役員談話室

特別事例研究会の継続に向けて

 世界には知的財産に関する種々の団体があるものの、JIPAほど会員交流の盛んな団体は他に類をみません。 会員交流の組織体として、政策、専門、業界、地域、規模、人材などの多種多様な観点からの集まりがあって、それぞれの目的に見合った活動が精力的になされています。 会員は、各種組織体に参加し、政策提言、専門研究、人材育成、情報交換、人材交流などを図っています。 そのなかで、最近試行的に始められた特別事例研究会がありまして、その活動を紹介いたします。

 この研究会のトリガーは、ある会員から「会員に関心の高い実例を紹介しても良い」との提案が舞い込みました。その実例とは、「花王クイックル ワイパー事件」でありました。判例紹介は数多くなされておりますが、実例紹介となると、会員がその機会に接するのは極めて稀であります。それ故に、この提案は会員に とって良き機会になると判断し、早速、その会員と段取りの打ち合わせをしまして、今年度4月に第1回特別事例研究会が実現した次第であります。

 案内状を発信し僅か3日間で会場は満員となりました。第1回研究会では、講師より、事件の背景説明がなされたあと、講師が出題した質問について 参加者が小グループで議論し、その後、講師より事件への取り組み、解決への道筋や苦労話し、事件の顛末などを詳しく解説して頂きました。その後の質疑応答も盛んに 行われ、実例以上に迫力のあるものはないように感じました。

 この研究会の終了後のアンケートにより、この様な実例紹介の可能性を参加者に問いましたところ、お一人、実例を紹介してもよいという方が現れました。 これは有り難いことで、会員の期待に応じ、特別事例研究会を継続できるようになりました。 その実例とは、「IDEC中国知財訴訟非常停止用スイッチ事件」でありました。

 第2回特別事例研究会は、このテーマで今年度9月に開催いたしました。第1回同様に会場は満員となりました。この研究会では、講師より、 事件の背景から始まり、訴訟戦略、訴訟対応、勝訴後の対応(強制執行)を含め、事件解決に向けた一連の取り組みを詳しく解説していただきました。勿論、情報のレベルに 応じて、アイズオンリー、オーラルオンリーの工夫がなされておりました。その後の質疑応答も活発で時間を超えてなされました。講師による具体的な実例解説は、中国で 戦う知財実務者にはとても有意義でありました。

 この研究会の終了後にアンケートをとりました。第1回同様に大変好評でありましたが、今回は、残念ながら実例紹介してもよいという方は現れませんでした。 ただ、会員の期待の高さは変わりなく、それ故に候補者を探し、特別事例研究会の継続を図りたい所存です。時効になった実例など、役員の方より候補者をご紹介 頂ければ 幸いです。


 

以上


岡崎 秀正(日本知的財産協会 関西事務所長)

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