役員談話室

第三回近年入会会員・中少数知財会員フォローアップ会
(2012年6月5日(火) JIPA関西事務所)

JIPAの会員はバラエティに富んでいる。例えば、業種では、金属機械部会203社、電気機器部会296社、化学部会362社、商社部会4社、建設部会43社、地域では、関東部会687社、関西部会221社である。

JIPA会員を知財部員数の視点から観た場合、関西部会221社のうち、知財部員数10名以下の会員(仮に中少数知財会員と称す)は概ね50%強に相当する割合である。

中少数知財会員においても、経営より多種多様な知財機能を果たすよう求められており、また、少数部隊でこれに挑むため、少数部隊固有の独特な課題を抱えられている。

一方、日本の産業競争力強化のためには、中少数知財会員も経営に資する知的財産活動を適宜・適正に推進していかねばならない。

本会は、2009年度の重点施策であった「知財中小会員の知的財産活動支援」にかかる取り組みの一環として、当初は、近年入会会員を対象として、第二回は、近年入会会員に加え、知財部員5名以下の会員を対象として、そして、本年度(第三回)は、会員の希望に応じて、知財部員10名以下の会員に拡大して第三回フォローアップ会を開催した。

プログラム

本年度は、久慈専務理事および井上常務理事に協力していただき、次のプログラムに沿って議事進行した。各業種部会より24社27名が参加した。
  1. 第一部 特別講演(13:30〜14:30)
          演題機А崔虜眇雄燹活動、将来に向けて」
              ※久慈専務理事(元本田技研工業蠱療財産部長)
          演題供А峽弍弔悗涼療財産活動のかかわりの在り方について」
              ※井上常務理事(シスメックス蠱療財産部長)
  2. 第二部 JIPA役員との一問一答(14:35〜15:15)
          ※久慈専務理事および井上常務理事
  3. 第三部 グループディスカッション(15:30〜17:30)
          1)グループディスカッション
          2)発表・質疑応答

コンテンツ

1.第一部 特別講演(13:30〜14:30)

中少数知財会員のアンケートでは、特別講演のテーマとして、「人材育成」、「知財活動の経営へのアピール」に多くの希望が寄せられた。 それぞれのテーマについて、久慈専務理事および井上常務理事に講師を引き受けて頂き、パワーポイントを用いて講演していただいた。それぞれ示唆に富んでいて参加者には有意義であった。
  • ※久慈理事長資料より抜粋

  • ※井上常務理事資料より抜粋

2.第二部 JIPA役員との一問一答

第二部は、参加者よりJIPA役員に聞きたいことを予め募集した。合計7つの質問が寄せられた。
まずは、それぞれについて、久慈専務理事および井上常務理事に応えていただいた。その後、参加者との間で質疑応答がなされ、‖膣覿箸任△辰討眞羮企業であっても知財活動の規模は違えども原点は同じであること、経営に見える権利活用策を追求し挑むこと、8従譴砲笋気靴っ虜盂萋阿鮗汰することなど、印象深い示唆があった。

久慈専務理事・井上常務理事への質問

  • A社
    JIPAとして、私達のような中小知財企業に望む・期待することは何でしょうか?今後の「心の励み」としてお聞かせ頂きたいと思います。
  • B社
    JIPAの中小知財対応の今後の進め方についての考えをお聞かせください。
  • C社
    知財担当者の行動を経営に反映させることは可能でしょうか?
    どのようなアプローチが有効でしょうか?あるいはどのような意識が必要でしょうか?
  • D社
    少数知財組織で人を増やそうとする場合、会社側にその必要性を説き、納得させるのはハードルは高いところです。
    また、人を増やしてもアウトプットは急にはついてこないため、育成に時間がかかる、という点も理解が得られにくいです。
    会社側に理解してもらい易い説明等はないでしょうか?
  • E社
    弊社は素材を製造しているメーカーです。
    昨今、最終製品がグローバルに販売される中、弊社が国内に限定した知財活動を実施することによる「リスク」および「その対策」をご教示願いたい。
  • F社
    技術者の発明考案の推進のネックとなっている「面倒くさい」を排除する良い手段はありませんか?
    出来る限り知財メンバーの業務負担を増やさず、仕組みとして定着させたい。
  • G社
    弊社が特許取得する目的は、攻撃用の武器としてではなく、防御手段を学ぶためです。
    中小企業である我が社は、その事業規模故に特許保有数は多くありません。
    攻撃を受けた時のカウンターとして、特許を取得するのを目指すのではなく、攻撃を如何に跳ね返すか、すなわち、相手特許を無効化したり、権利範囲外である旨の抗弁を如何に巧妙に行うかの探求に力を注いでいます。
    特許にある、発明の保護と産業の発展への寄与の2つの側面の内、保護の側面のみ強調され、産業の発展に寄与しない特許紛争や特許戦略は、目的を逸しているように思えます。
    弊社のような、知財に対する取り組みについてご意見があれば宜しくお願いいたします。

