第11章 継続的出願及びRCE(継続審査請求)の検討

  • 継続的出願をするためには親出願とのUSPTOへの同時係属が必要である。
  • 新規事項の導入はCIP出願、新規事項がなければ継続出願又は分割出願を用いる。
  • 特許出願に関し、規則1.53(d)の継続出願(CPA)は廃止された。代わりにRCEを用いる。

11.1 継続的出願の概要

 継続的出願には、継続出願、一部継続出願(CIP出願)、及び分割出願の3タイプがあり、何れのタイプも以下の条件を満足する場合に親出願の出願日を継承できる。

(1)継続的出願の開示要件(112条第1パラグラフ)が親出願でサポートされている。

(2)継続的出願が親出願のUSPTOの係属中に行われている。

(3)継続的出願と親出願との間で、少なくとも発明者の一部が共通している。

(4)継続的出願の中で、親出願及びそれとの関係(継続・分割・CIP)を表示している。

11.1.1 継続出願( Continuation Application )

(1)規則1.53(b)による継続出願

・親出願は放棄手続しない限り存続する(新たに願番(Serial Number)が付与)。

親出願の権利化を諦めない場合に利用する。

(限定的なクレームで親出願を権利化させ、挑戦的なクレームで継続出願する等)

(2)規則1.53(d)による継続出願(CPA);デザイン特許(日本の意匠に相当)のみ

・親出願は自動的に放棄となる(親出願の包袋を継承)。

・親出願の権利化を諦め、クレームを見直してさらに審査継続を望む場合に有用である。

・規則1.53(b)に比べて手続が簡単である(CPAのリクエストフォームを審査官へFAX又は手渡しにて提出)。

CPAは2000年5月28日以前の出願日を有する出願に対してのみ、一回行えたが、特許に関するCPAは2003年7月14日付けで廃止されたので、以後はRCEを用いる。

11.1.2 CIP出願(一部継続出願/Continuation-In-Part Application)

(1)新規事項(新たな発明)を追加する必要がある場合に利用する。

(2)出願手続は規則1.53(b)に従う。IDS提出可否の検討は重要である。

(3)CIP出願においては、親出願に記載されている事項は親出願の出願日(優先日、発明日)を継承し、新規事項は現実の出願日(優先日、発明日)を享受する。権利期間の始期は最先の出願日(11.4.1を参照)。

11.1.3 分割出願( Divisional Application )

(1)親出願に複数の発明が含まれている場合に利用する。

(2)規則1.53(b)による出願である(手続面は継続出願と同一)。

11.2 継続的出願の活用方法

11.2.1 継続出願

(1)最後のアクション後の補正が新争点の場合、継続出願で審査を受ける。

(2)補正書の提出が遅れる場合に利用する(最後のアクションから6ヶ月確保)。

(3)予備的補正提出まで期間を確保できる。

(4)審判期限が迫っている場合に、出願のUSPTO係属を目的として継続出願を利用する。

(5)許可通知後のIDS提出に利用する。

11.2.2 CIP出願

(1)出願後に案出された改良発明・実施例等の追加により内容を拡充、強化する。

(2)拒絶回避のための新規事項を追加する。

(3)先願と後願とが102条(e)項の関係にある場合に両者を併合して問題を解決する。

(4)PCT出願後に、正規の国内段階移行ではなくCIP出願にて直接USPTOに提出する。

11.2.3 分割出願

(1)121条に基づく分割出願

@審査官による限定要求に対処して親出願から削除されたクレームを分割出願する。

A分割出願と親出願との間で二重特許(double patenting)を理由とした拒絶は原則発生しない。

(2)自発的な分割出願

@登録料支払い時に出願を見直して権利化すべき別発明を発見した場合に利用する。

A親出願との間での自明な発明型二重特許による拒絶に注意。

11.3 RCE ( Request for Continued Examination )

11.3.1 RCEの概要

(1)1995年6月8日以降の出願はRCE(規則 1.114)を利用できる。

(2)2000年5月29日以降の出願はCPAを利用できず、RCEを利用する。

(3)RCEは以下のタイミング以前に手続可能である。

・特許発行料の支払い

・出願の放棄

・CAFC(連邦巡回控訴裁判所)への出訴

(4)RCEの申請においては、IDS、補正書、特許性主張のための新たな反論、証拠などの提出(submission)が必要である。

(5)クレームカテゴリーを変更しての対応は出来ない(装置クレームから方法クレームへの変更は不可)

(6)審判請求後のRCE提出は、審判請求の取下げとみなされる。

11.3.2 RCEの活用方法

(1)従前のCPAを選択する場合と基本的に同じである。

(2)最後のアクションに対する応答の際に、特許性主張の新たな反論がなければRCEは認められない(新たな反論ができない場合には、規則1.53(b)の継続的出願又は審判を選択)。

(3)再審査請求の手続ではRCEを利用できない。

11.4 継続的出願とRCEの比較

11.4.1 事例対比

(1)事例対比:スライドによる説明

 * CIPの場合、"NEW MATTER"に係わるクレームの権利期間の始期も、最先の出願日からとなる。

(「Changes to Implement 20-Year Patent Term」の"5. Comment"の欄を参照)

(2)継続的出願及びRCE(継続審査請求)

 

継続的出願(規則1.53(b))

CPA(規則1.53(d))

RCE(規則1.114)

適用可能出願

全ての特許出願(継続出願を含む)

2000/5/28以前の出願日を有する特許出願。

1995/6/8以降の出願日を有する特許出願

出願又は申請の可能時期

親出願の特許登録前、または、放棄前迄の期間において出願可能

親出願の登録料支払い前、又は、放棄前迄の期間において出願可能

審査終了後(最後のオフィスアクションが出されている、許可されている、審判請求している)から次のアクションが行われる前迄の期間にて申請可能

@登録料支払い

A破棄

BCAFCへの訴状の提出

C民事訴訟提起

出願要件

又は

申請要件

@発明の開示要件が親出願にサポートされている

B少なくとも発明者の一部が共通

C親出願との関係を開示する

CPAのリクエストフォームの提出。フォームを提出すれば出願日が確保できる

RCE申請理由(IDS提出、補正、新たな争点等)の提出

 

各出願の扱い

新規出願として扱われる、親出願は維持される。

新規出願として扱われ、親出願は放棄される

同じ出願に対する審査の継続として扱われる

特許期間保証

親出願の特許期間保証の利益は継続されない。

親出願の特許期間保証の利益は継続されない。

2000/5/29以降の出願についてのみ、特許期間保証が継続される。

クレーム補正時期

継続出願の出願日から3ヶ月以内にクレーム補正が行える

CPA出願と同時に新たなクレーム提示を行う

RCE出願と同時に新たなクレーム提示を行う

出願公開

公開される

公開される

公開されない

備考

@継続出願は明細書に新規事項を追加することは出来ない

A新規事項を追加する場合には一部継続出願を行う

B一部継続出願において、親出願に記載されている事項は親出願の出願日を継承し、新規事項は一部継続出願の出願日を享受する

2000/5/29以降にCPAを行った場合、再度CPAを行う事は出来ない

(特許出願に関し、2003年7月14日付けでCPAは完全に廃止された。デザイン特許に関して利用できる。)

@最後のオフィスアクションに対してRCEを実施する場合、オフィスアクションに応答しなければならない

Aクレームカテゴリーを変更しての対応は出来ない(装置クレームから方法クレームへの変更は不可)

補足:特許期間保証については第15章を参照

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