新刊書紹介

新刊書紹介

デザイン保護法

編著 茶園成樹,上野達弘 編著
出版元 勁草書房 A5判 304p
発行年月日・価格 2022年3月発行 4,180円(税込)
 本書は,多様なデザインの保護を検討するとのはしがきの記載通り,デザインを保護する多様な法と,保護される多様なデザインについて,大学研究者や実務家が解説する構成となっている。具体的には,多様なデザイン(プロダクト,パッケージ,ファッション,空間,画像,グラフィック,キャラクター)ごとに章立てがなされ,各デザインに対して意匠法,商標法,著作権法,不正競争防止法上の保護について解説されている。デザインの保護と言えば,意匠法での保護を第一に考える読者が多いと思われるが,上記の構成により,読者は保護しようと考えているデザインごとに意匠法以外の法域の知識も得ることができる。また,保護対象であるデザインの種類も,大量生産品,服飾品,建築物や内装,グラフィック・ユーザー・インターフェース(GUI),アイコン,ピクトグラム,ロゴ,タイプフェイス等,キャラクターそのものや人形等と豊富であり,判例・裁判例も多数収録されているため,様々な場面において参考となる一冊である。
 例を挙げると,大量生産品について立体商標で保護する場合,商品の機能確保のために必要不可欠な形態については識別力獲得後も商標登録を受けることができないとの商標法の規定について,欧米においては機能的形態にかぎらず,審美的形態であっても保護されないとする法理論及び実務が紹介されている。日本では審美に関する商品形態保護が可能か否かについては決着していないが,欧米での保護を考えるユーザーにとって参考になると思われる。
 また,建築デザインの保護の応用として,都市のデザインはどのように保護されるべきか,或いはどこまでがパブリックドメインかといった現在進められるスマートシティやそれにかかわる都市設計といった内容への示唆もなされていて興味深い。
 デザイン保護に携わる担当者,特に企業内の担当者においては法域ごとに担当者が割り当てられているため,他の法域のことはあまり理解できていないことも多いと思われる。本書は,デザインごとにどのような法域での保護が可能であるのかを網羅的に知ることができる良書であり,自らが通常担当する法域以外でのデザイン保護について有用な情報を得ることができよう。この情報を活用し,より実効的なデザイン保護の知財戦略・戦術を立てる契機としてほしい。

(紹介者 会誌広報委員 T.K.)

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