役員談話室

たまねぎ礼賛

野菜のなかで、一番尊敬できるのは、なにか?
筆者は「たまねぎである」と答える。
なぜか、以下にそのわけを縷々述べてみたい。

たまねぎのえらいところは「おくゆかしい」ところである。
外見は茶色の破れたコートをはおり、目立たないようにしているが、一皮剥いた時のはっとする様な白い素肌。
これはただものではない。
すべすべした透明感のある肉感、外気に触れたことのないような白さ。
この美しさを隠しているところは「おくゆかしい」以外の何物でもない。

外見だけではない。中味もすばらしい。
例えばカレーを見よ。
我々が、白米の上にのっかっているカレーをみて、たまねぎの存在を認めることが出来るであろうか。

たまねぎはその白い素肌をすでに放棄し、なおかつその存在を主張することを捨てている。
ルーのなかに完全に溶け込み、肉・人参・じゃがいもを浮かび上がらせ、自らは身を隠す。
「エライ!」と思う。
「謙譲の美徳」「おくゆかしい」と思わず筆者は絶賛してしまうのである。

ルーのなかに、たまねぎが入っていなかったらどうなるか。読者は考えたことがあるだろうか(あるわけないか)。
たまねぎを抜いたカレーは一言でいって「まずい」。
カレーのなかに入っている材料がそれぞれ強烈な個性を発揮し始め、全体のハーモニーに欠けるのである。

ここで賢明な読者諸兄ははっと気づくはずである。
たまねぎは身を隠し、自己を主張することなく、全体のために働いているのか。
各材料の調整に身をささげているのか。
能力あるところを隠し、ひたすら頑張っているのか。そうかそうかウンウン。
感動されたことと思う(するわけないか)。

知的財産部もそうありたいと筆者は考える。
決して表に出ることなく、影のR&D参謀として活動したい。
そして人間的には魅力ある人物でいたい。 そう思う、今日このごろである。

(追記)
上記以外にも、たまねぎの尊敬できるところはまだまだ多い。
日持ちがすることがそのひとつ。
冷蔵庫に入れなくても台所の片隅にじっとたたずみ、主人の手が伸びるのを待っている。
冷蔵庫に入なくてもよいから、保存のためのエネルギーを消費しない。
だから地球に優しい。
その上、なまでOK(オニオン・スライスを見よ)、炒めてもOK(酢豚を見よ)、煮てもオーケー(味噌汁、オニオンスープを見よ)。
もうすこし、たまねぎを見直して欲しい。
ついでに知的財産部も。

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鈴木 元昭(日本知的財産協会 常務理事)

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