専門委員会成果物

非侵害及び請求却下とした地裁の略式判決が支持された事例

CAFC判決 2018年3月7日
Chikezie Ottah v. Fiat Chrysler, et al.

[経緯]

 Chikezie Ottah(O氏)は,器具を使わず取り外し可能な“取り付け具”を付属するブックホルダーに係る米国特許7,152,840(’840特許)の侵害を理由に,Fiat Chrysler(F社)を 地裁に提訴した。訴訟に於いて,F社が製造・販売する自動車にカメラホルダー(F社製品)が付属している事実について,O氏は,’840特許のクレームの構成要件であるブックホルダーはカメラも 保持可能であるとして,F社製品は’840特許を侵害する,と主張した。なお,O氏は同様の主張により,’840特許の侵害を理由として,F社以外の自動車メーカーも地裁に提訴した。
 しかしながら’840特許のクレームには,ブックホルダーが取り外し可能な取り付け具を付属している旨が構成要件として記載されているところ,F社製品は器具が無いと取り外しできない “取り付け具”が付属している。更に,O氏は’840特許の審査において,発明の着脱可能性により特許性を主張した経緯がある。
 このため地裁は,禁反言が適用され,F社製品をクレームに属すと解釈することはできず,また均等を適用する余地はないこと等を理由として,非侵害とする略式判決を下した。
 なお,地裁は,O氏が提起した自動車メーカーに対する特許侵害訴訟の一部に対し同様の理由で非侵害とする略式判決を下した。また,他の自動車メーカーへの特許侵害訴訟については, ブックホルダーにカメラホルダーを含むと解釈できないこと等を理由として請求却下とした。
 しかしながら,O氏はこの判決及び請求却下を不服とし,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,略式判決について,禁反言や判例から逸脱する事情もないためクレーム解釈に誤りはなく,F社製品が取り外し可能な取り付け具を付属すると考えられる合理的な事実は ないことから,地裁の判断を支持した。
 またCAFCは,請求却下について,本件は本人訴訟であることから答弁書を寛大に解釈するとしても,ブックホルダーにカメラホルダーは含まれないとする地裁の判断に誤りはなく,侵害の告訴理由としては 不十分であるとして,請求却下とした地裁の判断を支持した。

(舟津 孝明)

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