役員談話室

第三回特別事例研究会の興味深いところ

 消費者にとって商品の第一印象は「デザイン」ではないでしょうか。商品の形状や色彩の斬新さに惹かれて、お気に入りのものを選択することも多々あります。 それ故に消費財ビジネスを営む企業においては、商品のデザインを重視し、企業の個性をアピールして、商品の販売促進に繋げられております。
 このデザインを保護する意匠登録出願は、毎年3万件強なされており、その90%前後が登録となっています。そして、競合企業のデザインが一線を越えて類似に至れば、 訴訟に発展することもあります。国内では、意匠権侵害訴訟はさほど多く発生しないので、その経験をした知財部員もそう多くはないのではないでしょうか。

 そこで、本年4月10日に開催しました第3回特別事例研究会では、東リ社のご協力により、同社で経験された意匠権侵害訴訟事件について紹介していただきました。 関西会員より70名の方々に参加していただき会場満席となりました。
 この事件は、東リ社の主力製品の一つであるタイルカーペットの意匠権に関したものであり、協議による円満解決を望まれましたが、交渉が決裂し、事業の諸事情により訴訟事件に発展したものであります。
本研究会の第一部では、講師より、東リ社のビジネス概要、保有する意匠権、被疑品の発見、交渉から訴訟に至る経緯など、事件の背景を解説していただきました。

 その後の第二部では、講師により次の3点が課題として挙げられ、参加者によりミニディスカッションを行っていただきました。アンケートでは、この種の討議を好まない方も 若干おられましたが、討議に積極的に参加されている方も多く、解説を一方向で聞くよりも、自ら当事者の立場になって種々の観点から討議することには、意義があるように思われます。

設問1:意匠権訴訟のまとめ方について、意匠権と意匠侵害品の比較に おいて争点となるポイントは何でしょうか?
設問2:今回の侵害物のように購入することが困難な侵害物を特定する ためには、どのような方法が考えられますか?
設問3:本件事件では、損害賠償をどの様な算定により請求しますか?

 第三部では、講師より、実際に採用した訴訟対応(侵害論・損害論)について、解説していただきました。やはり、意匠権訴訟の最重要ポイントは、裁判官に如何にデザインの類似を訴えることでありました。意匠の要部をどう捉え、意匠の要部一致をどう認めてもらえるかに勝敗がかかっているように感じました。 この事件では、知財部門、企画部門、デザイン部門の関係者が現場実験を重ね、その独特な立証手法が功を奏して侵害立証に成功されています。
 また、意匠権侵害訴訟では、意匠権の寄与率が低く認定される事例が多々ありますが、この事件では、80%と高率で認定されています。差止めに加え、相当額の損害賠償金も得られ、主力事業の競争力に貢献した事例でありました。

 本研究会の終了後のアンケートでは、参加者の90%以上の方々が有意義と評価され、全体的に好評でありました。参加者より、〜幣戮亮体磴和臺兒温佑砲覆辰拭 経験の少ない意匠実務・侵害訴訟絡みの貴重な知見がえられた、侵害訴訟の事例紹介を継続して欲しい等々の感想・要望がありました。
 やはり実例に勝る勉強材料はないようです。その意味から、特別事例研究会は可能な限り継続していきたい所存です。

以上

岡崎 秀正(日本知的財産協会 関西事務所長)

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