多くは知財部門に所属し,すべての関係法令を詳細に知っている必要性は一見高くないと思われる。しかし,現在進行形の第4次産業革命の只中で業務を遂行する上で,知財部門も事業部門との議論を踏まえて戦略を検討する機会が増えているのではないだろうか。この場合,知財関連の法令だけでなく,他の法令も知っていないと,議論に加われないことがある。例えば,現行の製造物責任法が対象とする製造物とは「不動産以外の有体物」であり,ソフトウェアは対象外となっている。この点,ソフトウェアが組み込まれたロボットや自動車などは有体物として同法の対象となるが,そのソフトウェアに欠陥があった場合の責任の所在についての解説は興味深かった。

 本書は4つの章で構成されている。第1章では第4次産業革命の意義や国内外の第4次産業革命に対する取り組みを説明している。第2章ではクラウドやIoT,ビッグデータ,AI等のそれぞれの技術動向や社会生活・経済活動に及ぼす影響を,国内外における各種取り組みの紹介とともに解説している。ここでは,AIと倫理に関する議論の所在とこれについての各国における取り組みの説明が興味深い。第3章は前述の通り,第4次産業革命に関連する現行の各種法令の概要を解説している。第4章では,第4次産業革命の過程で,技術や秘密情報を守るためには実務上どのような対策が考えられるかを整理している。本章では,経産省が2018年6月に公表した「AI・データの利用に関する契約 ガイドライン」を参照しつつ,AIやビッグデータ等の分野における契約交渉や契約のドラフティングに際しての留意点についても,具体的な条文案を紹介しながら解説している。

 本書は270頁とコンパクトにまとまっていることもあり,専門家でなくとも通読するのは比較的容易であろう。関連する法令を幅広く知る上で適切な書籍と考える。

(紹介者 会誌広報委員 K.I)

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