専門委員会成果物

当事者系再審査で提出された外部証拠に基づいて特許が先行文献から予見されるものとした特許審判部の審決をCAFCが支持した事例

CAFC判決 2018年1月5日
Monsanto Technology LLC v. E.I. DuPont de Nemours & Co.

[経緯]

 Monsanto Technology LLC(M社)は,脂肪酸組成を変えた大豆の製法に関する特許7,790,953(’953特許)を保有する。’953特許を対象とする当事者系再審査 (Inter partes reexamination)をE.I. DuPont de Nemours & Co.(D社)が請求した。D社は,当事者系再審査において外部証拠(extrinsic evidence)を述べた宣誓書を特許審判部 (PTAB)へ提出した。この宣誓書には,先行文献“Booth”に開示された製法に基づき,作られた大豆に関するデータが示された。PTABは,この宣誓書の記述を勘案して審査したところ, 先行文献“Booth”に基づき新規性欠如を理由として,’953特許の一部のクレームを無効とする審決を下した。M社はこの審決を不服として,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,以下の理由によりM社の主張を退け,PTABの審決を支持した。
 争点の1つは,’953特許のクレームに含まれる“about 3% or less”の解釈であった。CAFCは,’953特許の明細書中で引用された参考文献“Wilcox”において2.3%から4.1%の例を同一実施形態として 記載されていることと,M社の4.1%を“外れ値”とする主張に根拠がないことから,’953特許のクレームにおける“about 3% or less”は先行文献“Booth”に記載の4%を含むというPTABの判断を支持した。
 また,CAFCは,D社の宣誓書に依拠して先行文献“Booth”が’953特許のあるクレーム制限を必然的に含むことが分かること,この宣誓書が先行文献“Booth”を拡大解釈するものではないこと, この宣誓書が不適切な機密情報でないこと,などから先行文献“Booth”に基づき’953特許の特定のクレームが予見されるとするPTABの判断を支持した。

(今村 隆寛)

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