専門委員会成果物

クレームされた発明が従来技術における課題を解決しているため特許適格性があると判断した事例

CAFC判決 2018年2月14日
Aatrix Software, Inc. v. Green Shades Software, Inc.

[経緯]

 Aatrix Software, Inc.(A社)は,データ処理システムに関する特許7,171,615および8,984,393を有しており,Green Shades Software, Inc.(G社)に対する侵害訴訟を地裁に提起した。
 上記のデータ処理システムは,データを設計・生成・インポートして,見ることのできるフォームに作り変えるものであった。
G社は,上記の特許のクレームは特許法101条の特許適格性に欠けるとし,連邦民訴規則12条(b)(6)の下での訴状の記載不備を理由とする訴え却下の申立を地裁に対して行った。一方, A社は,その申立は否認されるべき,と主張した。
 地裁は,Alice/Mayo最高裁判決における2段階判断手法を用いてG社の申立を認め,抽象的概念を対象にする上記の特許のクレームは101条の特許適格性に欠ける,と判決した。これに対して, A社は,判決の破棄の申立を行い,修正訴状の提出を求めたが,地裁が拒否したため,控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,従来技術に存在する課題と,その課題を如何にして上記の特許のクレームが解決するかは明確である,と判断した。たとえば,クレームされた発明は,従来技術では処理速度が 低下していた条件を回避できる。さらに,少ないメモリしか使用しないため,高速に処理できる。つまり,クレームされた発明は,進歩的な構成要素を含んでいて,コンピュータの機能を向上させる ものであって,特許適格性を有する,とCAFCは判断した。
 以上の判断により,CAFCは,連邦民訴規則12条(b)(6)の下での訴状の記載不備を理由とする地裁による訴え却下を破棄し,A社の修正訴状の提出に対する地裁による拒否を棄却した。

(大沢 真一)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.