3.第三部 グループディスカッション

第三部は、参加者の希望による次の6つのテーマについて、グループディスカッションを行っていただいた。
A.経営層への知財活動のアピールを如何にするか
  ・経営層へ何をどうアピールすべきか、その効果的なアピール方法は何か
B.業務の効率化、個人負担増ヘのリスク低減を如何にするか
  ・ マルチ機能が求められる中、業務効率を如何に高め、その負荷をどう軽減するか
C.自己を含め知財担当者の成長をどう図っていくか
  ・マルチ機能に対応できる企画力、専門知識、実務スキル等をどう養成するか
D.特許管理、検索システム選定、維持管理を如何にするか
  ・どの様な判断基準で効果的且つ効率的に情報管理すべきか
E.社内への広報・啓発活動を如何にするか
  ・知財重視や発明増進を含め知財活動を関連部門へ浸透する上手い方法はなにか
F.中国諸問題に如何に対応するか
  ・中国の誤訳問題、模倣問題等をどの様に解決すべきか
各グループが発表した内容のキーワードを下表にしめす。短い時間故に十分な議論は難しかったが、他社の状況や意見・情報等々が直接聞けて良かったようである。
  概要(キーワード)
Aグループ
  • 報告内容
    1.出願件数、2.他社動向(出願の内容分析)、3.訴訟リスク、4.ライセンス収支、5.訴訟等経過報告、6.権利化された特許とその商品の□販売実績
  • 問題点
    数字のみの報告となりその裏にある問題などが伝わっていない。
Bグループ
  • 開発部門への意識付け
  • 特許事務所の使い方
  • 決断の判断、鑑定や外部調査
  • 業務効率化
Cグループ
  • 発明抽出→明細書作成・出願→権利化までの流れをこなせるようになるには、どの様な教育が必要か、各社ではどのような教育をとっているか
    →大まかには、OJT、知財協会の研修受講
  • ほかにどの様な方法が有効か
    →他社知財担当者と繋がりを作る、自社にない考え方を学べる、他社の成功例をマネさせてもらう、などの利点を最大限活用する
Dグループ
  • 包袋管理:ペーパーレス化、管理ソフトと連携、PDF化(紙廃棄)、電子データはバックアップ体制大事
  • 他社特許:技術者へSDI→フィードバック→知財でウォッチング→技術者にフィードバック
  • 調査:各社各様、JP-NET,NRI,DIALOG,HPAT、中央光学など
Eグループ
  • 課題
    意識が低い、興味だけで発明者が出願依頼、開発の早い段階で方向性を決めるが特許調査はしない
  • 従来
    広報活動は、啓発活動を行っていたが担当者レベルであり開発業務を優先させてしまっている
  • 対策
    対象者をかえる(担当者レベル→部課長クラス)、他社での具体例をあげて刺激、適切な保護方法を理解してもらう、開発スタートから製品完成までの過程で調査・出願しなければ、先に進まない制度を導入するよう仕向ける
Fグループ
  • 事例議論
    中国子会社に製造委託、侵害者はデザイン盗用し侵害品を他国に販売
    当時者は意匠権を保有、相手方も意匠出願していた
  • 諸問題
    特許・実案どちらを出願すべきか、中国翻訳問題、中国調査はどのようにしているか、代理人の選定基準は

アンケート

本会について、参加者に対するアンケートは次のような結果となった。この結果を考慮して今後について検討を重ねていきたい。
質問項目 回答(27名)
第一部
(特別講演)
■期待通り15名、□良かった12名、□まあまあ0名、□期待外れ0名
第二部
(一問一答)
□期待通り11名、■良かった16名、□まあまあ0名、□期待外れ0名
第三部
(グループディスカッション)
□期待通り9名、■良かった15名、□まあまあ1名、□期待外れ0名
本会の継続について ■毎年開催して欲しい23名、□不定期でもよい5名、□なくてもよい0名
本会の構成について 特別講演 ■是非必要15名、□あればいい6名、□どちらでもよい1名
グループディスカッション ■是非必要20名、□あればいい10名、□どちらでもよい1名
本会の対象会員について ■現状で良い24名 □次のような方々3名
 ※事業部制で少数Grが独立している知財組織、知財人数の数はなしとする、知財部員の多い会社と議論したい

感想・意見・要望

  1. 特別講演会について
    講演内容は参考になった。第一、二部が期待以上によかった。可能であれば、講師も中小出身者にしてはどうか。
  2. グループディスカッションについて
    業界の事情、状況は違うが、同環境下での各社の事情や悩み、よい情報が聞けてよかった。取り入れられる事は取り入れたい。 他業種の知財活動が聞けてよかった。知財業務に会社の規模は関係ないことがわかった。異業種で不安はあったが、逆に気付かされる点もあり、よかった。
  3. 運営について
    もう少し時間がほしかった。  終日開催にしてほしい。 GDの時間がもっとほしい。
  4. その他
    JIPAの活動に助けられている。

インプレッション

今回も、知財活動の在り方に問題意識を持たれた方々が参加され、特別講演、一問一答、グループディスカッションを通じて活発な議論がなされた。全般的には、中少数知財会員の意見交換、情報交換の機会として良かったように思われる。
GDは、やはり悩ましい課題故に短時間ではなかなか課題解決には至らなかったが、少なくとも、他社、他業種の状況や様々な意見・情報は参考になったようである。
そして、本会を重ねることにより、中少数知財会員が抱える各種課題の議論が深化し、解決の糸口を見出すことに期待したいところである。

本会の趣旨は、中少数知財会員の知財活動支援の一環であるが、中少数知財会員とはどの範囲の会員を対象とするのが適切なのか、悩ましいところである。この点は、引き続き会員ニーズを探っていきたい。
本会の運営は、毎回、試行錯誤しつつ行っているが、参加者に有意義な会になるように工夫していきたい。ただ、今回は、知財部員5名以下から10名以下の会員に拡大して案内したものの、それほど参加者は増えなかった。本会に関心がないのか、PR不足なのか、この程度が適切な規模なのか、どうであろうか・・・。

本会の運営改善の余地はあるものとして、本会を継続且つ地道に開催することにより、中少数知財会員の知財活動強化の一助になれば幸いである。

岡崎 秀正(日本知的財産協会 関西事務所長)

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