新刊書紹介

新刊書紹介

台湾専利実務ガイド
−台湾の特許・実用新案・意匠に関し, 最新台湾専利法に基づいた出願から 審査・審判・訴訟までの仕組みと実務−

編著 黄 瑞賢,降幡 快 著
出版元 発明推進協会 A5判 266p
発行年月日・価格 2020年4月発行 2,500円(税別)
 2018年台湾特許庁年報によると,台湾への特許出願が多かった外国上位5ヵ国のトップが日本(12,871件)であり,これは2位のアメリカ(6,393件)の約2倍の件数であり,日本企業における台湾への注目の高さが窺えます。また,一般に第1国出願を日本で行い,それを基礎出願として外国出願を検討する場合,パリ条約に基づく出願と,PCT(特許協力条約)に基づく出願の2通りを考えますが,台湾の場合,PCT(意匠の場合はハーグ協定)加盟国ではないため,相互協定に基づいた台湾出願を行う必要があります。そのため,台湾への出願を検討する企業においては,台湾の専利法及びその実務についてより深く理解しておくことが必要となります。
 本書では,まず,第一編として,専利制度の概要や近年の専利法や審査基準等の改正内容がまとめられています。また,「専利調査の方法」と題して,現在,台湾特許庁が提供している2つの検索プラットフォームについて触れられており,個人アカウントの登録が必要ではありますが,無料でちょっとした特許分析機能や対象文献追加通知(いわゆるSDI)機能が利用でき ること等,普段は商用の外国特許検索システムしか用いない私にとっては目から鱗の内容であり,非常に参考になりました。
 また,これ以降の第二編では特許,第三編では実用新案,第四編では意匠出願に関する,台湾実務の詳細が綴られています。特に,第二編の特許に関しては,審査実務に始まり,審判実務,侵害訴訟実務についてスキームを示しつつ,各アクションについて詳細に説明がされており,実務初心者の方が読んだとしても理解がしやすく,非常に参考になる内容となっています。更に,審査実務において要となる進歩性判断や,各種記載要件(実施可能要件,明確性要件,簡潔性要件,サポート要件)の説明にあたっては,台湾の専利審査基準を引用して説明するだけに留まらず,進歩性や記載要件判断に関連する複数の比較的新しい裁判例が挙げられており,審査基準の表面的な理解だけではなく,実運用に即した判断を本書一冊である程度理解すること ができる内容となっており,とても参考になります。
 本書は「台湾専利実務ガイド」とのタイトル通り,台湾における主に特許実務に関し,前述した様に近年の裁判例を紹介しつつ,266ページと非常にコンパクトにまとめられています。困ったときのハンドブックとして,台湾実務の初学者のみならず,幅広い層の実務担当者にぜひ手元において頂きたい一冊です。

(紹介者 会誌広報委員 A.T.)

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