新刊書紹介

新刊書紹介

無知財は無知罪 
訴訟大国アメリカでのビジネスで, 知財を知らないとエライ目に!  それはもう犯罪です!

編著 岸本 芳也 著
出版元 総合法令出版 四六判 224p
発行年月日・価格 2022年12月発行 1,650円(税込)
 本書は,主に初学者,中級者を対象とした米国の知的財産に関する書籍であり,30年近くにわたり米国特許に関わってきた著者により執筆されたものである。
 本書は,第吃堯崙門編」と第局堯崋太鑛圈廚ら構成されている。第吃堯崙門編」では,知的財産に関する入門的知識とともに,米国での知財問題とその実態や,コカ・コーラ社やインテル社等の米国企業による知財活用の事例が紹介されている。第局堯崋太鑛圈廚任蓮な胴颪任瞭探侵害訴訟の実情やその対応策,更に知財デュー・デリジェンスや日米における輸出管理についても説明されている。
 「入門編」と「実戦編」とも,予備知識がなくても読めるように配慮されており,法制度の詳細や具体的な法解釈等,専門的な説明はなされていない。その一方,米国での知財問題やその対応策について,その理解の土台となる米国の社会や文化を踏まえて説明されている。例えば,「入門編」では,米国での著作権侵害に関する説明に,多くの米警官がパトロール中にディズニー音楽を大音量で流している話題が挙げられている。また,「実戦編」では,米国弁護士やビジネスパーソンが交渉力に長けている理由として,社会心理学をよく研究していると説明されている。ゆえに,本書に記載されている知財問題への対応策は,米国の社会や文化に基づいたものであり,更に,最新の知財事情も触れられているので,知財実務経験が長い上級者にとっても興味深く,また,知識のアップデート等にも有用といえる。
 私は,「無知財は無知罪」というユニークな著書名に惹かれて拝読したが,書籍のサイズが小さく,ページ数も多くないので,すぐに読むことができた。また,上述のように,米国の知的財産について初歩から説明されているので,非常に読みやすかった。更に,米国の社会や文化を踏まえた説明は,米国に長年在住し米国特許実務に関わってきた著者ならではのものであり,とても興味深く読むことができた。なお,本文中のイラストは,著者によるものであり,著者の多才さをうかがわせる。
 本書「はじめに」によれば,「無知財は無知罪」という著書名は,知的財産保護や知財紛争が複雑化している現在,知財に無知のままビジネスを行うのは,もはや犯罪レベルの無謀な行為だ,という著者の思いが込められている。その思いの通り,本書は,知的財産の重要性を認識するのに役立つものであり,知財に興味を持つあらゆる方にお勧めの一冊だといえる。

(紹介者 会誌広報委員 C.K.)

知財とパブリック・ドメイン 第1巻:特許法篇

編著 田村 善之 編著
出版元 勁草書房 A5判 504p
発行年月日・価格 2023年1月発行 6,380円(税込)
 本書は,産業の発展に資する知的財産の創作を促進するために必要なパブリック・ドメインの醸成と利用促進を目的とした書籍であり,特許のみならず知的財産権の各法を横断的に取り扱ったものである。第1巻「特許法篇」,第2巻「著作権法篇」,第3巻「不正競争防止法・商標法篇」の全3巻で構成されており,今回紹介するのは第1巻「特許法篇」である。
 特許法においては,近年,数値限定発明やパラメータ発明などが公知技術との境界線や公知技術と重複している部分で特許権が付与され,その結果としての紛争が発生しており,パブリック・ドメインと特許権との関係について関心が高まってきている。本書は,近時の特許法とパブリック・ドメインの諸問題を取り扱ったものではなく,特許権に関する最新の諸問題を,東京大学大学院法学政治学研究科教授の田村善之先生を始め,知的財産権の各法で活躍されている錚々たる研究者の先生方が執筆者として名を連ね,各先生が研究されている特許法に関する諸問題を解説いただいている書籍である。その内容であるが,今まで発表された論文をまとめたものではなく,本書で初掲載となる論説や最新の判例も盛り込まれており,また,各章も一般的な論説の数本分にもなる分量で特許法に関する諸問題が豊富な判例などに基づいて解説されており,非常に読みごたえのあるものとなっている。
 本書は,主に特許要件,侵害の成否,救済の3つの部で構成されている。特許要件の部では,特許適格性,用途発明,パブリック・ドメインと新規性/進歩性,AIと進歩性と,網羅的な論点を詳しく論じられている。生成AIの進歩でにわかに関心が高くなっているAIと進歩性の最新の論点を本書で既に取り上げているのが驚きである。
 第3部の侵害の成否でも,広すぎる特許に対する処理,均等論,先使用権という,実務家にとって非常に関心の高い論点について詳しく解説いただいている。いずれの論点も紙面の制限がない書籍の特性を生かして,様々な視点で解説しており非常に参考になる。第4部の救済においは,差止請求権の制限,米国における特許権のミスユース,公衆衛生と特許の3つ観点で論じられており,この部においても最新の状況が既に盛り込まれている。
 このように本書は,実務家にとって関心の高い論点が全て盛り込まれたものであり,この一冊があれば様々な論説や書籍をあたる必要もなくなると思われる。本書をまとめていただいた田村先生に深く感謝したい。

(紹介者 会誌広報委員 H.N)

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