専門委員会成果物

審査官の新規性の判断は実質的な証拠によって支持されていないと判断した事例

CAFC判決 2018年2月12日
In re:Hodges

[経緯]

 Hodges(H氏)は排水弁機構に関する12/906,222(’222出願)を出願した。排水弁機構は,入口座面と出口座面を形付ける単一のバルブボディと,入口座面を封する第1の弁と, 出口座面を封する第2の弁と,バルブボディ内の流体圧力に基づいてシグナルを生成するセンサとを備えている。PTABは引例Rasmussenと引例Frantzに基づく審査官の拒絶を支持した。しかし, H氏はこの判断を不服としてCAFCに提訴した。

[引用文献]
 引例Rasmussenも引例Frantzも,結露除去装置を開示している。引例Rasmussenの結露除去装置は,結露レベルに応じて変化する圧力を検知するセンサを備えており,このセンサは結露 レベルが高くなると排水流路を開けるために,流入口の上方にある弁を引き離す信号を生成する。一方,引例Frantzの結露除去装置は,自動開閉弁がバブルボディに取り付けられており, この自動開閉弁は流体圧力に応じてステムから離れるように機械的に作動するピストンである。

[CAFCの判断]

 CAFCは引例Rasmussenに基づく新規性なしという判断は,実質的な証拠によって支持されていないと判断した。PTABは,引例Rasmussenにおける流入口の上方にある弁は,外側ケースの 入口座面を封すると判断したが,CAFCは,発明の「バルブボディ」に相当するものは「外側ケース」ではなく出口座面を形付ける「ハウジング(外側ケースの内部にあるパーツ)」であって, この開示された流入口の上方にある弁が封する座面は出口座面と同様に「ハウジング」によって形付けられたものでないと判断した。
 また,CAFCは引例Frantzに基づく新規性なしという判断も,実質的な証拠によって支持されていないと判断した。PTABは,引例Frantzにおけるピストンが流体圧力に応じて動作するため, 機械的に作動する何らかのアクションも「シグナル」に含まれると解釈したが,CAFCは,それは最も広い合理的な解釈ではないと判断した。’222出願の明細書の記載を参酌すると,発明の 「シグナル」は弁の制御信号を生成するための所定レベルと比較可能なものと解釈すべきであって,PTABの解釈は不当に広く,明細書の記載と一致しないと判断した。
 以上の理由により,CAFCはPTABの判断を棄却し,手続きの差し戻しを判決した。

(辰己 正英)

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