新刊書紹介

新刊書紹介

日本の製造業がIoTビジネスを 展開するための特許戦略
〜IoT関連の米国特許訴訟の調査を中心に〜

編著 大石 幸雄 著
出版元 日本機械輸出組合 B5判 252p
発行年月日・価格 2020年4月10日発行 1,800円(税込)
 本書は,IoT(Internet of Things)関連の米国特許訴訟について,その傾向や内容の調査分析に加えて,日本の製造業がIoTビジネスを展開するための特許戦略構築における留意事項,法的課題及びその対策を解説した実用書であり,全5章から構成されている。また,参考資料として,第2章で事例紹介された米国特許訴訟における裁判資料(3事例)が付けられており,より詳しい訴訟経緯や判決内容を知りたい読者にとっては有用な情報となり得る。

 「第2章 IoT関連の米国特許訴訟の調査」では,IoTシステムの一般的な構成(デバイス・エッジ・クラウド)と全体システム毎に,120件のIoT関連の米国特許訴訟の中から,IoTビジネスを展開する上で参考となり得る事例(12事例)がピックアップされ紹介されている。デバイス4事例,エッジ3事例,クラウド1事例,システム4事例について,それぞれ(ⅰ)訴訟概要(―饂鐡事項,特許概要,A幣戮侶舒沺砲図を交えて分かり易く解説されており,(ⅱ)コメントでは,当該特許訴訟における注意事項や,当該特許訴訟を踏まえた特許戦略構築における留意事項が説明されている。読者が着目する個別の構成は様々と考えられるが,特にIoTシステムは複数の企業の製品やサービスを組み合わせて構築されることが多いため,本章は全体的に一読の価値がある,と感じられた。

 「第3章 IoTビジネスのための特許戦略」では,侵害リスクの検討(守り)と,効果的な特許取得の検討(攻め)という二面について整理されている。守りの面では,特にIoTシステムで利活用される場面が多いオープンソースソフトウェア(OSS)について,その利用に際してOSSライセンスの規定に加えて,利用するOSSとは関係ない第三者が保有する特許権の侵害リスクに言及されている。攻めの面では,特にある市場の後発企業が先行企業に対してピケット・フェンス(Picket Fence)を築くことの有効性に言及されている。両面共に,IoT分野に限らずそれ以外の分野への展開が十分可能な特許戦略である,と感じられた。

 「第4章 IoTビジネスに関連する法的課題及びその対策」では,複数主体による/複数国にまたがる実施について,日本及び米国における裁判例を通して,法制度の整備や侵害判断の明確さの違い等の課題と,現状取り得る対策が解説されている。新しいIoT分野における各国の課題を現状把握するだけでも,今後の特許戦略構築に十分に活かすことができるのではないだろうか。

 最後に,本書には,特許取得におけるクレーム作成における留意点が散りばめられている。IoTビジネスを展開する企業の知財実務担当者にとって,守り/攻めの両面を意識しながら権利形成を図っていく上で有用な情報源である,と考えられる。

(紹介者 会誌広報委員 K.S)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.