役員談話室

台湾国際発明展&テクノマート出張顛末記

 もう半年前のことになりますが、台北で毎年開催される「台湾国際発明展&テクノマート見本市2015」(INST。主催:TAITRA中華民国対外貿易発展協会)での審査員への派遣という仕事で、2015年9月30日から10月3日に台湾に出張してきました。この出張、私には一生忘れられない出張の一つとなりました。

 話は2014年度5月の正副理事長会議に遡ります。事務局長の西尾さんから、「INSTの表彰式会場を借りてJIPA表彰をしている。表彰のプレゼンターだけしてくればいいから行ってもらえませんか。 一昨年、昨年と佐々木さん(前副理事長)に対応して頂いたもので、段取りは全部、マレーシアのGohさんがやってくれますから」と頼まれました。実を言えばこれまで台湾とは縁が遠く、約20年前に1泊2日、夜に現地入りして翌日は終日仕事をしてすぐに次の国に移動するという訪問をしただけでしたので、不謹慎ですが仕事の簡単さ、行ってみたさが先に立ち、安請け合いをしたのでした。 渡航までの準備にはTITRAの方が色々と配慮して下さり滞りなく進み、事務局の堀さんから「Gohさんから来られなくなった、代わりにLokという人が来られる。Lokさんは日本語も覚束ないようなのでJIPAから通訳も手配する」というメッセージを頂いたほかは、何の問題もなく出張の週を迎えました。

 ところが出張前日、台北を猛烈な台風21号が直撃。報道では、「死者3名、負傷者346名」、「各地で地滑り」、「1万2000人以上が避難し、約3000人が避難所で」、「200万戸の住宅が停電」、「台北の超高層ビル台北101(Taipei101)も猛烈な風により一部が破損」、「米ロックグループ、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)の公演はキャンセル」【え?明日出張なんですが・・・】。結局、 台風はすごいスピードで台湾を抜け、当日、飛行機は3時間遅れで飛んだのでした。飛行機が着いてから数時間、街中を歩くことができましたが、台風の猛威の爪痕がそこかしこに残っていました。

 さて、1日目の審査は、会場で展示されている製品、技術のうち、台湾国内の学生や研究者によるもの、海外から出品されているもの1000件近くを対象に、3名構成の27チームで手分けをして採点する というもので、私もチームメンバの他の2名の方とともに、1発明当たり平均7分で30件ほどを見て回りました。我々審査員に一所懸命に展示内容、発明工夫の内容を説明してくれる学生達の熱意、そして会場全体にみなぎる活気、熱気に感じ入りました。そうした熱は日本の展示会では、最近はあまり感じることが少なくなっているかもしれません。その後、それぞれのチームがプラチナ賞、金賞、銀賞、銅賞、佳作を選びましたが、夜の弁当が配給されるほどに時間がかかり、この作業は結構大変でした。 そして2日目。午前中の自由見学の時間に、日本から出展されている方々とお話したりした後、Lokさんとの待ち合わせ時刻の12:00となりました。15分ほど遅れて現れたLokさんの仰るには、「JIPAは どの展示を表彰するか選定は終わりましたか?」、「どこで表彰しますか?」【え〜〜、話しが違うよ〜!】。Lokさんは全くGoh氏から話しを聞いておられない様子で、途方に暮れたのでした・・・。

 14:00からは、INST各賞の表彰式がとても盛大に執り行われ、プラチナ賞24社、金賞169社、銀賞169社、銅賞222社、佳作24社のうち、プラチナ、金の各賞授賞セレモニーがなされました。経済部知的財産局 王局長からプラチナ賞が授与され、私もTAITRAからの指名を受け、とりあえずにこやかに、金賞を20社にお渡ししました。

 盛大なお祭りの間も「さて、JIPA賞の選定と表彰式をどうしようか・・・」と、頭の中は行ったり来たり。途方に暮れている私に、TAITRAの鄧之誠さんが声を掛けて下さいました。「JIPAでも表彰を お考えと聞きました。今夜のレセプションで表彰されますか。もしそうなら時間を取ります」と【これぞ地獄で仏!】。聞いていた表彰とは随分と違い、JIPA表彰がINSTの公式行事の一つに組み込まれる ことでいいのかなとも思いましたが、他に何のアイデアもありません。是非にとお願いをしました。さあレセプションまで2時間。JIPAの贈る3賞(グリーンテクノロジー、バイオテクノロジー、デザイン) を決めなければなりません。慌てて展示会場を歩き始めたところ、携帯電話が鳴りました。「何かお困りになっていると聞きましたがお手伝いしましょうか」と妙齢の女性の声が【今度は天の女神の声!】。 まもなく王國齢さんが通訳として来てくれました。それから二人で会場を歩き回り、何とか3賞を決めることができました。

 華々しいレセプション会場で、王局長以下の知的財産局幹部、TAITA幹部が揃われている中(余談ですが王局長の生オケは素晴らしかった)、外国から来ている他の団体からの○○賞の授与の後、我々JIPA賞の授与も滞りなく行うことができました。他の団体はクリスタル楯など、結構お金のかかった賞品を用意されていましたが、それに比較してJIPAの賞品がちょっと淋しかったのは次回の課題です。

 台風21号は、台湾を通り過ぎた後に日本海を北上し爆弾低気圧となって日本で猛威を振るったのですが、私は台風を追いかけて台北入りして、爆弾低気圧がいなくなった日本に帰るということになりました。 本当にツキのある人は出張時にそもそも台風なんて来ないけど、ちょっとだけツキがある、ボン・ジョヴィよりはツイている、かな?実は私はこれまでの人生で、こうした「ちょっとだけツキがある (結果として何とかなっている)」という、冷や汗とともに思い出される経験が結構あります。その幾つかは、そもそも私の粗忽さが招いているものであり、今回の出張も、安請け合いをしたのが原因の一つです。そうした粗忽さが招いたトラブルも、結局何とかなっているのは、「ちょっとだけツキのある人生」ということでもなく、人に助けて頂いている、今回もTAITRAの皆さん、そしてJIPAがこれまで獲得してきた大きな名声や信用に助けられたのだと思います。かくして今回の台湾出張は、忘れられない思い出の出張の一つとなりました。

 最後に少しだけ理事長らしいことを申し上げれば、JIPAとしてこのINTAの場への関わり方を、今一度、検討して頂けるのがよいと思う次第です。

(了)         

亀井 正博(2015年度 理事長)

台北 INST2015 JIPA 賞の提供

http://www.jipa.or.jp/katsudou/kokusai_katsudou/151003_inst2015.htm
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